20200424 社会が、変わる(4)
よく落語に出てくるような、そういう庶民は裏店(うらだな)に住む。今のワンルームの半分くらいの面積。トイレは外だ。そこに、大工や飾り職などの職人も住む。「ぼて振り」と言われる生業を真面目にやって、金が溜まると表(通りに面している)を借りて店を出し、一人前の商人(あきんど)となる。
もう一つのやり方は、商家に住み込んで勤め上げ、のれん分けをしてもらうやり方だ。12~3歳になると丁稚(でっち)として商家に住み込む。小僧と呼ばれるやつだ。まあ言ってみれば手伝いのアルバイト。これで先ず商いの基本を学ぶ。無給、盆暮れ以外は無休だ。二十歳前くらいで手代という、いわば正社員の立場になる。十年も勤め上げると、番頭という、店を切り盛りする立場に昇格する。このレベルになれば主人との話し合いでのれん分け、つまり後ろ盾を得て独立出来る。大店の場合、主人はほとんど店の経営は番頭に任せ、主人同士が集まって街の繁栄のためにいろいろ尽力する。
江戸は当時世界最大の都市で、人口は百万を超えた。その上その面積の大部分は武士の屋敷と寺社地で、町人の住む場所は極めて限られていた。それ故単位面積当たりの人口は今よりはるかに多い。テレビもラジオもないからニュースは口コミだ。故に、信用は非常に重んじられた。ひとたび悪い評判を立てられると、商いは出来ない。そんなところで商人が生きていくには、ひたすら誠実に、悪い評判を立てられないようにしなければならない。客を見ず、金を見て商売をするなどもってのほかだ。商人はそういう厳しい環境で鍛えられたのだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?