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Legends of Runeterraレビュー Hearthstoneの革命とRiotの挑戦 (前編)
10月16日、Riotの新作DCG、Legends of Runeterraの制作が発表され、16日から21日にかけてプレビューテストが実施されました。
この記事では、Legends of Runeterraのゲームシステムをまとめ、特徴を抜粋して紹介します。
また、後編ではゲームシステムからRiotの開発意図を読み解き、DCGのゲームデザインで注目すべき点を掘り下げます。
10周年サプライズ発表
同時接続者数800万をほこる、世界で最もプレイ人口の多いPCゲーム League of Legends。その10周年記念番組が10月16日、世界同時放送された。
League of Legendsを開発、運営するRiot Games社から明かされた内容は驚くべきことに、League of Legendsのスピンオフだけでも4つの新作ゲームを開発中。そのうちの1つであるデジタルカードゲーム「Legends of Runeterra」は発表当日にプレビューテストが開始されるというものだった。
Riotがこれまで13年の歴史でリリースしたタイトルはLeague of Legendsだけ。たった1つでRiotを世界的企業に押し上げ、eスポーツ界の覇者として君臨するモンスタータイトルLeague of Legendsのスピンオフとあっては、注目を集めるのは当然だろう。
筆者もさっそくプレビューテストに参加した。
この記事では、プレビューテストで見えてきたLegends of Runeterraの特徴をまとめて紹介したい。
ゲームシステムその1:カードの種類とデッキ
Legends of Runeterraの基本的なシステムや画面のレイアウトは、DCG最大手のHearthstoneや、国内最大手のShadowverseと概ね同様だ。
DCG全般に共通するルールは割愛して、特徴的な要素を見ていこう。
Legends of Runeterraに登場するカードは大きく分けて「ユニット」「スペル」の2種類。
そのうちユニットは「フォロワー」と「チャンピオン」、スペルは「スロウ」「ファスト」「バースト」に分かれる。
フォロワーはHearthstoneで言うミニオン、Shadowverseで言うフォロワー。
一方、チャンピオンはフォロワーとほぼ同じだが、以下の特性を持つ。
・カードごとに定められた条件を満たすとレベルアップして、パラメータと能力が変化する
・自分の場にチャンピオンがいるとき、手札の同名のチャンピオンが、そのチャンピオンに対応したスペルに変化する
例として、「トリンダメア」というチャンピオンを挙げる。
レベルアップ条件は「力尽きる」ことで、レベルアップすると攻撃力が1、体力が5上昇し、能力も増えている。
3枚目のカードはトリンダメアのチャンピオンスペルで、自分の場にトリンダミアがいるとき、手札のトリンダメアがこのカードに変化する。
スペルはHearthstone、Shadowverseにおけるスペルと同じである。
スロウ、ファスト、バーストは使用できるタイミングが異なるのだが、これについては後述する。
(簡単に言うと、スロウはMagic: The Gatheringにおけるソーサリー、ファストがインスタント、バーストが刹那である)
デッキは40枚。同名のカードは3枚まで入れることができる(Shadowverseと同様)。
ただし、チャンピオンカードは合計で6枚までしか入れることができない。
また、カードは6つの地域のいずれかに属しており、1つのデッキには最大2つの地域のカードしか入れることができない。
地域はHearthstoneやShadowverseにおけるクラスと同様の概念だが、どのクラスでも使用できる「ニュートラル」は存在しない。
ゲームシステムその2:ターンの進行
Legends of Runeterraで最も特徴的なシステムは、ターンの進行方法だろう。
多くのカードゲームでは、プレイヤーが交互にターンを行い、相手ターンの間は限られた行動しかできない。
特にHearthstone型のDCGは、相手ターン中に一切の行動ができない。DCGはこの「相手ターン中に行動できない」システムが主流になっている。
一方、Legends of Runeterraには、従来のカードゲームにおける「自分のターン」「相手のターン」という区別が薄い。
ターンは「ラウンド」と呼ばれ、同一のラウンド中にどちらのプレイヤーも行動することができる。
まず先攻側のプレイヤーが1つアクションをする。アクションはカードをプレイすること、もしくはユニットでアタックすることである。
(先攻、後攻はラウンドごとに交互に割り振られる)
アクションが完了するか、アクションせずに「パス」すると、片側のプレイヤーにアクションする権利(優先権)が移る。このように両者交互にアクションを行い、お互いのプレイヤーが続けてパスをしたときにラウンドが終了する。
また、ユニットの召喚やバーストスペルはすぐに完了するが、バースト以外のスペルを使用するか、アタックするときは即座に完了せず、画面中央で待機状態になる。
このとき、追加でファストスペルやバーストスペルをプレイすることができる。追加がなくなれば、相手はファストスペルやバーストスペルで反撃することができ、アタックに対してはブロックすることができる。
両者追加がなくなると、これまで待機中だったスペルやアタックが解決される。解決順は後にプレイした順で、Magic: The Gatheringのスタックシステムと同様である。
このように、ターン(ラウンド)の区別なく両者が行動できる点と、相手の行動に割り込むことができる点は、Legends of Runeterraの大きな特徴だろう。
ゲームシステムその3:戦闘システム
ユニットの戦闘システムもHearthstone型と異なる。
Hearthstone型では、アタックは1体ずつ行い、攻撃対象の指定が可能だが、Legends of Runeterraでは複数のユニットが同時にアタックし、攻撃対象の指定はできない。
アタックを受ける側はブロックするユニットを指定することができる。
アタッカーとブロッカーはお互いにダメージを与えあい、ブロックされなかったアタッカーはプレイヤーにダメージを与える。
これもMagic: The Gatheringに近いシステムだが、複数のユニットで1体のユニットをブロックすることはできない。
また、多くのカードゲームと異なり、召喚したユニットは召喚したターンにアタックすることができる。
アタックを行えるのは、概ね先攻側のプレイヤーのみである。
先攻側のプレイヤーにはアタックする権利「アタックトークン」が与えられ、アタックトークンを消費しないとアタックをすることはできない。
なお、アタックトークンはカードの効果によっても入手することができる。この場合は後攻側のプレイヤーがアタックしたり、同じラウンドに複数回アタックすることができる。
ゲームシステムその4:マナ
カードをプレイするときに使う「マナ」のシステムはHearthstoneを踏襲している。
ラウンドのはじめに両プレイヤーの最大マナが1増え、前のラウンドに使用したマナが回復する。
マナが自動的に増加し、マナを増やすためのカードや行動が不要なシステムは、Hearthstone型の特徴である。
ここに独自システムとして「スペルマナ」が加わる。
マナを残してラウンドを終えたとき、残ったマナはスペルマナに変換される。
スペルマナは最大で3まで貯蔵でき、スペルにのみ使用することができる。
ゲームシステムその5:カードの入手方法
最後に、試合外の要素ではあるが、カードの入手方法に触れておきたい。
カードゲームではカードパックの購入が主なカードの入手方法だが、Legends of Runeterraではカードパックは販売されない。
代わりにデイリークエストをこなすことで経験値を貯め、カードなどが入ったチェストを入手できる。
入手経路には週に1回ランダムなカードが手に入る「チェストセット」と、入手するカードの地域を指定できる「地域リワード」がある。
任意のカードを手に入れたいときは「シャード」と「ワイルドカード」が使用でき、これらは地域リワードなどで入手可能。
ワイルドカードは週ごとに一定枚数のみ現金で購入可能なので、お金を使ってカードの入手を早めたいときに使用される。
カードの入手のために現金が使用可能なのは、ワイルドカードの購入のみなので、厳しい購入制限が課されていると言える。
また、チェストセットや地域リワードによって入手できるカードも週ごとに限りがあり、カードの入手速度自体が制御されている。
今回のプレビューでは大量のワイルドカードが配布されていたため、入手速度のバランスは分からなかったが、かなり野心的なシステムと言えるだろう。
カードの入手、購入方法の変更はプレイ体験のみならず、運営方法やビジネスモデルを変化させるもので、Riotは意図を公式サイトで説明している。
まとめ
これまで見てきたように、Legends of RuneterraはHearthstoneをベースにしながらも、Magic: The Gatheringのエッセンスや、全く新しい運営モデルを組み込んだ、独自性の高いDCGと言えるだろう。
では、この独自性はどのような意図をもって設計され、どのようなプレイ体験をもたらすのか。
また、DCGのゲームデザインの歴史の中でどのような意味合いを持つのか。
後編ではこれらの点について、掘り下げていきたい。
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(10月16日追記:書きました)