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書店であった嘘のような本当の話⑧書店のレジは究極の個人情報
書店には老若男女、実に様々なお客様が来店されます。あちこちの書店でトータルで15年働きましたが、つくづく、
「書店のレジは、究極の個人情報だわ……」
と感じておりました。
「お次、先頭でお待ちのお客様~!」
何台もあるレジから手を高く挙げてお客様を呼ぶと、やってきたのはいかにも良家のおぼっちゃまという感じの、制服姿の爽やかイケメン高校生。
「お品物をお預かりいたします」
本の裏表紙にあるバーコードをスキャンしたら、表紙を上にしてカウンターに置きます。レジのスキャナーは感度が良いので、スキャンしたら表紙を上にして置くのは鉄則。新人さんにも口をすっぱくして教えます。実際二度スキャンしたことに気づかず、金銭授受のミスにつながったこともあるのです。
表紙を上にして置いた私は、タイトルに釘づけになりました……。
「正しいブスのほめ方」
え?
もう、妄想全開です!
爽やかイケメン高校生くんは、いったいどのようなシチュエーションで、どんなつながりの女性? 女子? をほめる必要があるのか。その後のレジが上の空になったことは内緒です、大丈夫、ミスはしていません。
彼はその誰かをうまくほめることができたでしょうか。かれこれ10年ぐらい前の話です。きっともういい大人になっていて、手練手管になっていたりして……。
よくよく調べてみたら、これビジネス書だったんですね。ほめるポイントを見つけづらい人をほめるための、ということか。
そして、究極の個人情報だと背筋が寒くなったエピソードがこちら。
ある日、お客様の行列から一番遠いレジにいた私が、手を挙げて先頭のお客様を呼びました。切羽詰まった余裕のない雰囲気の女性がレジへ突進してきました。
長い黒髪をひっつめ、って表現わかりますか? 試しに『ひっつめ』で検索しないでください。今どきのオサレなヘアスタイルが出てきます。そうじゃなくて、本当に髪をぎりぎりとしばり上げたようなヘアスタイル、全身から醸し出される余裕のなさ。とにかく圧を感じる女性でした。20代後半? 30代前半? 年齢は見た目だけでは断言できませんが。
本の裏表紙をスキャンして、表に返した私はギョッとしました。
「人のオトコを奪る方法」
衝撃! ってか、そんな本あった⁉
正直、どちらかというと地味めな、おとなしい人に見えたあの女性は、どんな恋愛をしていたのでしょうか……。
『ただ本を仕入れて売る』だけでなく、買っていくお客様のストーリーにも心を馳せる私(とか、きれいにまとめたけど、それって結局のところ詮索好き)は、決して優秀な書店員ではありませんでした。
でも、在職中は書店員であることに誇りをもって、日々棚をつくり、お客様と会話していたなぁと、書店を離れて2年以上経った今でも懐かしく思い出すのです。
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