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書店であった嘘のような本当の話⑥前株でよろしいですか?
子どもの頃から漢字は得意だった。
私の母は、自称「ダメ親」とのことで、私や弟をお風呂に入れたことがなかったという。近くに住んでいた母の母、つまり私たち姉弟の祖母が毎日訪問入浴に通って来てくれていたと聞いたのは、私が二十歳で長男を生んだ時であった。
「おむつを替えるのも、ちょっとイヤだったなぁ~」
などど言われたのは実に最近。ここで私の過去の投稿を読んで下さった方に、『それはオバサン的最近の方かな?』と内心クスッと笑ってもらえたら超絶嬉しい。
さて、そんな母でも、毎日欠かさず眠る前には絵本を読んでくれた。母自身はあまり本を読まないにも関わらず。
と書いてまたもや母の読み聞かせのおもしろエピソードを思い出してしまったが、本題からそれてしまうのでまた別の機会に披露するとしよう。
もの心ついた頃から母に本を読んでもらった。父は造園業で雨が降ると仕事が休みになる。雨の日は家にいて、本を読んでいる父を見て育った。晴耕雨読という言葉は、父の姿を見ていて覚えた。
自分で読めるようになると本の世界が楽しく、文の前後の脈絡から、習っていない漢字もなんとなく読めてしまった。
小学1年生の時、掃除をしていた6年生のグループのひとりに、
「これ、1年生で読める子なんているのかなぁ、誰か読める?」
と、その場にいた何人かのピカピカ1年生は、廊下にあった貼り紙を示された。なんと書かれていたかはさすがに忘れてしまったが、習っていない漢字が混じっていて到底1年生には読めるものではなかった。
私がスラスラ読むと、その場にいた6年生全員が
「おぉ~!こいつすごいな!」
と、どよめいた。
難しい地名やら、名字やら、聞いたこともないような難解なものは網羅していないが、日常生活を送る上では漢字に苦手意識がないというのは素晴らしい。
初めて書店に勤めたのは30代前半の頃。町の小さな書店で、ジャンル担当は持たせてもらえず、レジでひたすら定期購読と客注品の入荷連絡に追われていた。
店のすぐ近くに住む、大学生のアルバイト、青山さん(仮名)は、名の知れた大学で数学を学ぶ秀才で、数字に強い。
ある時私が、レジでお客様の会計をしている時に、おつりがあるのに誤ってエンターキーを押してしまった。
「うわ、申し訳ありません!少々お待ちくださいね」
と言って計算機を取りおつりを計算しようとすると、一緒にレジにいた青山さんが、目にも止まらぬスピードでぱぱっとドロアから小銭を取り、お客様におつりを渡してくれた。
数字に弱い私は舌を巻いた。
「えぇ~、あなたすごいね!数字に強いってカッコいいしうらやましい!」と言うと、
「でも私、漢字が苦手なんですよ~。
この前、ここでお客さんに領収書を下さい、って言われて。前株でよろしいですか、って聞いて書いたら、
柿
って書いちゃったんですよ」
気づいて良かったね…。
気づいたのが青山さんじゃなくてお客様の方だとしたらちょっとマズいけど、それは聞かずにおいた。
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