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本が嫌いな母の読み聞かせ

私の母(75歳、後期高齢者1年生)は、本が嫌いです。

ちなみに父(78歳、定年後はテレビとごろ寝生活で激太り)は若い頃から本が好きでした。造園業だったため、晴れていれば休みなど関係なく働いていました。ひと月に3日ほどしか休んでおらず、昭和のモーレツ社員を絵に描いたような、月月火水木金金、という生活。過労で倒れなかったのは、朝から夕方の規則正しい勤務時間と、父自身が健康だったからでしょう。でも、今の世の中では考えられませんね。

私が子どもの頃、雨が降ると父は家にいて本を読んでいました。「晴耕雨読」という言葉を学校で教わったとき、これは父のことのようだ、と思ったのを今でも時々思い出します。

母は60代後半で大きな病気をしたので、病気に関する家庭医学書や健康に関する本には興味を示しますが、それ以外の小説などは見向きもしません。

そんな、

「本は、嫌い」

という母でしたが、私が子どもの頃は毎晩眠る前に布団に入って絵本の読み聞かせをしてくれました。当時は母が本嫌いだなんて知りませんでした。大人になって、実は本が嫌いだったと知ってからは、それなのに毎晩読み聞かせをしてくれたんだ、と感謝したものです。

本も漫画も、欲しいと言えばたいてい両親に買ってもらえました。漫画は「エースをねらえ!」「アタックNo.1」「ベルサイユのばら」「ガラスの仮面」などは父も一緒になって読んでいました。読まなくても私の漫画の蔵書は把握していました。

私が本が好きで、小学校で読み聞かせのボランティアをしたり、結局一番長く働いたのが書店だったのも、そういった土台があったからだと思います。

そして、今年33歳になる長男が4歳ぐらいの頃。お昼寝の際に横になった彼は、おもむろに胸の上で手をのばし、持った絵本を広げて

「おばあちゃんのマネ」

と言いながら開いた絵本を自分の顔の上にばさっと落としたのです……。

私の記憶は一気に何十年も巻き戻され、長男と同じ年頃のことを思い出しました。

母は、本を読んでいると眠くなってしまう人でした。絵本を読み聞かせしてはくれましたが、読んでいる途中でうとうと寝てしまうのです。一緒に布団に横になって読むのですから、無理もありません。

幼い私は、続きを最後まで読んでほしくて

「おかあさん、ねぇ起きて。最後まで読んで」

と母を揺り起こすも、疲れていたのでしょう。

「うぅ~ん、ムニャムニャ……」

という感じで、言葉になりません。当然、寝ながら手に持っている絵本は顔の上にばさっと落としてしまうのです。

「お母さんたら、孫にも同じことやってた……」

あれから30年近く経ちますが、あの時こみあげてきたおかしさは、忘れることができません。

もうすぐ初孫が1歳になります。お誕生日にまた絵本を選ぼう。本好きの遺伝子を、孫も受け継いでくれるといいな。せっかく本嫌いな母が、寝ながらがんばって絵本を読んでくれたのだから。

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