「お前のこと、一生応援してやる」と思った瞬間‐エスパニョール選手寮生活日記㊹
人はいつ、誰かのファンになるのか
人はどういう時に、他人を”心から”応援したくなるのか。
つまり、ファン化するのか。
多分、それは一瞬の出来事ではない。
事前の情報(リード期間)+きっかけ(トリガー)
なのだ。
リトバルスキーのFKを見て、サッカーを好きになった私も、「Jリーグ開幕&リトバルスキーはうまい選手」という事前情報があったから好きになった。
「夢で逢えたら」というTV番組でユニコーンが主題歌を歌っていたから、他の曲を聴いてファンになり、ドラムで全曲叩けるようになるまで練習した。
たぶん、そういう気持ちの順番がある。
ジョエルという16歳の少年に、たいして抱いた感情も、そんな流れがあったのだろう。今、振り返ると思う。
普段からいいヤツは、なおさら応援したい
エスパニョール選手寮。当然、そこには、クラブの下部組織の選手たちが生活している。
一緒の部屋で生活してるヤツが、目の前で試合に出て全力で戦っている。これだけで応援する理由としては十分だ。でも例えば、それが普段からいいヤツだったら、絶対になおさら応援したくなる。
フベニールB(15~16歳)のチームに、ジョエルというMF(ボランチ)がいた。寮で暮らし始めて、数日で友達になったが、すごくいいヤツである。
なんか、ちょっと恥ずかしがり屋で、かわいい感じ。自分が女だったら、間違いなくこういうタイプが好きだなぁ~という子だ。
もともと、私はジョエルが好きだったのだ。
残り20分での登場、バルセロナ・ダービーの救世主
日曜日、エスパニョール・フベニールBのゲームを見に行った。16歳の選手が所属する、フベニールB。16歳のジョエルがいるチームだ。
対戦相手は、FCバルセロナ・フベニールB。
下部組織のバルセロナ・ダービーである。
バルセロナ郊外にある、エスパニョールの練習場。そこには、まさしく何十年もチームを応援しているのだろうなぁと感じる、おじさん・おばさんが300人ぐらいおしかけていた。
10時にキックオフされた、この試合。お互いの力が拮抗していることもあって、ゲームは後半まで動かない。
すると、ついにバルサが先制。
こういった膠着状態のゲームでは大変貴重な1点を手にした。
そして、試合の残り時間、約20分をきったころ、この日スタメンを外れていたジョエルが入った。「おぉ、ジョエルだ!」と、この時はそれぐらいの感覚だ。
しかし、残り10分。
ジョエルが送ったラストパスから、エスパニョールが同点ゴール。
そして、その2分後。
再びゴール前に飛び込んだジョエル本人が、劇的な逆転ゴールを決める。
湧き上がる観客。
私も、ピッチに飛び込んで抱きつきたい気分だった。
家族や友人が、チームと選手を本気で応援するのも、こんな気分なのだろう。
あいにくロスタイムに、バルサが同点ゴールを決めて試合は2-2で終了。最後は大味な試合になったが、私の気分はMAXに達していた。
「よくも、この気持ちに水を指してくれたな、バルサの野郎~」という気持ちが沸いた。
君こそ救世主
試合後ジョエルに
「お前、今日の試合の救世主だったなーー!」
と言って、ハイタッチを交わした。
うれしそうに笑うジョエルは、やっぱりなんか、かわいい。
お前のこと、一生応援してやる。
と、その時思った。
サッカーチームってのは、そうやってファンが増えて、いろんな人生が交差する。だからおもしろい。それが「地域に根付いている」ということなのだろう。
あれから15年、結局、ジョエルのその後のキャリアはわからない。
でも、その瞬間、私が一気にジョエルのファンとなったのは事実だ。
その気持ちに偽りはない。
たぶん、人同士の付き合いというのも、そういう瞬間をどれだけ持つか(自分のファンをどれだけ増やせるか)が重要なのだと思う。
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