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小説☆セックス、トラック&ロックンロール・シリーズ

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中古レコード屋の雇われ店主 サキ が遭遇する、少々ストレンジかつビザールな出来事を描く連作短編小説♪
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#CCR

セックス、トラック&ロックンロール・3枚の埼玉のLP…3

    身動ぎもしない白髪の男から漏れだした言葉は中途で途切れ、嗚咽が続いた。白髪の男はアタシの問いかけに対して確かに拒否のレスを返した。それって、やっぱり男の矜持ってやつでしょ? アタシなんぞの出る幕じゃない。そう判断した途端、笑っちゃうんだけれど急に尿意を感じたアタシ。     「悪いんだけどさぁ、トイレ?」     「奥を右ぃ……」     白髪の男は嗚咽の合間にそう教えてくれた。     「どーも」     そうレスったアタシは変わらぬ姿勢で嗚咽を続ける白髪の男をその

セックス、トラック&ロックンロール・3枚の埼玉のLP …2

    狙ったわけじゃないのだろうが、力の抜けた背中への愛撫は結果として絶妙かつ微妙なタッチでヤバかった。まさかとは思うけれど、放っておいたらこっちまでメスを解禁してしまいそうだ。第一アタシはウリに来てんじゃないんだって!      瓜売りが瓜売りに来て瓜売り残し……、嗚呼なに言ってんだよ、チクショー! 結局薬局騙し討ちじゃない⁉ 気に入らないんだよねぇ、そーいうのッ!  アタシは白髪頭を抱っこするまま立ちあがるや、額へ軽い頭突きを食らわせ、怯んだところで廊下へ放り捨てて

セックス、トラック&ロックンロール ・3枚の埼玉のLP…1

    カーステレオがCCRの〝グリーン・リバー〟を鳴らしていた。県道から外れてこのダラダラ坂へと続く脇道へ差し掛かった頃、ダイア―・ストレイツのベスト盤からCCRのベスト盤にCDを取り換えたのだけれど、それももう随分と前のことに思えてくる。埼玉くんだりまで商品の配送とは全く泣けてくるが、誰憚ることなく聴きたいモノを、大きな音で聴けるというボーナスは、まぁ、悪くはなかった。  フロントガラス越しに射し込んでいた冬の陽光が、薄いシェードをスローで降ろしていくようにスーッと弱ま