にんげんとお菓子が好きになるマンガ「ふたりでおかしな休日を」
こんにちは。Jessie -ジェシー- です。
素敵なコミックに出会いました。
伊藤正臣さん著『ふたりでおかしな休日を』(小学館クリエイティブ)
結論から言うと……。
ものすごく平和な気持ちになれる作品です!大好き!
この記事では私の感じたことをまとめていきます。
感想たち
これは……エッセイつきのレシピ集かな!?
マンガのメインテーマが2つあると感じていて。
ひとつは、現代日本をめぐるLGBTQへの視点。
ふたつめはお菓子!
以前LGBT関連の書籍を読み漁った時に感じたのですが。
LGBTへの差別や偏見、さらにはカミングアウトされた時の相手を不快にさせるような反応って、原因の大部分が「無知」からきていると思っていて。
言葉の定義を知っているだけでは不十分で、「どう関われば良いのか」を知らなければ、人間関係の中に「知っている」を落とし込むことはできない。
当事者の方の体験談や感じたことを読む中で、そのように感じました。
このマンガを読むことで、「そもそもLGBTQとは?」という用語解説的なところから、「どう接するのは絶対ダメか」「どんな風に考えているのか」の一例を知ることができるように描かれています。
特にトシくんの部下であるこずえさんのリアクションや考え方は、無知だった頃の自分を思い出させられて非常に申し訳なくなります……。
私の周囲にLGBTQをカミングアウトした友人は今の所おらず、私が誰かに面と向かって不適切な反応をせず済んだのがせめてもの救いだと思って心を保っています。(ゴンちゃんの言う通り「資格なし」と見なされていた可能性もあるけど)
「LGBTQについて知りたいけど、何からどう知っていけば良いのか分からない」という人は、言葉の定義から体験談まで没入しながら知ることができそうですごくおすすめです。
あとは、お菓子!
お菓子作りのシーンがね、すごく丁寧に描かれていて良いんですよ!
ストーリーと一緒にレシピが進行していくので、過程から疑似体験できて楽しいし。
あと私は、例えば各話の合間にレシピがまとめてあるようなのは読み飛ばしがちなので、ストーリーの中にがっつりはさみこまれている「ふたりでおかしな休日を」的描き方の方が、作り方としっかり向き合えてありがたいです。
調理器具の描きこみから生地のもったり感、途中にはさまるトシくんのイケメンフェイスまで、描いてあるもの全部楽しめる!心の浄化です。
紹介されているレシピが低カロリーなのも楽しいところ。
ちょうど米粉に興味が湧いてるところだったので、米粉を使ったレシピに出会えてありがたかったです!
トシくん流:モヤモヤを引きずらない術
印象に残ったのは、トシくんがお菓子作りをする時の姿勢。
職場や身の周りで気がかりなことがあっても、ひとまず置いておいてお菓子作りに集中していますよね。
これを見て思い出した映画がありました。
フランス映画の名作のひとつ「アメリ」です。
アメリも自分がいちばん悲しい時、お気に入りのお菓子を焼きはじめるんです。
クッションに顔をうずめたり、部屋のすみにうずくまったりする選択肢もあっただろうに……。
お菓子作りには、「今、ここ」に集中し、不安な気持ちを和らげる効果があるのでしょう。
トシくんを見ていると、それをしみじみ感じます。
不安な気持ちを無理矢理切り替えようとするのではなくて、お菓子を作っている間に、そしてゴンちゃんがおいしそうに食べているのを見ているうちに、不安は和らいで心が穏やかになっている。
心が元気になってから、どうすれば良いか考える。
そういうポジティブな流れへのヒントを見つけられました。
「ゲイだから」ではなく「人間だから」
一緒に楽しく暮らすトシくんとゴンちゃんの姿が、読者にもほっこり幸せを分けてくれます。
あんまり表情の変わらないトシくんも、なんでも美味しそうに食べるゴンちゃんも、大好きになりました。
それはふたりが「ゲイだから」ではなく「人間だから」。
互いを思いやっている気配や漂う愛情の気配に癒されているのです。
LGBTQが課題として取り上げられることが多いけれど、歴史を紐解けば分かるように彼らは一過性の流行りではなく昔から存在し戦ってきていて。
現代社会という文脈の中では、このマンガが「男性二人暮らしの~」という視点で取り上げられることもあるのかもしれません。
でも大切なのはさらにその先で、2人が互いを大切にする気持ちや態度が、異性愛者と変わらないってことだと思うのです。
日本では同性間の結婚ができなかったりすることを筆頭に、LGBTQの人たちを取り巻く「もっとこうなってほしい」がたくさんあります。
トシくんとゴンちゃんが、部屋を借りること、一緒に生きていくこと、結婚したくなった時に悩まないことが実現してくれればいいのに、周りにゲイであることがばれると恐れなくてもいいようになればいいのに……と強く思いました。
ふたりの周りで進展していく日常と、これから作られていく甘くておいしいお菓子が楽しみです。2巻も買いたい!
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