#2 LUSH
頭がボーッとする。
顔に身体中の血液が一瞬で集まって、熱くなってるのが自分でもよく分かる。
身体の制御を失ったかと思った次の瞬間、
僕の中心に硬いものがメリメリと音を立てて(実際には鳴っていないが)入り込んできた。
「ひっ」
僕は息を吸いながら思わず声を洩らす。
「大丈夫、力を抜いて」
彼は耳元でそう囁くと、更に奥まで押し込んでくる。
刺すような痛みが下から身体中に突き抜ける。
「待って!痛いよ!」
思わず太ももに力が入る。
すると彼はまた僕の鼻先に手に握った物を押し付ける。
「吐いて…ゆっくり吸って」
言われるがままに息を吐ききってから、ゆっくりと吸い込んだ。
「大丈夫、楽になるから」
再び血液が顔に集中して、身体が制御不能になる。
そして彼はもう一度自分の膝の上に僕を沈める。
彼と僕の呼吸がひとつに重なり、
一定のリズムを刻む頃には痛みは麻痺し、
身体とは裏腹に、頭では早く終わることだけを冷静に願っていた。
遠くの方でシャワーの音がする。
どれくらい時間が経ったんだろう。
見慣れない部屋に備え付けられている、シンプルでどことなくオシャレな時計をほとんど目だけで見上げると4時間ほど経っていた。
(そんなにしてたんだ…)
下半身はズキズキと痛みが脈打ち
脱力感からかまだ身体を動かす気になれない。
乱暴に散らかった布団の上で僕は裸のまま
じっと倒れ込んでいた。
キュッとシャワーを止める音がして、
少しすると頭からバスタオルを掛けた彼が出てくる。
「アキオもシャワー浴びといで」
「うん…」
頭が痛い。
さっき吸ったヤツのせいだ。
小瓶に入ったシンナーみたいな臭いの液体。
ゆっくり起き上がり、ふと下を見ると
暗がりの中、布団に黒いシミが見える。
(血だ)
僕はそう直感してふらふらしながら風呂場へと急いだ。
「そうだ、明日俺休みだから、アキオの服買いに行こう」
脱衣場の壁越しの隣の部屋から
こもった声が聞こえた。
「うん」
風呂場の扉を閉め、シャワーの取っ手を捻ると
直ぐに熱いお湯がでた。
熱いお湯の刺激が、僕の頭を現実に戻した。
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