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言葉でタイムトラベル
(これはフィクションです。)
今日、古い友だち数人と会う約束をしていた。
バスが日曜ダイヤでこの時間は平日ほど便数がないとは思っていたのだけど、時刻表を確かめずに家を出たら、目の前でバスが行ってしまい、次のバスが来るのは15分以上先。それでは約束の時間に間に合わないかも。
ちょうど通りかかったタクシーを捕まえて、駅へと急ぐ。これで何とか間に合いそうだとほっとする。
駅に着いて、電車に乗り込み、窓の外をぼんやり見ながら、行く先のこと、今日会う友だちのことなどを取り止めもなく思う。そういえばこの電車に乗るのも、待ち合わせの場所に行くのも久しぶり。街の風景も少し変わり、でも行き交う人の雰囲気は変わっていないなあ。
待ち合わせの場所に着く。私も含めて5人で集まる予定で、うち2人は既に到着していた。彼らは私に気づくと、「久しぶり‼︎元気だった?」とあの頃と変わらない(でも少し顔の皺ができたかな?)笑顔を向けてくる。
席に座って飲み物を頼む。「変わらないねえ。」「いやあ、年を取ったよ。」と不具合自慢が始まる。
他の2人も続々到着。それぞれに変わったところ、変わらないところがあって、会っていなかったここ何年かの時の流れを感じる。
個々には時々会っていた人もあり、全員が何十年ぶりというわけでもないのだが、最近の社会情勢なのだろうか、それとも年代のせいなのだろうか、それぞれいろいろ抱えるものもできたようだ。
親の介護、大きくなった子どもの心配事、仕事の場でも現役最前線から少し引かざるを得なくなってくる時期に差し掛かり、悩みやモヤモヤも多そうだ。
悩みがあっても年齢を考えると若い時のように簡単に方向転換できないよねと、可能性の選択肢が狭められてくる哀しみは共通みたいだ。
共に過ごした数十年前の駆け出し時代の思い出。誰かの失敗談に笑い転げながら、どこかでその遠さを思う。
言葉でタイムトラベル。過去と未来をそれぞれの想いの中で行ったり来たりする時間はとても楽しいものだった。
家に帰って何故かぐったりに近いほど疲れていることに気づく。タイムトラベルをすると移動した時間の速さの分だけ年を取ってしまうと聞いたことがあるけれど、もしかして今日の私、本当にタイムトラベルしていたのかな?