桜吹雪の季節に
9年前、桜吹雪の季節に義母を見送った。
末期がんで入院中の病院の敷地内には大きな桜の木がたくさんあって、夫は寝台状の車椅子で義母を満開の桜の下に連れて行き、最後のお花見をしたそうだ。
「きれいだねえ」と喜んでいた義母は、数日後、舞い散る桜の花びらと共に天へと還っていった。
それ以来、夫にとって桜吹雪は美しさと共に少し寂しい記憶となったようだった。
そして今年、私の母も桜吹雪の季節に旅立った。
母の入院していた病院も前を流れる小さな川の両岸が桜並木で、本人はすでにほとんど意識がなく、実際の桜を見ることはなかったかもしれないが、病室の窓から桜の咲くのが見えていた。
入院前に入所していた施設も、1月下旬に入院した病院も面会禁止が続いていて、会うこともなかなか叶わなかったが、3月の終わりからようやく面会制限が緩和され、少しの時間だったが会うことができ、近くに住む実の妹である叔母とも面会できて、意識はない状態だったが、体はわかっていて「もうこれでいい」とでも思ったのだろうか。それから間もなく静かに旅立っていった。
思うことはいろいろあるが、今日のところはこれだけに。
これからは私も桜吹雪を少し寂しい思いで見ることになるのだろうか。
※ 写真はみんなのフォトギャラリーから若葉 都さんの写真を使わせていただきました。ありがとうございます。