見出し画像

 わが「愛国者学園物語」には登場人物が多い。果たして、彼らは必要なのだろうか。あるいは必要ないのだろうか。

 ホライズン・メディアの総帥ジェフと、米国の国家情報長官のマイケルは物語で非常に重要な役割を果たすから、カットは出来ない。ジェフは、みすずの雇い主であることは書くまでもない。美鈴がもし日本のマスコミの人間だったら出来ないことが、ホライズンでは可能になる。例えば、若くして、ホライズンの東アジア総局の局長に就任するとか。

 美鈴が日本の会社員だとしたら、30代でそういう役職にはつけないだろう。ましてや、ホライズンの最高幹部である、カウンシル・メンバー、言い換えれば、経営幹部にもなれまい。今の日本のマスコミで、編集委員の女性はいても、経営幹部の座にある女性が何人いるのか? 美鈴は、普通の企業に勤める日本人女性なら体験出来ないようなことを、ホライズンで体験し、それが第4部の伏線の一つになる。

 マイケルもジェフとは異なるが、美鈴に「舞台」あるいは「機会」を提供する人物だ。そもそも、彼がバルベルデの日本大使館のパーティーで美鈴に偶然会ったことが、美鈴のジャーナリストとしての始まりになる、という点で彼の存在は重要だ。

 ジェフとマイケルは、水戸黄門の助さんと格さんが原型。本当は偉い人たちだけど、休暇では、のんびり寿司をつまんでいる親日家の米国人コンビという造形だった。このおじさんコンビと美鈴の3人は互いに支え合って生きている、大げさに言えば。


 第3部に登場するバルベルデの軍人ガルシアはどうだろう。この人物、私が第3部を公開し始めたころには、影も形もなかった。だが、このガルシアという男は、第3部の後半で、自衛隊と宗教カルトの問題を考察する際に重要な先例となる。そうするべく、私は彼を創作した。



 ハッカーのいちごちゃんは第2部で逮捕、投獄された。彼女がハッキングして不正に得た情報のなかに、第4部の物語の重要なカギがあって、それが第4部に出てくる、という設定で使うつもり。


 ファニー・ジョフロワは、テレビキャスターとして日本にいたフランス人女性。ベトナム系なので、外見は東南アジアの女性。親日家で流暢な日本語を話す。第2部では、ファニーは、美鈴と「私はルイーズ事件」の本を書くぐらいの役ではある。だが、第4部で衝撃的な出来事を起こすので、彼女もいらない人間ではない。


 ラーメンが好きなフランスの機動隊隊長フランソワ・シャルティエ。柔道家で警察官の彼を、物語に登場させる必要があったのか。あるいは、彼に関する細かいエピソードを書く必要があったのか。実は、第2部を書いていたとき、彼を物語でどう使うか、深く考えて登場させたわけではなかった。愛国者学園の支援者で、学園に多額の資金を提供していたラーメン店チェーンの経営者に、対抗するような立場の人間というだけで、わざわざ創造したのだ。だが、第4部で「使う」ことにした。彼の存在が、ある出来事のきっかけになる。


 何人登場させれば、物語が「成立」するのか、それはなかなか難しい問題だ。この他にも、政治家の吉沢友康、第4部の主役「モンスター」、その他に2人。どうなるだろうか。どうすべきだろうか。悩ましい問題だ。


写真はタイ・バンコクにて。2010年夏。

大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。