笑いを盛り込まない 「第一容疑者」から学んだこと
我が小説「愛国者学園物語」は話が暗いが、笑いを盛り込むつもりはない。
以前、英国のTVドラマ「第一容疑者」全15本を見た。名優ヘレン・ミレン主演の刑事ドラマで、評価は大変に高い。
私はそれを見て驚いた。物語に笑いが少ない。テーマ音楽も印象に残らない。怒鳴る場面はあるが、わざとらしい盛り上げ方もしない。シェイクスピアのような名台詞もなかったように記憶している。
日本の刑事ドラマでは珍しくない、俳優を目立たせるためなのか、わざとらしい演技。それに派手な音楽、現実離れした物語、臭いセリフもなかったように思う。
だが、「第一容疑者」はそうではなかった。解決困難な事件に立ち向かう女性警察官ジェーン・テニスンのドラマが続く。男性優位社会の英国警察において、女性が、警部や警視のような幹部警察官として仕事をすることの大変さ。テニスンを馬鹿にする男性警察官たち。
だが、彼女は淡々と捜査を積み重ねて、真犯人を見つける。そのような仕事ぶりが、同僚たちの尊敬と信頼を勝ち取る唯一の方法だということを物語る。そんなドラマだった。
私は英国かぶれ、つまりあの国のものをなんでも賛美する人間ではない。
だが、自分の小説を書くときに、ふと「第一容疑者」の描き方を思い出して、その雰囲気を真似ることにした。物語を淡々と書くということだ。
「愛国者学園物語」は、宗教、天皇、愛国心という重い内容を扱う話なのだ。それらの3つの主題を笑い飛ばすことは、私には出来ない。また、堅苦しい物語の中に、息抜きとして、面白おかしい笑い語や恋愛話を盛り込むことは、私の小説を書く能力からして難しい。だから、私は自分の小説で、この物語の主人公である三橋美鈴(みつはし・みすず)のラブシーンなどを書くつもりはない。「第一容疑者」にも、テニスンが男たちと大人の付き合いをする場面があるけれども、激しい描写は無かった。
テニスンの話で思い出した。今、ロンドン警視庁、通称スコットランドヤードのトップには、女性が就任している。1829年にヤードが創設されて以来、初の女性警視総監だそうだ。クレシダ・ディックは1960年生まれ、2017年に警視総監に就任した。長い間テロ対策に携わってきた人物。
朝日新聞デジタルに ロンドン警視庁に初の女性警視総監 テロ対策の専門家
という記事があり全文無料公開されている。
コピペして検索していただきたい。
動画は、今年7月のもの。ヤードの警察官が30代の女性を殺害した事件についてのコメント。彼女の失望と怒りがにじみ出ている。
写真は、2010年6月にロンドンで撮影したもの。騎馬警官に偶然出くわしたので。
大川光夫です。スキを押してくださった方々、フォロワーになってくれたみなさん、感謝します。もちろん、読んでくださる皆さんにも。