ダニエル 衝撃的な保護から、そして崩れた均衡
あの衝撃的な保護からしばらく経ち、マダニは綺麗さっぱりと居なくなった。先住達に移ることも無く無事に隔離期間を終え、晴れて自由の身となったダニエル。
無事に生後約3ヶ月、体重も標準以上になった。
最初は他の猫達との関わり方がわからなかったのか、好き勝手やってボス達に怒られる機会も多かったのだが最近はかぼす(メス)以外となら仲良く出来るようになった。
かぼすに対しては横暴な態度で食ってかかるので相変わらずダメである。かぼすはかなり気が弱い。
最初はぽん酢(最大サイズの中ボス)に付き従う事が多かったのだが、トラ(最重量ラスボス)に付き従い甘える事が増えて来た為ラスボスには可愛がられている。
中ボスぽん酢と仲が良かったので、ぽん酢と一緒に遊び回るようになるかと思いきや、現在の相棒(悪友?)は最年少で最軽量のおチビだ。
互いに身軽で遊び好き、遊びのパターンも似ているので走り回る時は常におチビと、である。
おチビは前回の保護っ子がいた時もそうだったのだが、非常に甲斐甲斐しく面倒をみるイクメンである。自分が最年少だということが不満な様で、自分より小さな子猫が現れると一気に穏やかになり面倒を見はじめる。
身体は小さいが、おチビはボス向きの猫なのだ、
しかし、ボスは2匹にならない。おチビは本気を出してもトラやぽん酢には勝てないので、不満や鬱憤がたまり最近はよく爆発している。多頭飼いにおいて、自分がボスになりたくてもなれない場合のストレスは計り知れないのだろう。
今までは、トラがボスだという事で平穏が保たれていた。
ぽん酢は2番手という立ち位置が気に入っているしトラを敬愛している。かぼすは自分の位など気にせず、敬愛するトラや私に可愛がられればそれで満足な様子。
しかし、おチビは誰とも仲が良くない。
逆らうことはしないが、普段は菩薩の様に穏やかで喧嘩が嫌いなトラに全員が付き従っているのが不服だったのだろう。
何故ぽん酢は体が1番でかいのにトラに逆らわないのか、何故かぼすはあんな優男を敬愛しているのか、何故あんな優男なのに挑んだら喧嘩で勝てないのか…自分は宥められてしまうのか。
確かにトラは野良猫のボス的な性格ではないのでおチビの不満もわかる。
おチビが我が家のドア前に置いていかれたのは、約生後4ヶ月の頃。それまで何処で何をしていたのかさっぱりわからないが、もしかしたらラオウの様なボスの元に居たのだろうか?
だとしたら、自分くらい気が強い猫は他に居ないのに自分はボスではない…という苦悩が理解できるのだ。
新入りを可愛がるのも俺がやりたい
皆のまとめ役を俺がやりたい
さすがボスだねと褒められたい
皆が揉めたら力で捩じ伏せたい
人間に甘える時も自分が1番でいたい、自分より可愛がられるのは小さい子だけなら許せる
しかしながら、我が家の猫達は平和を望むボスのもとで生活している為揉めない。ラスボスはトラで揺らぐことは無いし、本気を出して喧嘩したとしてトラに勝てる猫はいないのだ。
優男を怒らせてしまった時に飛んでくる猫パンチや飛び掛りはボブサップ並に重たい。しかもある程度自分が優勢になると、抱き締めて舐め尽くし寝かしつけてしまうのだ。
怪我をさせたくないのと、元々争い事が嫌いだからなのだろうが…誰がこの深い愛情と慈悲深さに勝てるというのか。
ある程度おチビになつき、後追いをしていたダニエルもトラのそばに行くと抱き締めて舐め尽くし寝かしつけて貰えるので、遊び疲れたらトラのところに行く様になった。
おチビは怒り心頭である。
我が家のような、先住の力が強い家で暮らしていく事はおチビにとってストレスにしかならない事を知って愕然とした。良かれと思って手元に置いていた事が、おチビの不幸に繋がっていたのである。
先輩のボランティアさんや、猫飼いさんのアドバイスを聞いてわかったことは
「多頭飼いに向かない子がいる」
「多頭飼いでも時と場合によってはダメである」
ということ。おチビの幸せを願うのであれば、イライラせず自分がボス(1番)になれる環境に置いてあげること。年下の子への面倒見の良さはお墨付き、そして普段の穏やかさや甘えん坊っぷりもお墨付き。
抱っこが大好きで膝に飛び乗ってくるおチビ、一緒に寝てくれるおチビ、人間大好きで人見知りしないおチビ、小柄だけど器は大きいおチビ。
心無い人に、キャリーごと我が家の前に置いていかれたおチビ。
我が家にいることでは、幸せになれないという事実は悲し過ぎるものだが…あの時に保護した責任がある。
おチビには幸せになってもらいたい、なってもらわないといけない。判断を下さなければいけない。
ダニエルはまだ2回目のワクチンや去勢が終わっていないので、終わり次第里親募集。去勢を里親さん側でしてくれるようであれば多少早まる。
おチビも1度諦めた里親探しを…しなければならないだろう。今となっては食欲旺盛な健康優良児、あの小ささからよく4kgになってくれた。
自慢の息子である。