オブラディン号の帰還は推理テストの時間
序文
このnoteを読んでいるということは、君は今オブラディン号の帰還に興味があるものと思う。私は、いずれ忘れてしまう日が来ることを見越し、推理ゲームがそんなに得意ではないのに推理がやたら深いゲームを買ってしまったひとりの辿った数奇な運命の一部始終をこのnoteにしたためた。
しかし、プレイ中の発狂が著しく、ごくおおまかなあらましを書き残すのが精いっぱいだった。
君が今オブラディン号への帰還に興味があるということは極めて重要な意味を持つ。このゲームプレイで何が起きたのかその真相を君自身の手で確かめてほしい。
次章以降に記されている内容を見て君は少なからず驚くことだろう。しかし、じきに何もかもなるほどねとなるはずだ。
このnoteを読み、プレイヤーの阿呆度と、何が起きたのか探るのだ。各章を読みそして実際にオブラディン号の帰還をプレイしたのち、各々の筆記媒体にてプレイ感想をしたため投稿してほしい。
ただし「真相」の章の内容を今は伏せさせてもらう。私はその顛末を把握しているが、今は他者に晒すべきではないと判断した。
名無し
Ⅰ崩れた自信
△ここまで上がってこれると見下ろされているようで
ゲームの物語が終わるとき。
「嘘っ、情報はこれで全て?」
とならざるを得なかった。あまりに提供された情報が少なかったためだ。これはおそらく現代の推理ゲームに慣れてその気分で挑んだ者を、すべて叩きこむ罠だろう。
私はオブラディン号を降りる直前まで進行をしたさいになんとたったの6人の安否しか確認できていなかった。10分の1人だ。別に現代の推理ゲームと称されるもので、詰まることがあっても答えがほとんど分からず攻略不可になることなどはない。
しかし何も分からなかった。致命的なまでこのゲームは攻略の誘導などはしない。なんならこのゲームはプレイヤーの多少の知識や探索に期待している。このゲームの主人公は、
「まさか、この〇〇とは△△と繋がるのでは」
と話すことはない。というより対話がほとんどない。サポートがなければ何も貴様は理解などできてはしないと叩きつけてくる。ただひたすらに雨音と共に打ちひしがれた。
Ⅱ解決に至る思考
△手帳の感覚は音から絵そして細かなことまでなにからなにまで良い
改めてこのゲームについておさらいしよう。このゲームは消息を絶ち、そして乗組員が全員いない状態で帰ってきたオブラ・ディン号について保険調査員である主人公が調査するというゲームだ。なお主人公の男女はランダムらしいが、視点は主観かつほぼ喋らないので差はほとんどない。
そして渡された手帳と髑髏マークのついた懐中時計。手記は懐中時計とリンクし主人公の書き込み以前から様々な情報がなぜか載っている。そして懐中時計こそがこのゲームの本領。なんと死体などからその死体が死ぬ瞬間の時間を再現する。
再現する範囲は死者中心に狭く、音声は30秒あるかないかだが、オブラ・ディン号の捜索はこれがなければ不可能なほどだ。
手に入れた魔法の力でこの事件の全容を解き明かしていく。なお本作はこれに代表されるようにファンタジーの要素をコアに使っている。もしリアル系が好みならば納得してからプレイするのが良いだろう。
さて私は選択を迫られていた。この何も分からないまま船をおりるか、それとも探索を続行するか。そう、このゲームは一通りの死体を調べればゲームクリアできる。その結果を受け止める覚悟さえあればひとりも分からずに帰ってもいい。
私は探索を続行することにした。まずはこのゲーム……ひいては推理という物の考え方を広大なネットの海で探して。幸い優秀な導いてくれるサイトが複数ある。いいゲームながら私みたいなやつがアッサリ折れてしまわぬように親切な導き手がいるのだ。
そこで得た知識はまさしくこうだ。
「過去に存在する行動や言動そして物証をメモも取りつつ調べまくる」
読者の皆様はお気づきの通り。このゲームはクリア直前の場所まで来てから次々と戻り攻略することからが本番なのだ。
Ⅲ音楽
△画面の色は変えられる。答え合わせは3人のデータが判明してから。
このゲームの特筆すべき点として音がある。サウンドエフェクトと音楽そして言語だ。
状況の多くの時に細やかにサウンドエフェクトがつけられていて、探索の心地がだいぶ増す。さらに大事なのは状況ごとに変わるタイプのサウンドだ。サウンドエフェクトかのように音ハメもして特徴的な曲はずっと耳に残り続ける。
特に、
「調査が進展。さらに3名の正確な安否情報を取得」
の音はプレイヤーならばとても印象深いだろう。このゲームにおけるレベルアップ演出と言っても過言ではない。戦いの証であり勝利の勲章だ。
言語は大事な証拠になる。正直言って私は勉強不足でどの国の言語なのか言い当てるられなかった、だがそれでも熱演はわかる。
そして音だけでもその過去状態がかなり分かるように、細かい音付けがされている。それが臨場感に繋がり実際に過去の時間に跳んだかのような錯覚をさせてくれる。プレイヤーのモチベーションにも繋がるため、サウンドはオンのままプレイしてもらいたい。
Ⅳ呪われるプレイヤー
△とある理由でここは何度も足を運ぶ。そのたびにテンションは落ちる。
正直プレイヤーの知識と能力不足はあるとしてもゲーム側に言いたいことはいくつもある。1つの探り方がわかれば他もそれで特定しやすくるのは良いとしても、それに気づかせる導線がなかなか困難なのと、多くの船員特定をそこに頼るときがある。
ギミックの使いまわしそのものというよりかは同じ過去に何度も通わせたあげく、確認のためにあっちこっちと行き来しなくてはならない。多くのプレイヤーがやると思うことだがかなり手間だ。
現場百篇、足で稼げとはよく言ったものでむしろ一種の疑似体験になる。ただ職業疑似体験としてはよくともしたいのはゲームなのだという気分になる。
また少々ネタバレになるが、足しげく赴く場所はリアルな汚い音や苦しむ音が聞こえる。非常に耳によろしくないもののことが多い。先ほど臨場感があって良いと書いたばかりだが、こういった負の側面も強調される。
これに関してはヘッドフォンを外すくらいしか対処法がないため、次作があるのならば足しげく通わせるところの音には気を配って欲しい。
じわりじわりと蝕むような絶妙な不便さとリアルすぎる気分の悪くなる音を繰り返すことで、プレイヤーは心が重く縛られ呪われていく。ゲームから業務へと、その目からハイライトが失われていくのが確かに感じられた。
Ⅴ消沈
△決定的瞬間をとらえた映像は美麗だ。そのせいで苦しむこともあるが。
より個人的な苦しみを書くとこのゲームの仕様についてだ。ここからは私が阿呆故の苦しみになるため、万人に共通することとは言いにくい。
まずこのゲームは推理テストゲームと初めに書いたが、このテスト中には3名分の正解が書き込めればその時点で確定をしてくれる。リアルタイム採点方式だ。ただし1名の間で少し情報が違えば正解と言ってくれることはない。また何が間違っているかを指摘することもない。
3名と聞けば楽に聞こえるが実際は「身元」「誰が」「どう殺されたか」の3問で1名が構成されている。そのため確定に必要なのはほぼ9問だ。間違っていようが悩み続けていようが、特にヒントらしきものが増えたりはしないこのゲームにおいてこれは厳しい。
またADVお得意の総当たりは今作ほぼ不可能だ。あてずっぽうくらいならできる時はあるものの、基本は大量の死因に約60名からの犯人捜し、そして当然60名からの被害者特定。組み合わせの数は多すぎる。
死因の答えは複数あるうちの1つで良い時もあるが様々な要因により特定を困難にさせる状況がある。似たような死因も多いが微妙な差異により正解は1つとされることも少なくなく、そこに苦しむこととなる。
雰囲気の良さはわかるが雰囲気も作業中は邪魔だ。おそらく前半でじわじわ苦しむことになるのが、連続で被害者特定をするさいに懐中時計から発せられた煙を目線で追いかける作業。
こちらはさっき見た光景の処理に追われていることも多いのに煙はなかなか目的地にたどり着かず、わざと大回りして次の被害者までに飛んでいく。しかも見ていないと煙は止まる。時間稼ぎかと疑いたくなってしまった。
また思ったよりも話がファンタジックで死亡原因のほとんどは■■■だったりしてなおかつスッキリと解決はしない。結局あれはなんなのか、もっと言えばこの懐中時計と答えを当てる手帳はなんなのか、輝くアレはなぜこのようなことになって行くのか。
想像世界の幅が広がるといえるのか、丸投げと言えるのか。実は賢いものならすべての答えを当てているのかも知れないが。
Ⅵ真相
この章はネタバレのためここには記されない。全ての答えはプレイして確かめるのだ。
あの光――――――――――――――――――――――――
海から――――――――――――――――――――――――――
熱された水――――――――――――――――――――――――
不思議な力と言えば――――――――――――――――――――――
Ⅶ下船
△船を下りる時はやり残した事は無しにしたい。
私は無事ほとんどの船員たちの行く末を特定した。かなり苦戦したが推理ゲームというものの真骨頂を味わえた気がする。世の推理ゲームが得意な者たちはノーヒントでこれらを攻略するので敵わない。
そうして私は促されるまま船を下りる。まだ意図的に伏せられた物語があるが言ってしまえばそれはこの後の展開のためだろう。
この後のことに胸を膨らませつつ話を進めると、保険金の支払い画面について出た。
ゲーム的に言えば得点表だが、そもそも主人公が保険調査員でそのために調査しに来ていたわけではないとやっと思い出せた。主人公は別に探偵ではない。
そのあととあることが起こり、ついには封印された章の過去へ挑む。そこではもうほとんど探索の必要はなかった。ただ私はそれを最後まで見守り、物語を完成させた。
Ⅷ終幕
△果たして遊んだものはゲームなのか、挑戦状なのか、テストなのか。
エンディングのスタッフロールまでたどり着いた私を襲った感情は2つ。このゲームはどう言い切るのかが難しいというのと、とんでもないゲームを遊んでしまったなというもの。主に私の阿呆具合で挑んでしまったのが悪いとも言えるのだが、ここまでプレイヤーを信じているゲームというのも珍しくその信頼感がひしひしと伝わってきた。
苦労と楽しみが織り交ざり最後まで通しでプレイできてしまった力は確かなものだ。これをクソゲーだと断ずることは私にはできなかったししたくない。しかし他者に簡単に勧めることをできはしない。
叩きつけられた挑戦状だし推理ゲームテストではあるが、それは作者がプレイヤーをゲームとして楽しんでくれると信じ切っているからにも思えた。実際はどうかは知らないし、これが国語のテストでも知る必要はない。
この多大に織り交ざった感情とインパクトを抱えて生きていく事を、言うなれば、心にある棚の大事な場所にしまってくれることを望んでいるゲームだ。
私はきっと、忘れはしない。そのうえで忘れてしまっても、このnoteに帰還して再び思い出すのだ。
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