cana÷biss 2ndアルバム「カルマ!カルマ!カルマ!」個人的全曲レビュー

新潟発アイドルユニットcana÷biss(カナビス)に新兵器が生まれた。
2ndアルバム「カルマ!カルマ!カルマ!」。
前作のように、全方位対応の兵器然とした佇まいのアルバムの姿はどこへやら。まったく別次元の仕上がり。
「曲で沸かせてファイボワイパー?やれるもんならやってみな、ついて来れる者だけついて来い」と言わんばかりの姿勢も、「今この場所でいっしょに、私たちのライブを観て楽しんで!」という懐の広ささえも感じるのだ。

では一曲ごとの解説をどうぞ。

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M1 ドライフラワー
イントロをリードするピアノに導かれるように始まる力強くも美しい8ビートナンバー。
2ndアルバム「カルマ!カルマ!カルマ!」発売に伴い、現体制による再レコーディングが行われ、遂に公式音源化された。初披露よりアルバムとしての音源リリースまで実に1年半近くが経過しており、その度にライブで歌いこまれてきた確かな進化を感じさせる。
なお前作「cana÷biss」の実質のオープニング「それは秘密の」の歌詞中に「枯れた花に水をやる行為なんて、」という一節があるが、まるでこれに呼応したかのようにこの曲「ドライフラワー」がアルバムの最初に据えられているのである。

M2 キンセンカ
現体制の先行シングル2部作のうち一作目のリードトラック。それまでの「痛み」や「孤独」を散りばめたcana÷bissの楽曲像を打ち破るような華々しい楽曲。澄み切った青空に向けて放たれるかのように響くメロディーと聖歌風コーラスが、歌詞の如く──まるで花が「咲き誇れ」と叫ぶかのように──美しく映えている。
因みにキンセンカ(金盞花)とは英名を「Calendula」といい、その名は作曲者である丸山氏所属のバンド・a crowd of rebellionのアルバムにも冠されている。また花言葉は数多くあるが、そのうちのひとつは「乙女の美しい姿」である。

M3 カルマ!カルマ!カルマ!
どこからかマノウォーポーズが上がりそうなメタル全開のイントロから、自重を促すレベルの爆速ギターリフとツーバスが容赦なく襲い来る悪魔的一曲で、歌詞にある通りほぼ尺は3分となっている。「ロウラク」にも見られたような一瞬の”寂”、フロアとの一体感を誘うシンガロング、様式美のようなギターソロなど盛り上がり要素は十分すぎるほど備わっている。

M4 新時代応答せよ
「ノーモア映画泥棒」を髣髴とさせるダンサブルなベースラインやポップな電子音、唐突の3拍子など、まさにこのタイトルの通りのcana÷bissの”新時代”を告げる、約3分15秒とコンパクトな一曲。おそらくアルバムの曲順通りに聴いてきた諸氏の中には「別のCDに切り替わった?」などと錯覚する者も出るかもしれない。

M5 courage
「勇気」と題されたこの曲は、それこそ「キラースマイル」の中にあってもおかしくないような感じでもあり、同じ新潟のアイドル・RYUTistのレパートリーの中にあっても遜色ないキラキラしたポップチューン。随所のキメと軽快なギターリフが疾走感に拍車をかけている。
この楽曲の提供はクマロボ氏(現在は北海道在住)によるもので、MTへの楽曲提供は初となる。

M6 あなたにあげる
それまで音の波状攻撃で埋め尽くすようでもあったcana÷biss楽曲群の中に突然現れた、そのオケのシンプルさが最大の特徴と言える2ndアルバムの白眉とも言える一曲。それまでcana÷bissの楽曲を見聞きしてきた諸氏の中には、これを初めて聴いたときにライブでどう表現するのか気になる人もいるかもしれない。

M7 BLUE BLUES
新体制後リリースされたシングル2部作のうち2作目のリードトラック。夢を見て、遠く離れた街で孤独を抱えながらひとりで暮らし始める女の子が主人公の歌詞が展開されるが、タイトルの「BLUES」に反し孤独感だけにとどまらない爽やかな曲調に、今までのcana÷bissにはなかった新鮮な空気が宿っている。
また曲中の歌詞に「空は繋がってる」という一節があるが、アルバムにおいてこの曲の次に配置されているのが「やがて空になる」ということに何かしら意図的なものがあるのか、そうでないのか。

M8 やがて空になる
浮遊するようなアルペジオから始まり徐々にその回転を強めていく、かつて桐亜が所属していたÅcm(オングセンチメンタル)のオリジナル曲。Åcm時代に音源化されてはいたが、2018年1月、メンバーのむぎ卒業に伴ってÅcmは活動終了となると共に楽曲が封印されたように見えた──が、活動終了から1年半近くの時を経て、cana÷bissの楽曲として”復活”する運びとなった。
2ndアルバムリリースに先駆け、2019年5月25日の主催イベント「Catch Up」にて一曲目から披露され、会場のファンが見事なまでに硬直する光景が見られた。なお、この時点でライブでの披露、アルバムへの収録などそれら一切が伏せられたままであった。

M9 すべて、しろいろでとうめいな
ピアノがリードする、焦燥感に満ちたスピード感に満ちた楽曲(曲後半、急に音が止まって曲調がガラリと変わる仕掛けも)で、サビでは今までにない音域のハイトーンが響くなど、今後のcana÷bissの核となりえるかもしれない存在感ある一曲。
ちなみに2ndアルバム収録の「あなたにあげる」の歌詞中にこの曲のタイトルを匂わせる一節が存在しており、またどちらもmao sasagawa女史による楽曲である。

M10 希望の鐘
Cana÷biss体制となってから一貫してどこかに抱えていた「痛み」のエッセンスを、おそらく今持てるすべての技術で以て昇華せしめたまさに金字塔然とした名曲。
まるで聖歌のようなコーラス、美しく凛々しいストリングス、儚くも力強いギターソロ…そして現体制メンバーになり磨き抜かれた歌唱力で約5分間を駆け抜けた最後に待つものとは──。

M11 PRAY
ともすれば「希望の鐘」で終わってもよさそうなものだがそれで終わらない2ndアルバムを締めくくるのは、その場にいる者全てで盛り上がろう!と言わんばかりのエンディングに相応しい明るく元気な曲。歌詞もまた今までに見られない”呼びかけ”が見られ、それはメンバーにも、また応援するファンたちにも向けられているようでもある。

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総じて、今回リリースとなった2ndアルバム「カルマ!カルマ!カルマ!」は、”新生カナビス”そのものである。同じ姿のままではいられず、その姿を次々と変えていく、まさに進化の過程を見ている。アルバムの曲順にしてもそうなのだが、まさにこの曲順でしか収まらないだろうなと頷ける絶妙な流れとバランス。
このユニット、このアルバム、とんでもねえぞ。

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