ドラマ「だから私は推しました」第6回個人的レビュー
アバンタイトル
[病室]
瓜田の病室か。脈拍・血圧のコンソールが映し出されるが、値は「?」を示すだけでまったく知ることができない。
聖『瓜田さんの意識が、回復したそうです』
ベッドに横たわったまま、かっと見開かれている瓜田の目。
聖『さっき、病院から連絡があったんですけど』
[取調室]
聖「(電話に向かって)ああ、君は行かなくていいから。うん、そのまま続けて。はい(電話を切る)」
デスクの向かいに座っている愛が聖護院刑事に尋ねる。
愛「あの、瓜田さん、どうかしたんですか」
聖「意識を取り戻されたそうで」
愛「え、もう…ですか?」
聖「え、よかったんじゃないですか?もしお亡くなりになられてたら、殺人罪に問われるかもしれないわけですよ?」
分かってんのかよ、みたいな渋い顔をする聖護院。
愛「(やや笑って)そうなんですけど、早いんで、驚いて」
聖「(電話を操作して)あ、すみません。…(電話へ)イチカワ君、今ちょっと行けるかな」
と言いながら取調室を出ていく聖護院、その様子を見ている愛。その目に浮かぶ感情は…?
変な場面
[取調室]
そわそわする手で(手指の爪にピンポイントで黄色いマニキュアが塗られている)ペットボトルを開けて水を飲む愛。やはり表れているのは焦りの色なのでしょうか。
と、そこに戻ってくる聖護院。
聖「すみません、お待たせして」
愛「…あの、怪我した方が、そんなにすぐに、お話し出来たりするものなんですか」
聖「あー…そこはケースバイケースとしか言いようがありませんね」
頷く愛。
聖「…それで、サニサイのCMが決まって、どう…『妙なこと』が起こり始めるんですか?」
愛「あ、それは…」
──2か月前 April 2019──
[スーパーマーケット]
スマホをガン見しながら売り場を歩く愛。危ないよ、歩きスマホ。
どうやらツイッターを確認しているようですが。
<アイドル激ヤバ情報室
人気急上昇中・サニーサイドアップ所属、あの子の秘密を丸裸! #サニサイ #栗本ハナ >
愛「また上がってる…」
[取調室]
愛「でも、こういうのは、有名になると出てくるものなので。私は特に気にせず、『幸せたまご・ランら卵』を大量買いしてたんですけどね」
聖「『幸せたまご・ランら卵』?」
愛「はい…あ、ちょっといいですか(卓上のスマホに手を伸ばす)」
聖「あ、はあ」
何を見せる気だろうこの人、みたいな聖護院の顔がなかなか味がありますw
愛「(スマホを手にして即座に)これです」
ブクマしていたか?スマホの画面にはかのWebCMが。
[CM]
食卓に並ぶ、高級レストランにありがちなドーム型のメタル蓋を開けるサニサイメンバー(にわとりの被り物装備)。
詩織『スクランブルエッグ大好き!』
紀子『目玉焼き~!』
ハナ『え~~生卵~~?』
なんでだよww
花梨『生でも美味しい!』
メンバー『『ランラ卵!!』』
[取調室]
聖「可愛い」
愛「でしょう?」
まさか取調室シーンで笑わされるとは思いませんでしたww
愛「(スマホを置いて)…私は、何としてでも、サニサイの広告効果を高めたくって」
[スーパーマーケット]
レジに買い物籠を置く愛…でしたが、籠の中には溢れんばかりの卵パック(推定16パック)。
愛「お願いします」
レジ係「…は、はあ」
そりゃ目を疑うよなあ。
聖『卵をそんなにどうしたんですか?』
愛『三食食べて、バイトでも使って』
[取調室]
聖「赤マル先生のバイトで?」
愛「あ、いえ、バイト、本当は赤マル先生じゃなくて、チャトレだったんです」
聖「チャトレって、"あの"チャトレですか?」
愛「はい、あの、ネットを介して、チャットする」
聖「あの"IT風俗"と言われてる!?」
愛「あれ、風俗なんです?」
聖「(被せ気味に)チャトレで卵使って何やってたんですか!?」
珍しく感情がこもり気味の聖護院。そりゃそうだ、バイトがチャトレだったと知ったらそんな風な声出るって。
愛「それは…」
お待たせしました。
サービスシーン、突入です。
[愛の自室(改造済み)]
至る所に置かれた大量の卵。そしてPCの前に黒スリップ姿で座る愛。配信開始でしょうか。
愛「マイのお部屋に来て下さって、ありがとうございます」
ああ、これ偽名ですね。
卵を割ったりエロく食べたり…どういう配信なんだこれw
聖『セクシーにゆで卵を…?』
愛『はい(事もなげに)』
[取調室]
聖「それ、ウケたんですか?」
(ここで配信画面のカットイン。『マルチチャットルーム 閲覧者数30人』の数字がすぐさまグイグイ伸びてくる)
愛「パフォーマンスっぽいものをやってると、フラッと覗きに来てくれるお客さんがいたり、黙って見ててくれたりして。[※聴き取れず]になりやすいんです」
卵を使ってワッフルでも作ったのか、生クリームを垂らしたりして更に過激になるオバハン。推しの経済貢献と(おそらくは)性的な潜在能力がダブルで発揮されている衝撃の光景が広がっています。
[愛の自室(改造済み)]
愛『それでまあ、それなりに稼いでたんですけど』
いつものチャット解説中に突然メッセージが入り、PCの画面を覗き見る愛。
そこには。
『とある客:個室で話ができませんか?』
『とある客:個人的にお話がしたいです。』
愛「えーーー?(営業声)」
『システム:とある客さんより個別ルームの申請がありました。』
愛「んーーーでも、みんなで、楽しく話しませんか?(営業声)」
『ゴリマッチョ203:そーだそーだ』
愛「んふふ」
ところが。
『とある客:あの、マイさんの本名って"LOVE"みたいな名前ですよね』
──Jesus Christ──
固まる愛。
愛「い、いや、違いますよ!(地声)そんな名前じゃないです~。でも、ちょっとだけ話しましょっか。ちょっと待ってくださいね」
そう言ってPCを操作する愛。別窓で個別ルームを開いたのでしょうか。
そこにいたのは衝撃の相手。
かつてドルヲタをカミングアウトした愛に、共依存だカウンセリングだと詰った同僚・真衣でした。
愛「ほぉぉぉぉ!!!」
真衣『何やってんの愛。しかも私の名前使って』
愛「あ、ちょっと、お腹が痛い、あいたたたた(と言いながらPCを閉じる)」
真衣『ね、ちょっt』
あーあ、まさかこんな形で身バレするとは…。
疑心暗鬼
[ライブハウス・特典会会場]
ヨネさんとのりたまちゃんの2ショットチェキ撮影風景。
会場は今日もたくさんの人で埋め尽くされています。
紀子「えへへへありがとう~」←可愛い
ヨネ「誕生日記念で1,016枚目!」
紀子「えっ、ウソ、すごいね!むちゃくちゃ撮ってるじゃん!」
いや見ていて俺もびっくりしたよwww
そしてカメラはチェキに書き込みをしているハナにパンします。今日もかわいいよハナちゃーん!←
そのハナ、ふと顔を上げると…ぼーっと立ち尽くしている愛の姿が(当然のようにサニサイTを着ています)。
ハナ「あの、何かあったんですか?」
愛「……(ようやく気づく)あ、あ、え、え?」
ハナ「あ、あ、間違ってたらごめんなさい、元気がないように思えまして」
隣の花梨列にいる小豆(なんと卵にサインをもらっている!!ww)も愛の方を見ています。おかしいと感じ取っているのでしょうか。
愛「あー、いや、あの、ちょっと、仕事でねw」
うん、"仕事"でね。間違ってはいない。表か裏かの違いで。
ハナ「お仕事、大変なんですか?」
愛「いやもう、全然、全然だいじょぶだいじょぶ。あ、次の配信ネタ、何か考えた?」
[ライブハウス・特典会会場外]
外へ出ようと歩いている愛に、後ろからやって来た小豆が声をかけます。
小豆「オバハン、オバハン、」
愛「ん?」
小豆「この後ミーティング行く?」
愛「あー行く行く」
あのいつもの飲み会は"ミーティング"と呼ばれているようです。
ってかもう"オバハン"はスルーww
小豆「ちょっとみんな連れてくる」
そう言っていったん奥へ戻る小豆。
愛「んーオッケー…!?」
硬直する愛。
愛の目の前に立っていたのは、チャットで強制シャットダウンをかけられた真衣でした。踵を返そうとする愛の動きを「話があるんだけど」の一言で止めてしまいます。
愛「え、あ、なんでここにw」
無言でスマホの画面を見せる真衣。
真衣「チャトレのスクショとってあるんだけど」
愛「ほぉぉぉぉあああ!!!???や、ちょ、あ、あの、向こうで話そ?ね、ね、ね」
戻って来た小豆、先ほどとは打って変わって大慌ての愛を見て何のことか把握できていない様子です。無理もないか。
愛「じゃあねー小豆くんまた後でーー!」
小豆「…?」
[夜の公園]
愛「…どうして分かったの?」
真衣「実家戻ってて。アホの弟にどら焼き持ってったら、あんたと話してたの」
ということは、あの"ゴリマッチョ203"が真衣の弟さんなのかもしれません。いや~~世の中怖かぁ~~。
愛「そうだったのかぁー…弟君かw」
真衣「そもそも!うちはダブルワーク禁止。就業違反だってのは分かってんだよね?」
真面目だなあ(そこかい)
愛「…」
真衣「分かってやってんだよねえ、逃げてんだから。地下アイドルの生活を支えるためにCD買ってグッズ買って財政破綻してるわけ?」
愛「破綻してないよ!」
真衣「してるんでしょ、こんな風俗まがいのバイトしてるってことは!」
愛「そんな、風俗じゃないし(小声)」
真衣「バカなんじゃないのあんた!?…こんなことまでして貢いで」
愛「いいでしょ別に、私が好きでやってんだから!」
真衣「あーあーあー、完全に金づるのセリフだね」
愛「別に金づるじゃないし」
真衣「向こうは金づるとしか思ってないよ」
愛「(立ち上がって)あのね、何も知らないのに言わないでくれる!?私とハナは」
真衣「(即座に)友達とか言わないでよ?…養っててもらって友達とかありえないから」
愛「…一緒にこう、夢を追いかける同志みたいなさぁ」
嗚呼…もう完全に宗教…。しかし愛の事をずっと心配してくれていた真衣、実はものすごく友達思いだったんですね。
真衣「(立ち上がって)仮に、私に売れないバンドマンの彼氏がいたとしてさ、ダブルワークでキャバ嬢やって養ってあげるわけ?CD鬼ほど買ってあげるの?…『彼の夢を一緒に追いかけてるの、彼は絶対売れるから』…そう言ったら、あんた私の事どう思う?」
愛「…」
ぐうの音も出ません。こういう意味で"支える"ことは身を滅ぼす。あってはならないこと。
ヲタクもほどほどに。
真衣「とにかく、ドルヲタ辞めなよね」
愛「別に真衣にそこまで言われる筋合いないと思うんだけど」
真衣「辞めないとこのこと会社に報告するからね」
愛「はぁぁぁぁーーー!!」
オバハンよ、勤め先が副業禁止を謳っている以上、生殺与奪は真衣が握っているのだ…
真衣「じゃ」
愛「ちょ…くっ、くぅぅぅぅ」
去っていく真衣にそれ以上何も言えないオバハンでした。
[愛の自室 / SHOWCASE配信]
<ハナのお部屋【ハナピー3分クッキング~本気のゆでたまご~】>と題されたどこまで真剣なのか分からない配信、配信当初が嘘のように大量の観覧車のアバターで埋め尽くされています。
(その中には『米原♡のりたま』、『AZUKING』などサニサイのおまいつの姿も確認できます)
ハナ『今回は、本気のゆで卵なので…切った時の、ちゃんと黄身が真ん中に来て…』
<本気の?w>
<本気のゆでたまごwww>
その配信をPCで眺めている愛。
愛「…とりあえず(ドルヲタ)辞めたって言っときゃいいか…」
おいおいおい真衣が泣くぞ。
…と、思っていると配信内で咳き込みはじめるハナ。
<どうしたの?>
<風邪?>
一斉にコメントが飛び交います。
ハナ『あ、すみません、大丈夫です。加湿器が壊れちゃったんです』
愛「加湿器…?」
ハナ『買い換えようって思ったんですけど、これ、新しく買っちゃいました』
そう言ってハナが取り出して見せたのは環球型のLEDライトがついたスタンド型の家電製品。これも加湿器なのでしょうか。dys○nの製品っぽく見えるなかなか可愛いデザインです(※編集注:評価には個人差があります)。
何か引っかかったのでしょうか、オバハン『今使っている加湿器はどこの?』とコメントしようとしますが…踏みとどまる。
[回想]
愛「別に金づるじゃないし」
真衣「向こうは金づるとしか思ってないよ」
[愛の自室]
愛「これって…」
何かに思い当たった愛。
[回想・夜の公園(@第2回)]
ハナ『私、洗濯機プレゼントされたんですよ』
愛『ええぇ洗濯機!?』
ハナ『私がねだったって言うんです、してないんですよそんなの』
[愛の自室]
愛「こういうことだったの…」
何か悪い方向にパズルのピースがはまっていってしまいそうなそんな時、配信に"スイカちゃん(第3回で、ルミナスモールでサニサイを見たとコメントしてきた人)"がログインしてきました。
スイカちゃん『こんばんはー』
ハナ『あ、こんばんはです』
スイカちゃん『私噂聞いたんですけど、ハナさん 昔パチンコ屋で働いてたってホントですか?』
ログイン早々に超必殺技をかますスイカちゃん。
<マジ?>
<ホントかよ>
ハナ『あー…働いてました、一時期』
スイカちゃん『そこでお客さんに「アイドルやってるんでライブきてください」って頼んで太客ゲットしてたってホントですか?』
<マジ?>
<太客>
ハナ『あー…そんなこともありましたね』
愛「…えっ?」
[回想・夜の公園(@第2回)]
ハナ『瓜田さん、はじめは前のバイト先で声かけられたんです』
[愛の自室]
愛「…」
おそらくハナが愛にしか喋っていないことを、なぜこの"スイカちゃん"は知っているのでしょうか。
どこから裏話がリークしたのか?そして"スイカちゃん"の正体とは?
ひとつの推理
[愛の職場・社食]
昼食をとっている真衣。そこへ愛がやって来ます。
愛「ここ(同じテーブル)、いい?」
真衣「…うん」
昼食中ではありながらタブレットを傍らに置いて何やらやっている真衣。お仕事なんでしょうか。
愛「私、バイト辞めたから。ドルヲタも、辞め」
真衣「…そう言っときゃいいやーって思ってるんでしょー」
ウッ
愛「や、そんなことはないよ?」
真衣「(タブレットを操作しながら)あんたが推してるらしいハナって子さあ、結構ヤバい噂あるの知ってる?」
真衣さん、一息もおかずにさらっとハラハラ展開に拍車をかけてきます。
愛「…えっ?」
真衣「ネットに出てた」
愛「…いやいや、それさ、日本中の芸能人が元ヤンか水商売経験者になっちゃう系のやつでしょw」
真衣「(スマホを操作しながら)私はそれなりに信憑性あると思ったけどね」
ついに固まってしまうオバハン。自分の中でくすぶっているひとつの仮説・推理に油が注がれていくような気分なのでしょうか。
真衣「送っといたから」
そう言い残してトレイを手に立ち上がり、その場を後にする真衣。
ややあって愛はポケットのスマホを取出し、真衣からの何やらを確認します。
愛「これか」
それは。
"アイドルマル秘チャンネル"と題されたまとめページらしきもの。
<栗本ハナには裏の顔があった。>
<高校時代、栗本ハナは同級生に対し、陰湿な虐めを行っていた。関係者によれば「虐められていた子は自傷行為に走るようになった。その原因は栗本ハナによる SNS を駆使した虐めによるものだった」という。>
愛「…いやいや、いやいやいやwあるわけないっしょ」
[ライブハウス]
(※編集注:地上の入り口が見えるので、この時点でのライブ会場はBASEMENTではないと思われます)
愛が入ってくるのを見て「おっ、オバハン来たか!」と寄ってくる小豆。しかもドリンク差し出して。いい男じゃないですか。
しかし乗り気でない愛。さすがの小豆も何かを気にしているようです。
小豆「この前のアレ、」
愛「…アレ?」
小豆「アレ…チャトレの話なんだけどさ、ちょっと調べたら、収入の課税の問題で会社の経理に連絡が行ってバレるってこともあるみたいで、それは気を付けた方がいいかなって」
副業がバレる王道パターンですね。
愛「調べてくれたんだ」
そう言うがしかしオバハン、まったく心ここに在らずです。
小豆「ほら、太いヲタクの他界だけは避けたいしなw けどさ、チャトレ…嫌だったりしねえのか?」
愛「…」
小豆「いや、オバハンがいいんだったらいいんだよ。でもさ、嫌なことしてまでっていうのは、ハナも負担に思うっていうk」
愛「って言うかさ、みんな、推しの昔の話とか知ってたりするもの?」
小豆ーーー!!お前いいやつだけどオバハンまったく聞いてないぞーーー!!(;ω;)
小豆「…?あ?」
愛「例えばさ、それでこう…幻滅することだってあるわけじゃん?」
頷く小豆。
愛「…いや、だから」
ここで急に入ってくる椎葉さん。
椎葉「アイドルの過去には、切ない話がくっついてくることも多いですからね」
愛「切ない話?」
椎葉「例えば、ある国民的アイドルは、逆境から抜け出すべく、緑の中を真っ赤な車で駆け抜けたわけですし」
おいおっさんwwちょっと待って、今の言葉wwww
愛「…?」
椎葉「芸能界に入る前は、本当に非行に走っていたという人ももちろんいますし、芸能というある種特殊な世界に入ってくるバックボーンも様々ですよ。けど、そこは過去は過去。今がんばってることに違いはないんですから。私たちは、そこを見てあげなければいけないんじゃないですかね」
愛「…そうですよね」
椎葉「そうですよ」
何やら心配そうな目でオバハンを見る小豆。
愛「…(突然のリアクション)よし!!気合い入れ直そう。はい(と言って小豆にドリンクを返す)…しゃっ」
そう言って、会場の後方壁に背を持たれて何やらスマホで調べ始める愛。どうやらハナの配信のバックナンバーを探しているようです。
見つけたのは、やはり9か月前の「ご心配おかけして、すみませんでした(第4回参照)」。それをタップする愛。
そう、それは多忙を極めるハナがステージにて倒れ、その日の晩に急遽配信したときのアーカイブ。
ハナ『病院です…本当は、いけないんですけど。連続配信、誓ってるんで』
刑事の目になりつつある愛のそばに寄ってくる小豆(しっかりドリンクを持っています)。
小豆「オバハン、チャトレの話なんだけd」
愛「(遮るように)あ、もう、それやめたから」
やけにこだわるねえ。それともあれか、まだ何かあるのでしょうか。
小豆「あ、そっか…」
ハナ『今日は、心配かけて…』
愛「!?…なんだろ」
画面を拡大する愛、何かに気づいたようです。
いつもよりカメラに接近しての配信だったためか、ハナの顔が大写しになっている配信でしたので、少し拡大するだけで分かったのでしょう。
ハナの目に映るのは、環型の光。
それは…買い換えたというLEDつきの加湿器?
9か月前からあった?…ということは最近買い換えたわけでもなく、初めからハナの家にあった。つまり買い換えたというのは、出まかせになる。
ハナ『(チャイムの音に振り返り)あ、あ、あ、今の音はナースステーションの音かな?』
愛「これって…」
顔を上げた愛は、小豆に「ごめん、仕事の電話してくるね、また」と言い残し足早にその場を後にしました。
と、そこに愛とすれ違いに入ってきたひとりの中年女性。
いったい何者なのでしょうか?
[公園]
またも配信アーカイブを見直している愛。
──何度も何度も憑りつかれたように録画を見て。そして、見れば見るほど、そこは病室ではなくて。実はそう見せかけたハナの部屋であることが分かるばかりで。じゃあなぜ、ハナはそんな嘘をついたのかって考えると…。
思い返すのは、困窮するハナに"仕送り"を渡した、あの日の自分。
愛「違うよね。そこ、狙ったわけじゃないよね──」
遠い日の幻影
[ライブハウス・特典会会場]
今日も変わらず推しの前で笑顔のサニサイヲタたち。
チェキに書き込みをするハナを見下ろす愛の顔には生気がなく、もはや推しへの慈しみは失われているかのようです。
ハナ「(見上げて)…今日は、物販からですか?」
愛「……えっ?」
ハナ「あっ、ライブ中はいませんでしたよね」
アイドルさん、ちゃんと見ているんだね~…
愛「ああー…なんか、仕事の電話、かかってきちゃってさw」
ハナ「あの、(立ち上がって)何の頼りにもならないと思いますけど、グチとかなら聞いたり……」
硬直するハナ。
愛「…ハナ?」
愛がハナの視線の先を察して振り返ると…その視線の先には、先ほどの中年女性。険しい顔で、ハナをじっと見据えています。
ハナ「…?」
その中年女性が、ゆっくり歩み寄ってきました。愛の脇を通り過ぎ、まっすぐにハナの真正面へ。
中年女性「…見覚えある?私のこと」
ハナ「…」
中年女性「あなたと高校で一緒だった、松田杏子(※編集注:本放送の字幕によるものです)の母です」
ハナ「…」
松田「松田杏子は覚えてる?…あなたのせいで、手首まで切った」
離れたところにいた椎葉さん、小豆もただならぬ雰囲気を察したようです。
ハナ「…すいません、ひ、人違いじゃ」
松田「あなたはずいぶん楽しそうにやってるけど、まだ引きこもったままよ、杏子は。人の人生メチャクチャにしておいて、何が夢よ、希望よ。あんなことよく歌えるわよね?」
ハナ「…」
松田「いいわよ、もっともっと有名になれば?その時こそ、あなたが何をやってきたか全部暴露してやるんだから。どれだけ叩かれるか、見ものよね?」
そこまで言うと、女性は踵を返して去っていきました。ハナも、すぐ隣で特典会対応をしていた凛怜も固まっています。
愛が女性が去っていった方向から向き直ると、ハナの顔は憔悴しきっていました。
愛「…ハナ?」
ハナ「……」
愛「ハナ?」
ハナ「!?」
愛「あの、さっきの話って、その…本当なの?」
ハナ「え?」
愛「いや、虐めてたって話」
ハナ「あ……ホントじゃないに、決まってるじゃないですか」
(ここで無音になる)
ハナを見据える愛の目。そしてふと蘇るハナの記憶。
[回想・ハナの記憶]
ハナ『おはよう』
女子生徒『…(無視)』
…違う、その記憶は。
実際は…。
逆。
──虐められてたんです、キモイって。
──はじめは、前のバイト先で声かけられたんです。
さらに紡がれる記憶。
実際は…。
パチンコに興じている瓜田に声をかけたのは。
ほかならぬ、ハナ自身。
ハナ『あの、前にライブ来て…』
(※編集注:↑防犯カメラのような画角なのが面白い演出です)
(回想終わり)
愛「あの、この間さ、バイト先の話が出たじゃない、昔のパチンコ屋の」
ハナ「出ましたっけ…」
愛「うん、その時にさ、ハナがこう、自分から積極的にお客ゲットしたって話があったと思うんだけど、あの、それって例のウのつく人のことだと思うんだけど」
ハナ「しましたっけ、そんな話」
愛「してたよw…で、確か私が聞いたときは、ウのつく人のことが、ハナのことを」
ハナ「(怒気露わに)もう、どうでもいいんで!!!」
静まり返る会場。
ハナ「…どっちでも、よくないですか?どっちから声かけたかけられたって。だいたいそんなの、いちいち覚えてないし!」
ハナの方を見て固まっている他メンバー。うわあ地獄や、また地獄や。
愛「…そうだよね。ごめん」
ハナ「…」
これで終わると思っていたさ、俺も。
愛「じゃあさ、(ポケットからスマホを取り出して)これは?」
スマホを差し出す愛。それはあの9か月前の緊急配信のアーカイブ。
オバハンいい加減にしな、あんたいつの間に特命係になったんだ。
ハナ「…」
愛「これ、病院じゃないよね?ハナの家だよね?目に映ってる照明ってさ、いつもハナの部屋にあるやつだよね」
ハナ「…」
愛「どうして、入院したって嘘ついたの」
ハナ「…その方が心配してもらえるかなって」
はい、当方なんかいろいろ符合が始まりました。
虚言癖、パパ活…などと様々なワードが脳裏をかすめますが、もうしばらく静観しましょう。
愛「それは…私から、お金を引き出すため?」
うわー切り込んだ。匂わせながら聴きこみをする杉下右京がプルプルするくらいダイレクトです。
ハナ「そんな…え、そんなわけないじゃないですか!なんで…あ、愛さんは、何でポッと出てきた人のことばっか信じるんですか?どうして、私のこと信じてくれないんですか?」
愛「ハナってさあ、嘘つくとき、まばたきする癖あるんじゃん」
ハナ「え…?」
愛「ウのつく人の話をしたときも…前に、虐められてたって話をしてくれたときも、さっき、虐めてないって言ってくれたときも、そうだけど…それって、どういう意味なのかなって考える。ああ…見なきゃよかったって」
ハナ「…もう、嘘つきませんから!」
なあハナちゃん、それは認めたってことじゃないかい…?
愛「…」
ハナ「…お、お願いします!!」
そう言って、両手を差し出すハナ。
ちょうど、第1回で二人が初めての握手をしたときにハナが両手を差し出したときと同じ態勢で。
おそらく自分の虚言をすべて看破されたと察したハナが、虚飾をかなぐり捨てて裸で愛に向き合った、、、そんな瞬間だったのかもしれません。
ハナ「お願いします…!」
愛「……
ごめん。……無理」
差し出された両手を握り返すことはなく、愛は半泣きで踵を返しました。
サニサイ、ヲタクが全員愛の行く先を見つめている中で、いち早く動いたのが小豆。愛の後を追います。
そして差し出した手を握り返されることなく、推しヲタクを失ってしまったハナの顔から、大粒の涙が零れ落ちていきました。
号泣するハナ。うーん…真相はまだ分からないけど、切ないなぁ…
[路上]
追いかけてきた小豆。スタスタ歩いていく愛の後を追います。
小豆「オバハン、オバハン、俺、よくわかんねえんだけど、あれ、ハナがきつい虐めをやってたってことなんかな?あの人は、ハナが虐めていた人のお母さんってこと」
愛「(ピシャリと)知らないよ私は、ハナの友達じゃないんだから」
小豆「え…」
愛「(泣き顔で)ただの金づるだから!…(小豆に振り返って)知らない!!!」
それ以上愛を追いかけることが出来ず、立ち尽くす小豆。
[愛の自室]
帰宅してきた愛は、部屋一面にあるサニサイグッズを眺め…
一斉撤去開始。
写真も、壁のTシャツも、ポスターも。今着ているサニサイ黄色Tでさえも。全てゴミ袋行き。
目玉焼きの形をしたペンダントも"ブチッ"と破り捨ててしまいました。
(テーブルの上には、卵と作りかけの推しうちわがそのままになっている)
しかし、いちばん初期の頃に撮った2枚のチェキだけは、まだそのまま壁に貼られていました。
[愛の職場・社食入口]
今日のセットか何かでしょうか、サンプルを眺めている真衣。
そこに愛が近づいてきて真衣に呼びかけます。
[愛の職場・社食]
サンドイッチ。大量のたまごサンドです。
真衣「これ、あの子たちが宣伝してる卵?」
愛「食べ物を捨てるのは、抵抗があって」
真衣「…捨てる?」
愛「真衣の言うとおり、私、ただの金づるだった。私があの子から聞いてた話って、嘘ばっかでさ。…まあでも、別にそれはいいと思うの。アイドルなんて、自分を盛って盛っての商売なんだろうし。でも、決定的に分かっちゃうと…ダメだよね。不器用な感じも、計算だったんだって思うと、なんか、すごいバカにされてる気がして」
苦笑いしながら漏らす愛の言葉には、どこか推し疲れが見え隠れしているようでした。
真衣「…」
愛「バッカじゃないかって思ってたの。アイドルに恋人がいたとか、結婚したとかで、『裏切られた!』ってなる人たち。でも、当事者になってみると、こういう感じなんだ…って」
ここで真衣が思わぬ事実を語りはじめます。
真衣「なんか、愛ってさ、ちょっとうちの親に似てんのよ」
愛「…え?」
真衣「見栄っ張りな人でさ。私は優等生っていうアクセサリーでさ、けど弟は母親のアクセサリーにはなりにくい子だったわけ。で、悩んだ母親はスピリチュアル系に走って。『この教えを世界に広めなきゃ』って借金までして。ほんと家ん中大変だったんだよ。(微笑んで)今回もここで止められてよかった」
納得しました。第3回であんな辛辣な言葉を浴びせたのは、そういういきさつがあったからなんですね…。
愛「(ゆっくりと微笑んで)…ありがとう」
菜摘「ああーーーいたいたー!」
きつくなかった方の同僚、菜摘が久々の登場です。
真衣「あー菜摘ー」
菜摘「お二人さん、こういうお誘いあるんですけど~」
と言ってスマホを見せる菜摘。
真衣「ああ~合コン!?」
あの頃が、帰ってきたのでしょうか。
──それで結局、前の生活に戻ったってことですか?(聖)
[取調室]
愛「はい。でもどこか、物足りないっていうか」
そこにまたも振動する聖護院のスマホ。
聖「すみません。…(電話に出て)はい。ああ、瓜田さん…」
愛「…」
聖「えっ?」
愛「…?」
聖「本当なのか、それ。…そうか、わかった。はい(電話を切る)」
愛「あの、瓜田さん、何て…?」
聖「まだ、ちゃんとは話できないので、イエス/ノーで意思表示していただく形なんですけど。…瓜田さん、記憶がないと」
一瞬変化した愛の表情を捉え、見据えている聖護院。
愛「きおく…記憶…あの、あの人嘘ついてます。何で私に押されたのか、話されたらまずいから。だから嘘ついてるんだと思います」
なぜそんなことが分かるオバハンよ。
聖「瓜田さんは、何か捕まるようなことをしたんですね?」
愛「…(頷きながら)彼は、野放しにしてはいけない人です」
[病室]
脈拍・血圧のコンソールにはちゃんと数字が表示されている。
ベッドの上の人物の目は、開かれたまま。
意外な結末
[某所(川沿い)]
路上を行く愛は、ふと視線の先にアマチュア?のダンスチームの練習風景を見かけます。
それを見ながらスマホで検索しようとするのですが…
<サニサ>
そこまで打ち込んで、すぐにスマホをしまう愛。もう私には関係ないことじゃないか、そう言わんばかりです。
するとそこに愛を呼ぶ声が。それは。
愛「のりたまちゃん!?」
笑顔で手を振るその声の主は、サニサイメンバーののりたまちゃんこと紀子でした。
愛「(手を振りながら)久しぶり~~!」
そして二人は、先ほどのダンスチームの練習風景が見える階段に腰掛けました。
紀子「愛さん…ハナ、今どうなってるか知ってます?」
愛「…ごめん」
紀子「ですよね」
愛「…どうなってんの?」
紀子「この間の話の動画とか拡散されまくって、炎上しちゃうし。ハナ、今ステージにも立てていないんですよ」
愛「…」
紀子「運営は、もうこのままハナを切るって、言っちゃってて」
愛「え、ちょっと…ハナを、切る?」
(第6回ここまで)
遂に…核心に近づいてきました。次回は遂に事件発生の時間軸に切り込むようです。
ラストまで、推していくぜ!
サニサーイ!?アップアーップ!!
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