春の高揚した脳で立てた目標
春は変質者が出やすい。
気分が高揚する時期である。
そんな私も例外ではない。
久々の1人休みを、柄にもなくカフェでモーニング。いつもなら絶対しないことだ。
クラリネットが柔らかくジャズを奏でている。オレンジ色の照明に、キーボードを打つ音と、本をめくる音。私も何かしなければ場違いなような気がして、カバンに目を向ける。
しまった、と思った。
カバンにはスマホと財布と鍵のみ。いつか読むかとカバンに入れていた本も、運悪く昨日から自宅待機。
けれど、せっかく気取ってきたモーニング。すぐ帰るわけにもいかない。本当は斜め向かいのお姉さんのように、本を片手にコーヒーをすすってみたかった。私が頼んだのはメロンソーダだけれど。
とりあえず、春だし、携帯を両手で握って目標を立てる。
今一番したいことを、高揚した脳で考える。
『本を出すとか』
なんだかずっと心の中でモヤッとしていたことが、この気分と空間によってボソッと言葉になる。その瞬間に、隣のおじさんの視線を感じた。突然すみません、と思いながら愛想笑いで会釈。
いつか本を出したいと、なんとなく思っていたのだった。
意気揚々とお会計を済ませる。
実現できたらどんなに素敵なことか!
気分はもう芥川賞作家!
なんていい天気なんだ!
私は喫茶店から大きな一歩を踏み出した!
そして気づいた!
あっ。
オシャレしてきたつもりが、ズボンがスエットのままだった。ヘソから上は完璧。
これじゃまさに、、、
あぁ。春の変質者、ここに現る。
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