白い魔女さん
先月、金曜ロードショーで『魔女の宅急便』をしていた。子どもの頃も大人になっても繰り返し観ている作品なのに、鑑賞後は胸がすくようでとても心地よかった。
『魔女の宅急便』原作者として知られる角野栄子さんは御年86歳。
…と、とりあえず書いてみたものの、この方に関しては「年齢なんて、もうどうでもいいよね」としか思えない。陽気で無邪気でパワーにあふれている。
パワーとは、たとえば「才能」だとか「個性」だとか「魅力」だとか、いろんな言葉が当てはまるのだろうけれど、ここでは断然「魔法」と呼びたい。
テレビで時折お見かけする角野さんの印象は、「白い魔女」そのものだった。少し前にはNHKで『カラフルな魔女〜角野栄子の物語が生まれる暮らし〜』という番組をしていて、なるほどカラフルでもあるなぁと思ったけれど、やはり白だ。
皺はあっても(とご本人は言うけれども、画面ではほとんど見えません…)白く透明感ある肌、グレイヘアというより白髪の割合が多めのボブスタイル。
いちごのような、少しピンク寄りの赤の口紅もお似合いで、ご自身の魅力をとても分かっている方だと思う。
そして、肌や髪が白いぶん、明るい色彩のお洋服や眼鏡のフレームがとても映える。柄物のワンピースにポップな感じのプラスチック製や木製のネックレスを合わせていて、日常が魔法めいている。
重厚な宝石や貴金属製ではない、コスチュームジュエリーや大振りのアクセサリーを、あえて年配の方がつけているのはおしゃれでいいな!と思う。安っぽく見えないし遊び心があって、目が離せない。
若い人が多少は気にしてしまうファッションのルール…たとえば「着痩せ」「若見え」「小顔に見せる」などのつまらない縛りを軽々と飛び越えて、「好きなものは好き」感が伝わってくる。
さて、魔女とは、何者だろう。
その昔、薬草や医療の専門知識に長けた者が魔女扱いされたというし、産婆さえも魔女といわれた時代があった。
私たちは今、そのような時代に生きてはいないが、魔女とは経験を活かし試行錯誤を重ねて日々実践している人だ。
かつての魔女たちの薬草研究なども、教会で祈っているだけでは病気は治らない、なんとかして家族や身近な人々の役に立ちたい…という思いから始まったのではないか。
だから、現代の助産師はもちろん、夫や子どもが健やかでいられるよう毎日の食事を拵える主婦だって、立派な魔女である。
私が道を極めて年老いて、自他ともに認める魔女となったなら、湯婆婆を目指そうかな。
ここでは働かない者は消されてしまうのじゃ。
働け、働け。
そうなったら、私もゴロゴロと飴玉のような宝石で作った大きな指輪をトレードマークにしよう。
副業で駄菓子屋さんを始めて、おもちゃの指輪たちの中にこっそり本物の大粒の宝石を混ぜておくのだ。
これは私の、密やかな夢。
「誰でも魔法を持っている」と角野さんは言う。魔法はひとつだけでいい、たくさん持ってたら魔法じゃなくなる、なんでも叶うとしたらそんなの魔法じゃないから、と。
「たったひとつを持ち続ける、ただそれだけでいい。」
そのシンプルな言葉に私は勇気づけられる。
迷ったとき、立ち止まってしまったとき、自分を見失いそうになったとき、いつもその言葉からもう一度始めればいいんだ。何度でも、何度でも。
魔法は私の手の中にもある。そう信じたい。
画像引用元
https://www.ghibli.jp/works/majo/
https://kiki-jiji.com/
※この記事は過去にShortNoteにて公開したものに加筆修正したものです。