23

部屋を暗くして、夜を受け入れる
呼吸の音と布の擦れる音

「もう寝た?」吐息混じりの君
「寝たよ」意地悪な僕

夜更し常連、もう少しと足掻く
呼吸の音と布の擦れる音

ーー天井照らすブルーライト

「もう寝る?」吐息混じりの君
画面を伏せて何も答えない僕

そっと触れる熱、気付かない振り
認めたら始まってしまうだろう

そっと触れる熱、気付かない振り
言葉にすれば戻れなくなるだろう

ーー伏せた画面の奥、鳴り止まぬ振動

寂しさを寄せ集め、互いを偽り騙して
何時まで続くのか

ーー何時まで続けるのか

都合のいい関係はもう飽きたのに
踏み出せないでいる、臆病だ、それでも
明日もまた此処に来てしまうのだろう

ーー何もないまま共に過ごす無色な夜

染まってしまえば
染めてしまえば
この柔らかい痛みは
消えるのか

染まってしまえば
染めてしまえば
この柔らかい痛みは
癒えるのか

ーー慰めは要らない筈だったのに

『あのさ、本当はね、』なんて聞きたくない
『あのさ、いいや、何でもない』でいい

ーー踏み出せないでいる、臆病だ、それでも

染まってしまえば染めてしまえば
染めてしまえば染まってしまえば
そうすれば君を僕を
このか細い線を
この痛みを

ーーそれでも、それでも、それでも

「珈琲きらしてるんだった」吐息の君
「んじゃ、明日買ってくるわ」寝返りを打つ

ーーそっと触れる熱、じんわり痛む傷跡

まだ夜の入口、23時

(2020/06/11)

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