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向こう側

目についたものをひたすらスーパーの彩度の高い色をしたカゴに入れる想像をして、心の埋まらない部分はなんだろうと考える、スターバックスはいつも混んでいて、加工された似たり寄ったり量産型の思い出を24時間だけきみに教えるね
ささやかな何かが欲しかった、日曜日のやわらかい匂いとか、古い本の温度を覚えていたりとか、朝早くからやっている番組のじゃんけんに勝利したとか
朝なんて起きられないのですけれどそれでも、だからこそ、無理だけれど無理だから願っていたことがあって

保健室の暖房の風が冷えた心と手袋をして来たのに冷たい手のひらを撫でていく、昨日買った小説のタイトルはなんだったかな、給食のプラスチックのお皿は安っぽくて、ああわたしはもう何処にもいなくて何処にも行けないんだなと泣きそうになる
ぜんぶぜんぶぜんぶ過去だけれど

不明瞭で曖昧な誰かにごめんなさいと頭を擦り続けている、差し伸べようとした自分の真っ黒に汚れた手を見つめ続けている、遠くへいってしまう誰かの袖口を掴み切れなかった、置いていかないでなんて言えない、無意味に息を吸い込む、腕に赤く線を引くことも市販薬や精神薬や睡眠薬を規定より多く飲むことは何の意味も成さないことを知っている、味のしない食事や憂鬱を噛み砕くだけの日々はたのしいか?
夢であいつが笑った、あの人を泣かせてしまった、あのとき笑っていた人たちは今なにをしているだろうか、支離滅裂な言葉たちを拾い集めたら何か意味のあるものが出来上がるのだと信じている、首を吊るロープとあの人の瞳の冷たさだけが本物でそれ以外は総て濁っていた(そんなわけないと誰かが叫んだそれすらも幻聴だった)
今いる場所から抜け出せたら何処へ行こう、もしあのときに戻れたら何を口にするだろう
もう何処にも戻れやしないけれど

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