秋風に吹かれながら
私はあの日、小田原の石垣山一夜城公園のベンチで気持ちのいい秋風に吹かれながら寛いでいたら「気持ちのいい天気ですね。」と小学生ぐらいの女の子が私に声を掛けてきた。
「たしかに気持ちのいいいい天気だね。」と私が返事をすると女の子は滔々と語り出した。
「戦国時代に高台に造られた北条氏の小田原城は県立の学校に変わり、江戸時代に平地に造られた小田原城は堀が埋められて公共施設になっています。ここはお城の姿が昔に近い形で残っています。」
「よく知っているね。」と私が感心していると女の子はまた喋り始めた。
「平地から20分以上歩いて坂道を登って来ないと到着しないこの城は不便な場所にあるせいで形を崩されずに済んだんですよ。」と女の子は説明を始めた。
私は女の子が小田原城の歴史に詳しいので感心しなからこんなことを聞いた。
「詳しいね。お爺ちゃんにでも教えてもらったの?」
「この城は役に立たない無用の場所にあるから生き永らえる事ができた。そして、私はこうしてあなたの夢の中に出現することがてきる。」
そこで私は目が覚めた。そうだった私は小田原駅から一夜城公園まで登って来て公園のベンチで気持ちのいい秋風に吹かれながら眠っていたのだ。
私は夢の中で女の子に言われたことを思い出してみた。「役に立たないからこそ城の形が残っている。」たしかにその通りかもしれない。