小説 感情と論理
城山は英会話教室でアメリカ人の講師からアメリカの大麻解禁支持者には大きく分けて3つの主張があると教えられた。
1、大麻は脳にダメージを与えるが、内臓器官には影響はない。アルコールは脳と内臓にダメージを与え大麻以上に危険である。
2、カリフォルニアではゲートウエイ・ドラッグとしてオピオイド系のヘロイン等、コカイン系のクラック等が考えられているが、大麻はゲートウエイ・ドラッグとして認識されていない。
3、大麻解禁には密輸業者と製薬業者がビジネス上の理由から反対している面がある。
城山は大麻が怖い、感情的に怖いので大麻解禁には大反対である。
アメリカの大麻支持者の主張はしっかりとした根拠があり論理的である。城山の主張は感情的で根拠は無いに等しい。
しかし、城山と大麻解禁支持者の間でお互いの意見交換と議論は可能である。
城山は8月の休日に渋谷で「クラスター・フェス」なる集会が行われたことをネットニュースで知った。
フェスの目的はソーシャル・ディスタンスとマスク着用なしで生活できることを主張するために渋谷で集会を開き、デモ行進をするためだった。
城山は「クラスター・フェス」の主催者は二つの誤算をしていると思った。
1. マスク着用支持者は感染対策をしっかりしない人間とは意見交換も議論もしない
2. マスク着用支持者以外の多数の支持も得られない。すでにネット上には批判の嵐である。
城山は「クラスター・フェス」の開催は支持者と反対派の間に大きな溝をつくる事になるだけだろうと思った。
城山は渡部にこう言われたことがある。
「自分の考えを間違えていると主張する奴らと仲良くするしかないんだよ。」
フェスの主催者や参加者が期待する成果は上がらないだろうし、反対派と意見交換や議論もできないだろうと城山は思うのであった。