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中秋の名月から「おくのほそ道」

小学校からの古い友人から「月が綺麗だ。明日の天気は分からないので、今夜のうちに空を見上げたほうがいい」とメールを貰いました。
部屋の電気を消して、窓から空を見上げれば夜空には満月。そして、中学生の頃の友人の蒼い発言を思い出しました。
「俺は40歳までに死ぬ」
その彼が空を見上げて、花鳥風月に心を遊ばせて、伝説のパンク・ロッカーよりも遥かに歳を重ねたその身を古風な風流に委ねています。
その理由を探るためにほとんど読まれた形跡のない松尾芭蕉「おくのほそ道」岩波文庫版を開きました。
松尾芭蕉は敦賀にて宿の主人から「越路のならひ、猶明夜の陰晴はかりがたし」とその日のうちに明神にお参りすることを勧められます。記録によれば次の日は「亭主の詞にたがはず雨降」となっています。天気予報によれば本日は「曇りのち雨」です。40歳までに死ぬ筈だった友人は数世紀の時間を越えて、親切な宿の主人と同じことをしています。
芭蕉は那須では地元の農夫に道案内のために馬と小姫に助けられて、または出羽の国に向かう道では屈強な若者が山越えの道案内をしてくれます。それ以外にも旅の途中で数多くの人々と関わりながら、創作を続けています。旅が松尾芭蕉の創作意欲を刺激したことは間違いありません。
40歳までに燃え尽きるはずだった友人が求めていたのは自分の発信で化学反応を起こすこと、または焚き火を起こして、半径2〜3mぐらいは暖めること。死ぬ事はあの頃も現在も怖い、それをイジりながら、綺麗な月を眺めながら、そこから遠ざかる事で自由でいたい。芭蕉も旅の途中で果てる事を意識しています。そして、各地で刺激を受けながら創作を続けました。松尾芭蕉「おくのほそ道」は私の友人は何も変わっていない事を教えてくれました。
#エッセイ
#中秋の名月
#おくのほそ道

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