子どもの名前を考えたときのこと
キラキラネームが話題になってから、ユニークな名前を聞いても以前ほど驚かなくなった。どんなものか調べて目に止まったのは
バクソウジャー…いや、これはないな。
いつか親になると決まったら、我が子が一生使うかもしれない名前付けがはじまる。チラホラと改名する方もいたりして、その人生で支障のある名前は避けたい。こんな大きなこと、どう決めたらいいんだ???
デザイン思考っぽいアプローチ
自分がはじめて子を授かったとき、ノーアイデアの状態から奥さんと話し、書籍やサイトを読み漁りながら名前を考えた。0→1を考えた過程は、結果的になんとなく、デザイン思考の「発散と収束」に近いアプローチになった。(初っ端から思い出補正の効いた当てつけのような書きぶりである)
また、アイデアを絞っていく段階では、要求整理・要件定義のエッセンスがあった。ここに考えたことやフォーマットを残しておこうと思う。
(もし決めかねている人がいても参考程度にしてください。正解も不正解もなく、二人に合ったやりかたで、お互いの考えを尊重しあうことが大事です。)
1.与件を洗い出す
ノーアイデアとはいえ、与件として考えられることを挙げれば、たくさんある。なんとなく以下4つぐらいに分類されるように思う。
1.可用性
・読める、書ける
・聞き取りやすい、呼びやすい
・変換しやすい
・説明しやすい
2.社会的条件
・名前に使える文字
・アダ名や悪口を言われない
・トレンドネーム
3.姓名的条件
・姓とのバランスが良い
・音の重複がない
・イニシャルが変じゃない
4.要求
・どんな子供になってほしいか
・生まれる時代や環境といった背景
・生まれる場所
・何人めの子供か
・使いたい漢字がある
・◯月に生まれる
・画数判断
など。命名本・サイトにも同じように載っているが、たくさんの条件がある中から「コレ!」を決められたら楽である。焦らずに、どうしたいか(要求)を考えていく。
2.要求を整理する
まず、漠然と「どんな子どもがいいなぁ」とイメージを膨らませてワードを出していった。
「子ども」はまだ存在しないので、とっかかりは何でもよかった。夫婦ではじめから無理に合わせず、条件、思い描く風景、映画・アニメなどから想起するワードまで、自由に出した。寒かったからこたつに入って、付箋とペンでブレストした。
グルーピングしてみると、なんとなく「あたたかい春、ゆるやかな草原で風にまっている。」的なイメージが描かれてきた。あくまで親の希望なので、ここで進路を決めるようなことはせず、写真を撮ってブレストは終える。
3.選択肢を具体化する
洗い出し、イメージを描き、各所の参考情報を読み漁って、疲れてきた頃には、もう8ヶ月!といったぐらいだった。お腹は膨らんで、奥さんにこれ以上負荷をかけるわけにもいかない。ある程度アイデアは出し尽くした、という段階からまとめに入っていく。(ここから旦那さんのがんばりどころ)
日本では漢字・仮名で名前を考えることができる。漢字は1つ1つが記号なので、意味を考えるには融通が効く。なんとなく名付けサイトや本を見ながら以下に取り組んだ。
・イメージに関連しそうな意味を持つ「漢字」を命名サイトから挙げた。
・この時点で良いものがあれば、組み合わせや仮名だけの候補も挙げた。
・画数や姓名による条件判断はこの段階でしなかった。
選定したものから複数の字を組み合わせて名前をまとめたり、同じ読みで異なる漢字を出しておくため、ここではマインドマップツールとしてCoggleを使った。
文字単位で入れ替え差し替え、組み合わせから名前の候補をまとめた。
4.与件・条件を検証する
次の段階として、候補になる名前をスプレッドシートに書き並べる。リストアップすると、いよいよ選択肢として揃った感が出てくる。
「姓」は決まっているため、「姓とのバランス」「読みやすさ・書きやすさ」「音の重複」「画数判断」など並べて比較しやすくなる。この段階から与件・条件にあわない候補は落としていく。
以下のシートは実際に使ったもの。1シート目は姓名の組み合わせごとに姓名判断サイトの「診断結果ページ」リンクが出せるよう関数を組んで、それ以外はチマチマと手入力でがんばった。
1シート目では細かく定量的な採点は行わず、イメージワードや自分あるいは他人に対して良さそうかどうかを評価した。候補が狭まったら2シート目に与件で挙げた項目を検証した。何を絞る・絞らないの基準は、よほどでなければ両親が決めていいと思う。
5.候補を決める
候補が見えた段階まできたら、自分たちはそこで検討をストップした。出産までに「コレ!」というものは決められなかったが、2〜3個ぐらいまで絞り何となく良さそうな候補が残った。
いよいよ生まれそうなタイミング、奥さんとふたりだけの散歩をした。夕日が長い影になって伸びている。ここまでで十分、長い道のりだ。
どんな名前になろうと大切な子ども。夫婦で話して、実際に我が子と出会ってから考えることにした。
6.決定
決定は出産直後になった。
いよいよ生まれるそのとき、病院から200kmほど離れた職場にいた。LINEでメッセージをもらってからすぐに会社を離れ、新幹線・在来線・タクシーを乗り継ぎ、ギリギリその瞬間に立ち会うことができた。あの時のことは一生忘れない。(当日の夜は嬉しくて奥さんの実家周りを散歩し、たまたま急な雷雨でビショ濡れになってお義母さんに笑われてしまった。)
そんな翌日、春の陽気のなかで病院に向かう。車中からみえた路肩にたなびく若い草が、いつかブレストした春のイメージそのままだった。病室の奥さんと会い、生まれたばかりの子を眺める。そのときの雰囲気から、顔を見合わせて「〜ちゃんだね」。ここでようやく名前が決まった。
まとめ
自分たちは自分たちのやりかたで候補を絞ったが、どんな決めかたでも大切な名前になる。プロセスだけを抽出して書いたけど、実際にはもう少し右往左往した。でも、夫婦で考えて決めたことは、今でも良かったと思っている。生まれてくる子どもへの最初のプレゼントに。いつか子どもが聞いてきたら、自分たちの言葉で答えてあげようと思う。
もし、サポートいただけるほどの何かが与えられるなら、近い分野で思索にふけり、また違う何かを書いてみたいと思います。