ミス行動を防止するための改善策とは
ミス、特にケアレスミスをゼロにするのは難しいというお悩みをよくお聞きします。ケアレスミスは、「いつもはできているのに」や「どうしてその間違いに気づかなかったのか」など、慣れた仕事の中で起こることが多いようです。対策を打っても改善が見られないときには、「行動」ではなく「そもそもの考え方」に着目する必要があります。
脳の錯覚がミスを起こす?
ミスの原因には、「なぜ、それに気が付かなかったのか」「なぜ、それが見えなかったのか」と不思議に思えるものがあります。認知心理学の知見によれば、人の脳には「思い込みによって実際とは違う認知をする(実際とは違って見える)」という性質があるのだそうです。
そして、その思い込みをつくっているのは、経験などによってつくられた固定観念です。
つまり、ミスを繰り返さないためには、その原因になっている固定観念を払しょくすることが必要になります。この固定観念を払しょくするために有効な手法が「ダブル・ル ープ学習」です。
ダブル・ループ学習とは
ダブル・ループ学習は、アメリカの組織心理学者クリス・アージリスとドナルド・ショーンが提唱した学習法で、何かしらの行動を取っていてミスマッチを感じた(違和感を持った)、失敗をした、などの体験をした時に、単に「行動」のみを振り返って修正するのではなく、「行動を支配する価値観(行動選択の際の判断基準)」まで深く振り返って、自分の価値観や固定観念に自ら気づき、それを修正する学習方法のことです。※行動のみを振り返り修正することを「シングル・ループ学習」と言います。
例えば、お客様への提出書類は内容の間違い(誤字脱字)がないように、「事前に他の人にチェックしてもらう」という手順を取っていたとします。しかし、ダブルチェック体制を取っていたにも関わらず、日程が間違っていたり、誤字があったりしました。この場合に、「ミスを見逃さないように、チェック体制を強化しよう」というのは、チェックするという行動に着目したシングル・ループ学習です。それに対して、「行動」の背景にある 価値観や固定観念(例えば、「○○さんが作成しているのだから日程などは大丈夫だろう」「△△さんにチェックしてもらうのだから間違っていても修正してくれるだろう」などという固定観念)まで振り返って、その価値観や固定観念を修正しようとするのがダブル・ループ学習と言えます。
改善策が当たり前の価値観となれば、ミス行動は防げる
また、ミスはいつも起こるものではないため、改善策を立てても、時間が経つと忘れてしまうこともあります。そのとき、改善行動レベルなのか、自分自身の当たり前の考え方・価値観として変わって(根付いて)いるかは大きな差となるはずです。
今後、多くの作業がAIなどに移行し、今悩んでいるような誤認や不注意などのミスは少なくなるかもしれません。しかし、人は常に新たな価値を創造し、新たな状況へと進化させていきます。判断・行動するのが人であることは変わりません。ミスが起こったらその改善策として、「そのミスに繋がる行動の背景にあるものは何か」までを自ら振り返り、自分自身で行動を変えていくことができるビジネスパーソンは、今まで以上に重要になってきます。
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