Time's Arrow Time's Circle その3
帰宅してお風呂に入ったとき、ステラの笑顔とほのかないい香りを思い出した。自然と笑顔がこぼれる。
「こんな素敵な女性が身近にいるなんて」
そのとき、ふと、どこかで嗅いだことのある香りがすることに気いた。
「どこだったかな......?」
遠い昔の記憶...思い出そうとしたが、なかなか思い出せない。でも、なぜかとても懐かしかった。ずっとこの感覚に浸っていたい、眠ってしまいそうなほど穏やかな感覚だった。
「あの優しい香り...何の花なんだろう?」
ステラのヒマワリのような笑顔が思い浮かぶ。
ある日、保健室で養護教諭の美香先生と話していたとき、香水の話になった。美香先生が使っている香水は、ほのかな香りがして、長続きしないのだそうだ。昔、一緒に働いていたALTにアマンダという黒人の女性がいた。彼女は小柄で明るく美しい女性だったが、日本人にとっては体臭がきつかった。体臭を隠すためか、時々香りの強い香水をつけていた。隣に座っていた私は、彼女にその香水の名前を聞いたことがある。今ははっきり覚えていないが、ヨーロッパの有名ブランドだったような気がする。
「美香先生のお話を聞いて、先生の好きな香水を嗅ぎたくなりました。美香先生、その香水はどこで買えますか?」と聞いてみた。
「東京で買いました。近くでは買えません」
「匂いを嗅いでみたいなあ」
「よかったら明日、香水を持っていきますよ。その香水の匂いを嗅がせてあげます」
「本当ですか?ありがとうございます」
翌朝、駐車場に車を止めると、ちょうど美香先生が出勤してきた。
「おはようございます!マサル先生」
美香先生が元気よく挨拶してくれた。部屋で飲もうと思って持ってきたスターバックスのコーヒーバッグを渡すと、喜んでくれた。
「マサル先生、香水持ってきましたよ」
「うわあ、ありがとうございます」
「じよ、さっそく…シュッ!」
「ああ、これ!」
「え?何?」
「どこかで嗅いだことがあるような...あっ!」
「どうかしました?」
「やったぞ!美香先生、ありがとうございます!」
「ハハハ、どういたしまして!」
「美香先生のおかげで、思い出しました。そう、あの香りです。昔、勤めていた学校の修学旅行で京都に行ったとき、このフレッシュフローラルの甘い香りを嗅いだ記憶があるのです」
その高校に就職したのは30歳の時だった。秋に修学旅行で京都に行った。その日は班別研修の日で、クラスの生徒の様子を見に京都映画村に行ったのだ。各グループの生徒たちは、計画書通りにタクシーで市内の観光地を回っていた。
京都映画村の入口で生徒が到着するのを待ち、名簿の名前を確認するのが私の役割だった。先生方はそれぞれ手分けしてチェックポイントに立った。映画村を見に来る学生たちを見送った後、私は北野天満宮に行くことになっていた。
「あの、すみません」
「え?」
振り向くと、明るい笑顔の金髪の女性が立っていた。50歳くらいで、とても美しい日本語を話すおしゃれな外国人女性だった。彼女は少し照れながら、私の目を覗き込んだ。
「京都の観光スポットを教えていただけませんか?きれいな写真が撮れるところに行きたいんです」
「申し訳ありません。昨日、仕事で京都に来たので、あまり詳しくないんです」
「では、どこか良い神社仏閣をご存知でしょうか?」
「神社 "ですか?実は、これから北野天満宮に行くんです。一緒に行きませんか?」
「そうなの?嬉しいです」
二人はそのまま、北野天満宮に向かった。
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