狂乱の町内旅行の思い出!
狂乱怒涛の宴会が始まろうとしている。
バスの中での狂気じみた醜く滑稽なカラオケ大会は終わり、みんな高いびきで眠っている。
バス内に空になった発泡酒、ビール、チュウハイの缶、柿の種、サツマイモ、リンゴ、するめ、おにぎりが散乱している。
異臭を放ち観光バスというより、ゴミ収集車に乗っているようであった。 臭いので、鼻で息をせず、口で空気を取り入れるように努力した。耳栓を鼻に入れてもよいのである。
現地に着いた。
遠足のような小さな旅行であるので近所の公園に着いた、という感じであった。
バスガイドさんの明るいハキハキとしたこのバス内の異臭と異様な有様を消す新鮮な、
「皆様、着きましたよ、お疲れ様でございます」
という声で、 みなパっと目覚め、
「無事着いたか、良かったな!」と
歓喜の海で今度は満ち溢れている。
いっせいに、パチパチパチパチ~♪
のアポロが、月面着陸を人類が初めて成し遂げたような、赤子の拍手喝采である。
飛行機でないんだから無事着いて当たり前だろう、と内心呟きながら
わたし自身も顔が引きつらんばかりの笑みを作り拍手である。
着いても皆降りようとしない。
降りる順番が問題なのである。
商店街の会長と町内会の会長は同性愛者、すなわち、ホモであるがごとく手を取り合い抱き合い、お互いの肩、胸を叩きながら同時に地上に足をつけた。
アポロの
「小さな一歩ではあるけれど、人類にとっては偉大な一歩である」
とは大きくかけ離れていた。
みな、内心ほっとし、町内に在住が長いものから順次下りて行った。
わたしは最後に降りたが、バスガイドさんに
「バス内のお掃除大変ですね」
というと、
「いいえ、運転手と共にしますから」
と運転手さんの方を見てウインクする姿が見てとれた。
内心、この二人できているな、と思い、そうは言えず、
「ありがとうございます」
と如才なく下車した。
旅館というより民宿である。
部屋の割り当ては、仲の良い家庭同士がいっしょになることになっていた。
わたしは、前述した旅行の行き先を決める際に使われた、居酒屋のご家庭といっしょの部屋であった。
床の間も座布団もテーブルもない。
いわゆるタコ部屋である。
住居のない工事現場の職人さんが、一時的に寝泊まりする際に押し込まれる、所謂、素泊まりと変わらない状態である。
それでも窓があり安心した。
一人、畳一畳という計算になる。
寝て一畳、起きて半畳とはこのような場所を言うのだな
と新しいことを学んだ。
どうせ、寝るだけであるし、宴会は別の大広間であるからこんなものであろうと、自らを落ち着かせようとした。
居酒屋のご亭主のところは子供さんが五人いるのでわたしを入れて八人である。
そして、部屋は八畳。
一人の取り分は畳一畳と良い算数の問題になっていることに気がつき、部屋を誰と誰にどう分け与えるかを誰が考案したのか気になった。
なかなか、今どき、畳、一畳単位で身内と他人ををいっしょにさせるいう発想はないと思う。