一次産業関連でやりたいことをお話しします!〜全社ラジオより〜
JDSCでは「全社ラジオ」と題して、各業界の担当者が社内向けに自チームの最新の取り組みを共有し意見交換する場を設けています。このラジオも昨年11月のスタート以来1年で約20回開催。ぜひ社外の皆さまにもその内容をお伝えしたく、紹介させていただきます。
記念すべきnote化第1回は「一次産業のDX」をお送りします!AI、データサイエンスを得意とするJDSCが農業、畜産にどう関わるのか。読みどころたっぷりです。当社の板橋珠恵(写真右)と佐々木佑介(中央、通称:ぽんすけ)、中橋良信(左)の3名が熱く、熱く語ります。進行は佐藤飛鳥が担当します。
板橋:本日は、一次産業のDXをテーマに、「農業」と「畜産」について全力でお話ししていこうと思います!
佐藤:それでは、本日のお品書き行きます!
1. これまで何やってきたの?―二つのプロジェクト事例を紹介
佐藤:まず、これまでにどのようなプロジェクトをやってきたのか、教えてください。
板橋:プレスリリースも出させて頂いている東急不動産様との営農型太陽光発電では、太陽光発電と併行してニンジンやエダマメ、米などを、データを駆使しながら育てることをやっています。他の営農型太陽光発電のプロジェクトでは、サツマイモに特化して、品種間に差が出るかどうかの実験も行っています。
ぽんすけ:どうもサツマイモマスターです(笑)
板橋:実は“営農型太陽光発電”という言葉について、私もJDSCに入るまで知らず生きてきました。皆さんの中でも聞き馴染みがない方もいらっしゃるかと思われます。
再生可能エネルギー(以下:再エネ)の導入量を増やしていかないといけない中で、2030年までの基準値(再エネ電源構成比36-38%)を考えると、実質的に太陽光発電以外の選択肢が無く、日本産業全体として注目が集まっている分野です。
日本の国土の狭さを踏まえると、農地や耕作放棄地を含めた小規模な土地での発電を視野に入れる必要があります。そこで、農業生産と発電の共存ができる営農型太陽光発電が注目されてきています。
加えて、業界全体としてノウハウが蓄積しておらず、企業の取り組みとしても、学術的な領域としてもまだまだ未熟な分野になっています。私たちJDSCは、東急不動産様を中心とする12者共同でプレスリリースを発表したように、データ駆動型の営農型太陽光発電手法の開発をスタートさせました。
佐藤:それだけ壮大なプロジェクト内でJDSCは、どんなロールを担当したの?
板橋:簡潔に言うと、計画策定、データ取得、解析までを一気通貫で行いました。計画としては、「圃場の各エリアの日射量はどれくらいなのか?(太陽光パネルの真下とパネルの間ではどれくらい日射量が異なるのか?)」などをシュミレーションをして、農家の方や東急不動産様と議論をしながらどの作物をどれくらいの時期に作付けするかなどを決めていきました。そしてデータ取得に関しては、データ取得機器を自分たちで農地まで運んで設置し、監視を行いました。データ取得機器を動かすための電源も自分たちで何とか調達しながら、、地道にデータ収集を行う、という泥臭い半年間を過ごしました。
佐藤:しょっちゅう東松山行ってたもんね〜(笑)
ぽんすけ:そうなんです。どうしても天候に左右されるということもあり、大変でした。
板橋:そして、解析のところとしては、環境データの可視化や、各作物の生育状態と環境データの相関関係を解析し次期営農計画の策定に活用しました。
ぽんすけ:また、この実証における成果として、パネル下の日射量を推定する機械学習モデルを構築して論文を発表しました。先日、実際に奈良まで学会発表も行ってきました。パネルをどのような向き、構造で貼るかによって効果の大きさが変わってくるのですが、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の基準として、面積あたりのパネルを真上から見た形で行っています。これってパネル設置面積と設置外周面積(設置する土地全体の面積)の割合を用いる単純な式であるため、太陽の動きによる日射量の変化やパネル配置パターンによる影響は考慮されていないんですよね。これに着目して検証を行い、実際に大幅に改善されたので、論文にした、という経緯になります。
板橋:ところで、サツマイモの方はどうだったんですか?
ぽんすけ:プロセスは同じで、研究計画、シュミレーション、解析を行っていました。苦労した点としては、データ取得の部分です。なぜならば、サツマイモは成長が目に見えないからです。。なので定期的に試し堀り結果による時系列解析や収穫量に対する統計解析を実施しました。また、芋ってS,M,Lサイズがあって、SサイズとMサイズが焼き芋に向いているサイズなんです。それを狙って育成していこう、というプロセスを解析して報告するまで行いました。終わった後は、大量に芋掘りをして、指を折る、という経験もしました(笑)
2. 農業、畜産それぞれのスペシャリスト紹介
佐藤:では、一次産業、具体的には農業と畜産に想いを持つスペシャリストを改めてご紹介させていただきます。
ぽんすけ:私は自分でも「株式会社きゅうりトマトなすび」という会社もやっています。農業にセンシング技術を応用して育成状態を数値化したり、営農指導のデジタル化にとプライベート大規模言語AIによって営農指導を行うといった、JDSCと連携可能な事業もやっています。
現在では、JDSCと深い関係ある東京大学の越塚登先生がこの辺りにがっつり絡んでくださっていて、JA高知県と農家さんが提携を結んでいることで、アカデミアや他の外部団体が自由にIoPクラウド(SaaSと呼ばれる巨大データベース)を使うことができるようになっています。これによって、栽培、出荷データが可視化されるだけでなく、海の流れなどの海洋情報にもアクセスできます。海も地道に活動は続けているのですが、なかなか身が結んでいない、というのが現状です、、、。
佐藤:なんか楽しそうなことやってるね〜。
ぽんすけ:すごく楽しんではいますが、夏は暑いし冬は寒いので、体力的にしんどいです。それでも一次産業のアップグレードに興味がある方は一緒に仕事ができたらなと思います!
佐藤:それでは、畜産の中橋さんお願いします!
中橋:私は帯広畜産大学で博士課程を出ています。博士論文では、「黒毛和種における持続的な改良を目的とした新たな改良目標の妥当性と交雑種の活用」という研究を行っていました。
佐藤:えっ!?改良を持続的に行うってどういうことなの?(笑)
中橋:さすが、鋭いですね。実は和牛は維持できるか危うい品種なんです。歴史的に「サシ、霜降り」を増やそうとした結果、特定の種雄牛に集中することで遺伝的多様性が失われてしまい、例えば見かけ上は数万頭いても、実際に交配できる相手は数十頭しかいないみたいなことが起きています。
そこで、新しい改良目標の指標として、脂肪の量ではなく脂肪の質に注目して指標を作ろう、という取り組みを行っていました。加えて、交雑種として扱われる品種との交配によって新たな可能性を見出せないか、という研究を行っていました。
ここだけの話、昔からあっためてきたアイディアがあるので、これから鈴木徳馬さん(JDSC社員)と研究しようと思っています。
佐藤:乞うご期待ですね!
3. 今後何やりたいの?―仕掛けていきたい事業領域について
板橋:ありがとうございます。農業と畜産に分けてお話しさせていただけたらなと思います。畜産について熱く語って頂いた直後なので、先に畜産の方からよろしくお願いします!
中橋:はい、私としては畜産領域の課題に、因果推論や画像解析などの技術で挑みたいと考えています。例えば牛の発情検知などは取り組んでいる事業者も世の中にいますが、精度の問題などでなかなか本格的な実用にいたっていないのが現状です。自身の学生時代の研究領域だったこともあり、こういった領域にデータサイエンスやAIを用いるアイデアはライフワークとしてずっと考えてきたものがあります。それらを社会に実装してこの業界に貢献したいと考えています。
板橋:ありがとうございます!それでは農業については私から。どこの業界もそうだと思うのですが、まずはデータを作るところが一番大切で一番大変で泥臭い部分になると思っています。なのでこのデータ取得や蓄積の部分から、JDSCや「きゅうりトマトなすび」が真面目にやるんだという覚悟です。データが溜まった先には様々な変革ができると考えているので、アカデミア連携も含め、各社と議論を重ねていきたいと考えています。そして「きゅうりトマトなすび」のような農業に特化した、かつ、技術の強い会社との連携も今後一層力をいれていきたいです。
佐々木:まさに「きゅうりトマトなすび」は「農業現場のデジタル化」にフォーカスして、農業現場に最先端のテクノロジーを導入していくことをミッションとしています。僕自身、東京大学で研究を続けていることもあり、きちんとテクノロジーに強い会社でありつつ、着実に社会実装したいという思いが強いです。ただ世の中に本当に貢献していくためには、テクノロジーの力だけではなく、様々な事業者を巻き込むような動きも必要だと思うので、JDSCとも連携しながら進めていければと考えています。
最後に
佐藤:プレゼン、ありがとうございました!それでは最後にコメントの方をどうぞ!
板橋:私自身としては、少しオタッキーな人たちと仕事ができることが本当に幸せだと思っているので、これからもなんでも拾えるものは拾っていこうという勢いで頑張っていこうと思います。
佐藤:それでは、きゅうりトマトなすびの方。
ぽんすけさん:そうですね、改めて。一次産業はどうしてもデータを泥臭く集めていかないといけないので、そこをまずは頑張っていこうと思います。
佐藤:それでは、中橋さん。
中橋:はい。昔から温めてきたアイディアは多くあるのですが、最近になって形になる可能性が見えてきて嬉しく思っています。楽しみながら頑張っていきます。
佐藤:ありがとうございます!こういうオタッキーな検討が実はJDSCという会社を進化させていく上での原動力になるのではないかと考えています。それじゃあ皆さん、本日はありがとうございました!