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指す将順位戦6th A2-10 vs ここのかさん

 指す将順位戦の自戦記です。10回戦について書いていきます。

棋歴

 私は学生時代、学業に苦しみながらもゲームを作りたいと思ってC言語を学ぶところから始め、WinAPIでアプリケーションを動かしました。いくつかの画面を実装して、アニメーションのちらつきも消したりしましたが、ゲームを形にするというのは果てしなく道のりが長いもので、完成することはありませんでした。ただ、その頃の経験は後にITエンジニアとなった自分にとってとても意義の大きなものになりました。
 大切なものは、頑張っていてもなかなか手に入らないようでいて、振り返ってみるとやっぱりあのとき頑張って良かったなと、いつのまにか手に入れているということが多いものです。

 私が将棋のルールを覚えたのは9歳になる頃だったかと思います。父、兄、祖父などに相手をしてもらいました。みんなそれほど強くはありませんでしたが、それでも将棋を知っていて遊ぶことができたというのは、将棋文化の裾野の広さというものでしょう。
 年に1度小学校対抗の大会に出るのが楽しみで、3年生くらいで矢倉囲いを覚え、高学年の頃に四間飛車を始めました。
 中学に上がり、囲碁将棋部に在籍するようになると、教員、上級生、同学年で強い人たちがいて、ライバルに揉まれることとなりました。このライバルたちとは、高校卒業まで切磋琢磨して互いに強くなりました。
 主力戦法を右四間に変えたり、コーヤン流三間飛車に変えたりしました。いろいろな大会や関西将棋会館道場で指す経験もあり、棋力も伸びて初段くらいになりました。

 大学生になると将棋部の雰囲気に馴染めなかったこともあり、しばらく将棋から離れていました。
 再び将棋に興味が戻ったのは、ニコニコ動画がタイトル戦の中継をするようになったことがきっかけです。羽生-渡辺のタイトル戦の現地解説会に行ったりもしました。連盟の中継アプリでプロの対局を追うようになり、まだその言葉は普及する前でしたが、いわゆる「観る将」でした。
 プロ棋戦の中継を熱心に読むことで、ほとんど実戦を指さずに初段→二段くらいの棋力向上があったような気がしています。
 指す将への復帰はウォーズ・クエストのアプリからです。ただ、序盤の指し方が固まっておらず、得意戦法や好きな戦型が無い状態でした。

戦型選択のシステム化

 1つの転機は、ニコニコ動画などで配信されていたなつめたもる氏のバッファロー銀戦法との出会いでした。将棋の楽しさを全力で表現してくれた氏には感謝しかありません。ここに着想を得て以来、これまで自分が指してきた戦型も合わせて、先手番・後手番の戦型選択を整理し始めました。

 先手番では初手2六歩と突き、振り飛車への転換を主軸に指す。後手番では概ね相手に追随して3二金型の振り飛車を主軸に指す。これで今の自分のスタイルができてきました。
 私はもともと終盤型だったので、序盤の方針が安定したおかげで勝率が上がり、二段→三段くらいの棋力向上になった気がしています。
 現在のスタイルでは10代で学んだ四間飛車、コーヤン流、右四間などが全て活きていて、不思議な感じです。

 私の戦型選択は手番や相手の手によって変わるため、今期初参加となる指す将順位戦でもバラエティに富んだ内容となっていて楽しいです。
 そして10回戦。お相手のここのかさんは、棋譜を見ると先手番で三間飛車、後手番で中飛車を多用している印象でした。先手番の三間飛車に対しては、8回戦のあさねぼうさん戦と似たような展開を想定していました。

棋譜

 棋譜は将棋倶楽部24またはJavaScript将棋盤で。

相中飛車から先手向かい飛車に

 後手番となりました。予想と少し違って、ここのかさんの作戦は先手中飛車でした。
 先手中飛車に対しては、相中飛車で勝負するというのが現在の私の戦型選択となっています。おそらく相中飛車は先手番のほうが有利と考えている中飛車党の方が多いと思いますが、一方で相中飛車をちゃんと研究している中飛車党も少ないというのが私の認識です。相中飛車は、金銀の厚みを重視する私の棋風が活きやすい戦型と捉えています。

▲5六歩 △3四歩 ▲5八飛 △5四歩 ▲7六歩 △5二飛
▲4八玉 △6二玉 ▲3八玉 △7二玉 ▲7七角 △1四歩
▲1六歩 △4四歩(図1)

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 しかし、後手が中飛車に構えたのを見て、先手は▲7七角から▲8八飛と向かい飛車に振り直しました。相振りなら中飛車より向かい飛車という感覚は私にもあり、有力な方針の1つです。

▲8八飛 △4二銀 ▲8六歩 △5三銀 ▲8五歩 △6四銀
▲8四歩 △同歩 ▲同飛 △8三歩 ▲8六飛 △5五歩
▲同歩 △同銀 ▲6八銀 △5六歩 ▲4八金 △3三角
▲7五歩 △8二銀 ▲7六飛 △6二金 ▲7四歩 △同歩
▲同飛 △7三銀(図2)

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 少し局面が進んで、図2では問題がありました。本譜は▲7六飛と引きますが、双方見落としていた変化で、ここは▲5三歩から先手が優位を奪うチャンスだったようです。後手としては5筋を制圧したつもりでいて、5五の銀が角に睨まれているのは要注意でした。
 この局面以前に、後手としては△4五歩~△4六歩と攻めていきたかったのですが、8筋7筋の歩交換を利用して▲3四飛と回られる展開が嫌だったため、攻めを保留して守備に手をかけていました。

飛車を攻める

▲7六飛 △7四歩 ▲9六歩(図3)

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 図3は5筋を抑えている後手の模様が良いと思っていましたが、KENTO低精度ではあまり評価されず互角とのことでした。
 ここで後手は方針の選択を行いました。
 1つは、もとの方針に沿って△4五歩から攻め合う手順。もう1つは、先手の飛車が狭い形なので、△6四銀~△7五銀として飛車を取りに行く順。この2択で、私は後者を選択しました。
 ただ、△6四銀▲9五歩△7五銀とすると▲9六飛と飛車を取り逃します。それで後手まあまあの形と思われますが、このときは欲の皮が突っ張って、一旦△9四歩と端を受けて次の△6四銀を狙うという方針を選択しました。ここは1つ見通しの甘さを反省すべきポイントでした。

△9四歩 ▲9七桂 △6四銀引 ▲8五桂 △7五銀 ▲7三桂成
△同桂 ▲7五飛(図4)

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 先手は端桂から攻めてきましたが。途中、方針を曲げて謝る手もあったと思われますが、△7五銀で先手の飛車を捕獲するという方針を貫いた結果、図4に至りました。
 しかし図4に至ると先手有利の局面となっています。手番は先手で、玉形も先手が安定しており、▲4三銀と▲7四歩の厳しい攻めが残っています。

勝負所を失う

△7五同歩 ▲4三銀 △5一飛 ▲5二歩 △同金上 ▲同銀成
△同飛 ▲4三金 △5四飛 ▲5三歩 △6五桂 ▲6六角(図5)

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 形勢が悪いと思われた中で、▲5三歩は少し甘い感じにも見え、反撃するならこのタイミングしかありませんでした。ただ先手陣にどう攻めかかれば良いかの結論が出ず、図5では時間に追われて△5七桂打という悪手を指してしまいました。
 代えて△5七歩成や△8九飛~△5七歩成と攻める手を指せれば、自信は無いながらも勝負形になっていたのではないかと思います。ここが2つめの反省ポイントで、一気に敗勢に陥ってしまったと思います。

△5七桂打 ▲5九金 △8九飛 ▲7四歩 △同飛 ▲5二歩成
△7三金 ▲3三金 △同桂 ▲5三角(図6)

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 △5七桂打が祟って早い攻めが無いため、後手は受けるしかありません。しかしそれも▲5三角が幸便すぎる角打ちで、対処がありませんでした。△8四飛引成は4四角行と出られて無意味な手になってしまいましたが、ほかの手でも受けることはできない状況でした。

△8四飛引成 ▲4四角上 △8一金 ▲7一銀(図7)

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 終局図は、きれいに必至をかけられました。この寄せの正確さはお見事としか言えません。序中盤も安定していたので、終始うまく指されたと思います。

次は最終節

 リーグ戦は残留争いが複雑な状況となっています。おそらく5勝すれば残留、4勝だと順位の差で入れ替え戦もあり得るというところ。また24日のあさねぼうさんvsこまちさん戦は生き残りを賭けた一戦となり注目です。
 また昇級争いでは同じく24日のメルモンさんvsそうざいさん戦が大きなところで、もしそうざいさんが勝った場合、最終節で私とそうざいさんとの一局も重要度が増してくるといった状況です。

 私個人としては5勝5敗の指し分けとなった状況なので、ぜひとも最終節で勝って勝ち越したいと思っています。

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