「被災者に公的補償を!」/災害からの復興を求めて/たたかいが政治動かす/「自己責任論」を乗り越え
頻発する災害
日本では、毎年のように大地震や噴火が起き、各地で被害が相次いでいます。また豪雨や大雪、竜巻などの気象災害も頻発化・激甚化しています。能登半島では、1月の大地震の後に、9月にも豪雨災害が重なり、甚大な被害となって、生活再建の見通しが持てない状況が続いています。
被災者の方が生活と生業を取り戻し、人が戻ってこそ、地域の復興です。しかし、日本の被災者支援制度は貧弱で、阪神淡路大震災や東日本大震災に限らず、過去の災害で、多くの被災者の方が、自宅を再建できない、生業を再建できないなどの理由から、慣れ親しんだ地域から離れざるを得なくなり、地域コミュニティが崩壊してしまう事例が相次いでいます。
1.被災者生活再建支援法/住宅の再建への支援を求めるたたかい
復興への困難/「住宅の再建」
災害からの復興で最大の課題となるのは住宅の再建です。被災し、仕事や生業が失われている中での多額の復旧・再建費用は、きわめて大きな負担となります。公的な個人補償が不可欠です。
現在、「被災者生活再建支援法」に基づいて、最大300万円の支援金が出される制度がありますが、この制度が作られるきっかけとなったのは、1995年1月17日におきた阪神淡路大震災です。死者6434人、家屋全壊約46万世帯という甚大な被害でした。
阪神淡路大震災/公的補償制度の創設を求めて/政府は「自助努力が原則」
「国の責任での個人補償制度を創設することが不可欠だ」
日本共産党は、個人補償の必要性をいち早く提起し、被災者らの運動と連帯して積極的な役割を果たしてきました。
発災から9日後の1月26日には、穀田恵二議員が衆院予算委員会で「自力での生活を再建する基礎が失われる」と、国の責任での個人補償を迫りました。
しかし、当時の自民・社会・さきがけの村山富市政権は、「日本は私有財産制。個人の財産は個人の責任の下に維持するのが建前」と拒絶しました。
<1995年1月26日衆予算委員会より抜粋 穀田恵二質問>
〇穀田議員
私は、家も失う、資産も失う、家財道具も全部失う、そういう自力で生活を再建する場合、その基礎が失われているわけですから、少なくともその基礎は政府の責任でつくってあげる、これこそ政治の責任ではないかと思うのです。そういう意味で個人補償をやるべきだ。
災害対策基本法の第三条にこう書いています。政府の責任として、「国民の生命、身体及び財産を災害から保護する使命を有することにかんがみ、組織及び機能のすべてをあげて防災に関し万全の措置を講ずる責務を有する」と書いています。これは、今本当に国民の安全を守る上での基軸になる政治のあり方の根本を指し示していると思うのです。
そうしますと、今度の大震災で、政府はこの責任を果たし切ってきたのだろうかと思うわけです。国がみずからの責任を果たしてこなかった、そういう自責の立場で改めて個人補償をやるべきじゃないだろうか。
〇武村正義財務大臣
この国のやはり基本というものを踏まえなければなりません。私有財産制をとっております。個人の財産は個人の責任のもとに維持するというのが建前であります。
<1996年2月6日衆予算委員会より抜粋 志位和夫質問>
1996年1月に橋本政権が発足した後も、日本共産党国会議員団は、被災住宅への公的支援の必要性を、国会で重ねて追及。志位和夫議員が橋本首相に迫りました。
〇志位議員
被災地に参りまして被災者の方々の声を聞きますと、圧倒的多数の願いは住みなれた町に戻りたい、そのための住宅の保障をということであります。そのために私は、きょう総理にお伺いしたいのは、この個人補償についてであります。
朝日新聞の仮設住宅の皆さんに対する調査では、「震災前に住んでいた地域に戻りますか」という問いに対して、四五%の方が戻りたくても戻れない、こうおっしゃられている。自助努力の基盤がないんですよ。そうであるならば、国家が生活基盤を再建するための個人補償を初めとする措置を講じる以外に、被災者が生活再建をしていく道はないではないかと私は考えます。この点での総理の見解をまず承りたいと思います。
〇橋本内閣総理大臣
公式にお答えを申しますなら、一般に、自然災害による個人の被害というものに対して自助努力による回復というものを原則としている、それはそのとおり、今までもルールとして申し上げてきたことであります。
「被災者に公的補償を!」広まるたたかい
「自然災害には自助努力で」。こうした政府の姿勢を突き崩したのは、被災者をはじめとした幅広い人たちと日本共産党の共同の運動でした。
95年3月には、被災地の労働組合など45団体、医師、弁護士、研究者などが救援・復興兵庫県民会議を結成。署名や政府への要請、大集会に繰り返し取り組みました。
96年1月には、医師会会長、大学学長など兵庫県内の著名48氏が公的支援拡充を求めるアピールを発表しました。また、作家の小田実氏(故人)らは、「被災地からの緊急・要求声明」(3月)で個人補償を訴え、5月には「市民=議員立法実現推進本部」を立ち上げて生活再建援助法案を公表、超党派議員に呼びかけをはじめました。
志位書記局長(当時)は小田氏らと懇談し、「力を合わせてがんばりたい」と協力を誓いました。党として生活再建支援法案の大綱を発表しつつ、超党派の国会議員に共同を呼びかけ。「被災者支援法実現・議員の会」で法案を練りあげ、97年5月には、6会派共同で法案を参院に提出しました。
世論に押された自民党は98年、阪神・淡路大震災の被災者には適用されず、所得や年齢の制限が多いなどまったく不十分ながら「被災者生活支援法」を提案せざるを得なくなりました。
こうして、自助努力の壁を乗り越え、98年に、被災者に最大100万円を支給する被災者生活再建支援法は成立しました。
勝ち取ってきた成果
その後も、被災者と日本共産党などは制度の改善を求めて運動と論戦を続け、成果を勝ち取ってきました。
支援金の上限を最大300万円まで拡充(2004年)
住宅の再建には使えなかった支援金制度を改善(2007年)
大規模半壊以上が対象だった被災者生活再建支援金を、中規模半壊に拡大(2020年)
たたかいが「自己責任論」の壁を打ち破り、政治を動かしてきたのです。
2.【塩川鉄也議員の活動と国会論戦】
①激甚化・頻発化する水害/被災者生活再建支援法の拡充を
塩川鉄也は、日本共産党国会議員団の一員として、被災者支援制度の改善をもとめる活動の先頭に立ってきました。
2015年9月に茨城県や栃木県などを中心に被害をもたらした大規模水害「関東・東北豪雨」は、死者14名、被災家屋は約2万2000件を超える被害となりました。鬼怒川の堤防が決壊した茨城県常総市は、市の約3分の1が浸水。約2万1000世帯のうち、8000を超える世帯が被害を受けるという特に甚大な被害を受けました。
塩川鉄也は、発災の翌日に現地調査に。地元で支援にあたっている党組織や市議団などと一緒に、避難所や役場に伺い、被災者の方や、当時の高杉徹常総市長、佐藤信鹿沼市長から直に話を伺い、その後も複数回調査に伺いました。当時の調査の記録です。
甚大な被害に反して、被害認定では、全壊と認定されたのは81件にとどまりました。対して半壊は約7000件、床上浸水約2500件、床下浸水は1万3000件と、圧倒的多数が被災者生活再建支援法の対象とならない半壊以下との認定でした。
「国として個人補償の拡充に乗り出すべきだ」
塩川鉄也は、被災者生活再建支援法の対象外となる被災者に対しても支援を行う必要があると迫りました。
<2015年12月3日 衆災害対策特別委員会塩川鉄也質問 関東・東北豪雨災害>
〇塩川議員
茨城県が常総市とともに一連の独自の支援策を打ち出しました。幾つか紹介すると、一つは、被災者生活再建支援法では支援の対象にならない半壊世帯への25万円の支給、二つは、所得制限により災害救助法の応急修理の対象とならない世帯に対して、住宅応急修理の支援額と同等の補助を行うということ、三つ目に、被災中小企業の事業再開、事業継続に対する50万円の補助などであります。
これはまさに、現場の被災者の実態に即して、被災者の強い要望、要求もあり、これを被災者の皆さんはよしとしているわけではない、さらにという思いの中でのこういう施策であると思いますけれども、大臣は、この県等がとった措置についてはどのように受けとめておられますか。
〇河野太郎国務大臣
これから先の災害につきましては、やはり自助。
今、災害の場合に対する保険制度というのがございます。これは、地震保険、あるいは水害の場合の保険もございます。これから先の水害につきましては、まずきちんきちんとみずからそうした保険制度に加入をしていただいて、実際に被災をしたときにはきちんと再建に必要な保険金がおりる、こういう制度があるわけでございますから、これをきちんと活用、拡充していただくようにお願いを申し上げたいと思います。
〇塩川議員
水害の場合でも、よく言われるように、床上浸水であれ、もう壁は全部水が吸い上がって、断熱材が使えませんと。畳だって全部だめですし、一階の家財道具、電化製品が全部だめと。これだけの大きな被害があるにもかかわらず、実際には生活再建支援法の対象にならないということについて、強い不公平感が上がっているのも当然のことだろうと思います。
半壊世帯への支援金支給に踏み出すべきときでありますし、あわせて、この支給額についても見直しを行うときだと思います。
〇河野太郎大臣
これは、お見舞金という性格のものでございますので、これを引き上げるというよりは、もう何度もきょう繰り返して恐縮でございますが、やはり災害に対する備えというのは、まず自助でお願いをしていくのが先だと思います。
〇塩川議員
住宅再建というのは生活再建だという点でも、生活再建なしに地域の再建もありませんし、大規模災害であればなおさらのこと、日本社会にかかわるような重大な損害をもたらすわけで、そういった、住宅を再建するということがいわば本来政治の土台に座っていてしかるべきだ、こういう立場での支援策を国がきちっと示していくということを財政的にも保障する、こういう取り組みこそ改めて重要だということを強調しておくものであります。
粘り強いたたかい/中規模半壊も支援法の対象に/内水氾濫の被害認定基準見直し
こうした論戦が、2020年の被災者生活再建支援法の改正で、大規模半壊以上が対象だった支援金の対象を、中規模半壊へ拡大させることにつながりました。
また、2024年6月には、内水氾濫の被害認定基準が見直され、床上浸水であれば、少なくとも準半壊と認定されることになりました。これにより、床上浸水の場合、災害救助法に基づく応急修理制度(準半壊は34万3000円、半壊以上だと70万6000円)が活用できることが確実となりました。
収穫後のお米にも補助を!
関東東北豪雨では、農作物への被害も深刻でした。とりわけ、米どころの常総市では、収穫直後のお米が浸水によってダメになり、農家の方は途方にくれていました。国に対して補助を求めても、農水省は「収穫後の米は共済の対象外」という見解でした。
塩川鉄也は、現地調査から戻ってすぐに、共産党茨城県委員会とともに農水省に要請。収穫後のお米に対する支援拡充を求めました。
その結果、農水省は自宅で保管していた収穫後のお米についても、農業共済と同水準の助成を行う方針に転換。支援が一歩前進しました。
さらなる改善を/たたかいは続く
運動の到達点はあるものの、いまだ公的な個人補償制度の対象となるのは被災者の一部にすぎず、支援額も300万円と住宅の再建には到底不十分な水準に留まっています。制度の拡充は急務です。日本共産党は、「被災者の生活と生業が再建してこそ地域の復興だ」と、被災住宅の改修・再建や、中小商工業者・農林漁業者の事業の再建への支援拡充が必要だと主張しています。
全壊や大規模半壊だけでなく中規模半壊にいたらない半壊や「一部損壊」に支援対象をひろげる。
支援金を当面500万円に引き上げる。
市町村で10以上の全壊世帯などの適用条件の緩和や国庫負担の拡充をおこなう。
地域経済とコミュニティの担い手である中小商工業者や農林漁業者の事業の再建をすすめるため、事業所や事業(営農)用施設・設備再建に対する直接支援など、生業再建に対する支援を本格的につよめる。
被災者の生活と生業を再建し、地域の復興を求めるたたかいは続いています。被災者の声・世論と国会論戦が結んで、政治を動かした塩川鉄也の活動をもう一つご紹介します。
②液状化被害への支援策
液状化被害対策/東日本大震災/40回を超える現地調査・懇談
東日本大震災では、大規模な液状化被害が発生。個人の住宅も多数の被害を受けました。
塩川鉄也は、被災直後から現地調査を行い、被災現場と被災者の声の把握に取り組んできました。北関東を中心に、その回数は40回を超えました。
現地調査などの取り組みの様子は、塩川鉄也HPに記録が残っています。ご覧いただければ幸いです。
茨城・水戸市、日立市/東日本大震災の被害調査(3月12日)
福島/自治体ごと避難の浪江町・富岡町・川内村を調査(4月29日)
東日本大震災/神栖市・稲敷市・浦安市で液状化など調査(5月8~9日)
その他、塩川鉄也の災害に関する活動の記録
・2011年~17年の活動
・2018年~現在までの活動
①実態と乖離した液状化被害の認定基準
こうした調査により、二つの大きな問題が明らかになりました。
一つは、被災者生活再建支援金などの支援の出発点となる「被害認定基準」が、住宅の液状化被害の実態を反映したものとはなっていないことです。傾いた家に住むと、目まいや不眠などの健康被害が生じます。しかし、当時の被害認定基準は、この点を考慮したものになっておらず、実際にはとても住めない状態なのに、被害認定が低く出されてしまうケースが相次ぎました。
もう一つの問題は、再度の液状化被害を防止するために必要な、面的な液状化対策です。家の傾きを直して当面の間住める状態になったとしても、再び地震が起きたら、また液状化するのではないか。住民の方たちは不安を抱えていましたが、住宅を含む面的な液状化対策に対する公的な支援制度はありませんでした。
「被害の実態にあった認定制度にせよ」
塩川鉄也は、現地調査で受け止めた被災者の声を国会に届け、液状化被害の認定基準見直しの必要性を主張。政府は当初否定的でしたが、現場の実態を伝え、重ねて追及するにつれて、政府も考えを改め、認定基準改正につながりました。
<2011年4月5日衆総務委員会 塩川鉄也質問 液状化被害認定基準見直し(その1)>
○塩川議員
過去、液状化による全壊などの被害認定の事例と件数がどのようになっているのか。
○長谷川政府参考人
地盤の液状化が原因となって全壊と判定された事例といたしましては、中越地震の際に数件あったというふうにお聞きしております。
〇塩川議員
過去、液状化による全壊等の被害認定の事例と件数というのはほとんどないということが実態であります。
被害認定の実態に見合ったような要件緩和や、あるいは新たな制度の創設も含めて検討すべきときにあると思います。
例えば浦安市の方などのお話でも、二十分の一というのは、一メートルに対して五センチずれているということですからかなりの傾きですけれども、実際には、例えば四十分の一ぐらいの傾きであっても寝ることすらできないような状況になるわけですね。家の中で酔っているような雰囲気にならざるを得ないのが家の傾きの問題ですから、とても住める状況にないという被災者の声がございます。
認定要件の緩和を含めた見直しをする必要があるんじゃないのか。実態に即した対応を今行ってもらいたい。
〇長谷川政府参考人
現時点におきましては、さらなる改定の必要があるというふうには必ずしも考えていないというところでございます。
○塩川議員
基本は、住み続けることができない状態ならば、それはもう全壊ということなんですよね。そういう観点で対応することこそ必要です。地域の被災状況を踏まえ、被災者支援の立場で行う各自治体の被害認定をしっかりと尊重するということで対応していただきたいと思いますが、改めて、いかがでしょうか。
○長谷川政府参考人
いろいろ御相談があれば適切に乗っていきたいというふうに思います。
<2011年4月15日衆総務委員会 液状化被害認定基準見直し(その2)>
○塩川議員
四月の十二日に、東日本大震災による液状化被害者が多数に上る自治体の首長さんが要望書を国に出されました。「災害に係る住家の被害認定基準における液状化被害の取り扱いの明確化及び大幅な被害割合の追加をすること」「被災者生活再建支援法における支援金の拡充として、金額のかさ上げ及び、半壊・床上浸水住家についての新たな財政措置を講じること」「液状化による被害の新たな支援金支給制度の創設及び適用を図ること」、このようなものであります。
ぜひ、その要望を受けた松本大臣として、この要望内容にどのように対応をしていくのかについてお尋ねをいたします。
〇松本龍国務大臣
現実の基準が今回の地盤の液状化の実態にそぐわないという指摘もありますので、これから、家屋の状況を調査して、基準の見直し等も含めて勉強していきたいと思います。
<2011年4月28日衆総務委員会 液状化被害認定基準見直し(その3)>
〇塩川議員
被害認定の基準の見直しなど、どのように対応されていくお考えなのか、その点についてお聞かせください。
○東祥三内閣府副大臣
これまでの液状化による住宅の被害認定の方法につきましては、委員を初め多くの方々から御指摘をいただいてきたところであります。できるだけ早くこの基準見直しを決断したいというふうに思っております。
被害認定基準見直し!
こうした議論を経て、内閣府は、2011年5月2日に住宅被害の新しい被害認定基準を発表。住家四隅の傾斜の平均が100分の1(100センチの垂直高さに対して1センチの水平方向のずれ、以下同じ)以上であれば半壊とみなすなど救済範囲を広げました。
②住宅の液状化対策/面的な再度災害防止策を創設!
東日本大震災の液状化による被災家屋は国交省の集計によると約2万7000戸とされています。
住宅の復旧と共に、新たな地震が起きたときに再び液状化被害が発生しないよう、面的な液状化対策の必要性が明らかになりました。しかし、当時、住宅の液状化対策に対する公的な支援制度はありませんでした。
塩川鉄也は、宅地における液状化対策を怠ってきた国の責任を追及するとともに、公的な支援制度が必要だと迫り、当時、総理だった菅直人総理に制度の創設を約束させました。
<2011年7月20日衆予算委員会>
〇塩川議員
液状化被害については、一九六〇年代の新潟地震から国として対策が必要だと認識をしておられた。
地盤工学会の提言では、国はインフラの液状化被害については一定程度対応してきたけれども、戸建て住宅については対応がおくれているということを取り上げております。
大畠大臣、この国の宅地液状化対策のおくれというのが今回の重大な被害の拡大につながったんじゃありませんか。
〇大畠章宏国交大臣
御指摘のように、個別の住宅に対する液状化対策に対する情報の提供あるいは対策というものがおくれたということは率直に私も認めたいと思います。
〇塩川議員
液状化対策の手段はあるんですよ。だから、しっかりやれば被害がなかった、あるいは軽微で済んだ。しかし実態は、国の制度がないために、今回の広範な液状化の宅地被害につながっている、この点をどうするのかということが問われているわけであります。
公共インフラの復興の延長線上で宅地の液状化被害対策というのではなくて、宅地の液状化被害に対して直接の公的な支援制度をしっかりと設けるべきだ、このことこそ行うべきだということを強く求めたい。
○菅直人内閣総理大臣
将来の震災などを考えますと、この液状化は、予防的な措置が重要だとも思っております。個人の家の対応については新たな制度を含めて検討が必要だ、そう考えております。
制度の活用実績
その後、政府は宅地液状化防止事業を創設。この制度は東日本大震災では約7000戸、熊本地震では約850戸の住宅で活用されました。これらの事業は、基本的には住民負担なしで行われました(特殊な工法を用いる必要があった浦安市では住民負担がありました)。住民負担がないよう国から自治体への財政措置が取られました。
能登半島地震でも大規模な液状化被害が発生しています。国交省が2024年9月時点で公表している件数で、新潟県で約9500件、石川県で約3500件、富山県で約2000件と、被害は甚大です。各地域で本制度の活用が検討されているところです。
能登半島地震/制度の改善を求めて
ようやく創設された宅地液状化防止事業ですが、この制度には運用面で課題があります。東日本大震災や熊本地震において、地域で活用を検討したものの実施には至らなかったケースが多数あります。東日本大震災では、90地区で制度の活用が検討されたものの、事業が実施されたのは10地区に、熊本地震でも熊本市内10地区で検討されたものの、実施されたのは2地区に留まっています。
何が原因にあるのか。被災者の方が必要とする支援は何か。
塩川鉄也は能登半島地震で特に液状化被害が大きかった新潟市に、2月と7月に現地調査に行き、被災者の方からお話を伺いました。
調査の様子はこちら(塩川鉄也HPへのリンク)
2月調査
7月調査
7月の調査では、新潟大学の災害・復興科学研究所の卜部厚志所長とも懇談。卜部所長は「個人負担の軽減が重要」「工法としては地下水位低下工法が有効だと考えている」とおっしゃっておられました。
こうした調査の内容を踏まえて、実際に使える事業とするために、東日本大震災や熊本地震と同様に、住民負担なしで行えるようにすることに加え、「住民が将来への展望を持てるように、住宅に当面住めるように傾きを直す復旧工事と、再度災害を防止するための面的な液状化対策を一体的に行うことが必要」だと国会で追及しました。
<2024年2月27日衆予算委員会第三分科会 住宅の修復と面的な液状化対策を一体で>
〇塩川議員
熊本地震の際には、国が復興基金を造成したことにより、被災自治体が液状化再度災害防止のための地盤改良工事を補助対象としました。同様に、能登半島地震災害で復興基金を是非実施をしてもらいたい。
〇総務省
まずは各省庁の支援策がスピード感を持って実施されることが重要であると認識をしており、その実施状況等を踏まえ、復興基金の必要性について適切に判断してまいります。
〇塩川議員
半年かけて補正というのでは間尺に合わないんですよ。今やるべきだ、熊本地震と同様な復興基金などの措置を行うべきだ。傾いた家の修繕というのは、健康障害を考慮すれば直ちに行う必要があるわけで、個人負担を軽減をし、住宅再建を支援をする予算措置を行うべきだということを強く求めるものであります。
その上で、国交省にお尋ねします。
東日本大震災の場合に、液状化の面的な工事の完了まで早くて六年、遅いと十年もかかっております。地盤改良の工事着手に時間がかかり過ぎると、地盤改良を待ち切れずに再建した家も出てまいります。住宅再建に温度差が生じて、液状化防止事業に対する住民の合意が困難になる。
まず、ジャッキアップなどの当面の傾きを直す工事の部分と、面的に再発防止をする液状化対策と一体に行う、こういうことが見えるような支援策を早期に打ち出す必要があるんじゃないか。
〇国土交通省
被災された住民の方々には早期に住宅宅地の復旧を行うニーズがあるものと承知しており、できる限り早く、地域における面的な液状化対策の方針をお示しすることが望ましいと考えております。 国土交通省といたしましては、被災自治体における面的な液状化対策に向けた検討が円滑に行われるよう、しっかりと支援してまいります。
◆国交省が「面的な液状化対策と耐震化(傾いた家の傾斜修復を含む)を一体で」方針を打ち出す
国交省はこの質問後に、「液状化による被害を受けた建物・宅地の安全性確保を図るためには、面的な液状化対策と建物の耐震化を一体的に行うことが必須」という方針を打ち出し、支援策の説明資料にも明記。面的な再度災害防止策である「宅地液状化防止事業」と、傾いた住宅の修復にも使える耐震化事業「住宅・建築物安全ストック事業」をセットで行う、としました。
<2024年4月17日 衆内閣委員会 自治体の判断で柔軟な運用を>
〇塩川議員
三月二十二日、政府は、能登半島地震により被災した宅地の安全確保支援を打ち出しました。そこでは、液状化による被害を受けた建物、宅地の安全性確保を図るためには、面的な液状化対策と建物の耐震化を一体的に行うことが必須としている点は重要であります。
そこで、国交省にお尋ねいたします。
住宅・建築物安全ストック形成事業について、これは液状化で傾いた住宅の補修に活用できるんでしょうか。
〇国土交通省
被災者が住宅の耐震改修工事とそれに必要な修復を行う場合に、委員御指摘の住宅・建築物安全ストック形成事業を活用することで最大120万円の定額補助を受けられることを明確にし、地方公共団体にもお示しさせていただいたところです。
この支援制度では、耐震診断の結果、住宅の傾斜や損壊により倒壊の危険性があると地方公共団体が判断すれば、その支援の対象となるものと考えております。
〇塩川鉄也
自治体がそれぞれの状況に応じて判断をするという点では、被災自治体の判断を尊重して弾力的な運用を是非図っていただきたいと思いますが、その点についても改めて一言お願いします。
〇国土交通省
もちろん、公共団体が最もよく状況、実情を御承知のところだと思っておりますので、その評価を第一に考えたいと思っております。
〇塩川鉄也
この住宅・建築物安全ストック形成事業と、(面的な液状化対策である)宅地液状化防止事業との関係ですけれども、宅地液状化防止事業の着手前に住宅・建築物安全ストック形成事業を活用するということは可能だということでよろしいですか。
〇国土交通省
可能であります。
国の責任で生活と生業の回復を
現制度では、被災者の生活と生業を再建し、地域を取り戻す復興は困難です。このことは能登半島地震の復興の遅れからも明らかです。
能登半島地震の液状化被害については、24年2月と4月に国会質問を行いましたが、その後7月に行った新潟市との懇談では、市から、国交省の事業について「耐震性が失われていることが要件となっており、使いにくい」との声も寄せられました。さらなる制度改善に向け、引き続き、国会で追及していきます。
「現行制度を最大限利用するとともに、制度がないなら新たに制度を作る」
この姿勢で、被災者の生活と生業を再建し、地域を復興する制度の実現に向けて、活動を続けていきます。<スタッフ>