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海外メディア・通信業界動向 1/29〜2/4
当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、おもに海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。
◆ 業界再編(M&A)
ComcastやCharter向けにシステム開発を行っているCSGをNECが買収か?
協議はまだ初期段階でNECが買収提案を見合わせる可能性、また別の会社がCSGに買収提案を行う可能性もあるということです。CSGの時価総額は17億ドル。最大の顧客はComcastで売上の20%を占めます。他にCharterやDish TVとも取引があり、課金やカスタマー管理などのシステム開発を行っています。CSGの第3四半期決算は売上が3%増の2億9510万ドルでしたが、通信事業者のコスト削減により市場シェアの維持に苦戦しているという見方があるようです。
Paramount、買収案件はSkyDanceとの契約に「拘束される」と発表
Project Rise Partners(PRP)からの新たな提案に対し、買収案件を協議するParamountの特別委員会がコメントしています。委員会によれば、Paramount売却を検討していた7ヶ月間、さらにSkyDanceとの協議がまとまり、その後に設定されたSkyDanceより条件の良い提案を募る45日間の「Go Shop」期間中にもPRPからの提案はなかったということです。株主利益の最大化のために広く提案を募るプロセスを経て結論としてSkyDanceに決まっており、現時点でこれは拘束力があるというものです。
参照(1/24):またもや波乱!? ParamountにSkyDanceを上回る135億ドルとの買収提案
SkyDanceは80億ドルで今春にも買収プロセスを完了させる計画でした。Project Rise Partners(PRP)はこれに対抗する法的に有効な提案文書を提出したといわれています。全額現金による提案で、PRPによれば資金は「信頼のおける投資家から確約された融資」としています。ただ、名前が明らかになっているのは2人だけで謎が多いようです。Ellison氏に匹敵する業界の大物、世界で最も裕福な人物の一人、衛星業界のパイオニアといった抽象的な表現で出資者を表現しています。一般論ですが、上場企業は株主の利益につながる正当な価値のある提案は検討する法的義務を負っています。
CharterのCEO、ComcastやT-Mobileとの合併は「長期戦略の中心ではない」
第4四半期の決算発表の場でコメントしています。米国のケーブル事業者は依然として家族経営であり、合併の機会は限られるのではないかとも。ComcastやCox、Mediacom、カナダのRogersを指した発言かと思われます。合併により得られる規模についても「Charterはすでに十分な規模を持っている」と否定的です。
◆ 規制・政策
FCC、固定ネットの集合住宅向け一括契約を認める
政策の転換です。昨年、禁止する方向で検討されていた規制案が廃止されました。今後は集合住宅の家主が固定ネット、ケーブル・衛星テレビを全住戸を対象に、仮に居住者が希望しないでも一括契約することを認めます。
参照(2024/7/30):FCCはネット中立性命令により集合住宅を特定ISPが独占する契約を排除する方向
アパートやマンション、それにショッピングモール、オフィスビルといった複数のテナントが入る建物をMTEs(Multi-Tenant Environments)と定義。このMTEsでテナントがISPを選べるようにするものです。つまりMTEsの保有者・管理者が特定のISPと独占的な契約を結び、テナントがそれ以外のISPを利用できなくすることを禁止するもの。これに加えFCC委員長はMTEsの管理者が賃貸料などと合わせてISP料金を一括請求することも禁止しようとしています。ただ、さまざまなISPからこのルールに対して異議申し立てが出されており、まだ有効にはなっていません。
英国、公共放送BBCの視聴料を配信サービスしか利用していない世帯からも徴収する案
一部のメディアが報じていますが、所轄する文化・メディア・スポーツ省(Department for Culture Media and Sport)は憶測へのコメントを避けているようです。英国では放送を見ておらず、BBCの配信だけを利用している世帯もすでに徴収対象になっています。今回の案は、BBCの放送や配信を見ておらず、BBC以外の配信サービスだけを利用している世帯からも徴収するものです。
参照(1/17):英国の担当大臣、国営放送BBCの財源に一般税を検討していることを否定
一部のメディアが受信料に変わる財源として報じていました。ただ受信料だけでは不十分であることは認めています。あくまで他国の事例として挙げたものですが、フランスでは映画館に国営放送の収入源となる課徴金を課していると説明しています。
◆ 業界動向
Comcastの第4四半期、固定ネットが13万9000世帯の減少、モバイルとの統合パッケージを計画
この減少数はComcastが事前に予測していた10万世帯、アナリストの7万3000世帯より厳しいものです。ただアナリストは、2025年はこれ以上の悪化は避けられ、2026年には増加に転じると分析しています。Comcastはテコ入れ策を近々発表するようです。「プロジェクト ジェネシス」と呼ばれており、シンプルかつ高速な固定ネットとモバイルのバンドルパッケージだといわれています。関連して経営指標に固定ネットとモバイルを組み合わせた「コンバージェンス収益」を導入。この指標では第4四半期は5%の成長となり、今後も固定ネット単体より早いペースで増加すると予想しています。好調を維持しているのはモバイルで、同四半期に30万7000回線増加し合計782万回線となりました。2024年通年では123万回線の増加です。テレビ加入者は31万1000世帯の減少。前年同期は38万9000世帯の減少でしたので若干改善しています。合計は1252万世帯です。
Charterの第4四半期、テレビと固定ネットは若干の改善が見られるものの依然減少傾向
テレビ加入者は12万3000世帯の減少でしたが、これは前年同期と比較すると半減しています。2024年全体では123万世帯、9%の減少で、現在の加入者数は1289万世帯になりました。今後のテコ入れ策として、去年から実施・強化している配信サービスの無料バンドルを積極的にアピールしていく計画です。第4四半期の固定ネットは17万7000世帯の減少、加入者数は3008万世帯となりました。これらに対してモバイルの販売は好調を維持しています。同四半期に52万9000回線増加し、個人向けは957万回線、法人向けは31万5000回線となり、まもなく1000万回線の大台に達する見込みです。今後は好調なモバイルと固定ネットのバンドル販売を積極展開していくということです。
◆ インフラ
Comcastによる固定ネットの高品質化、ゲームなどを対象にした超低遅延ネットを展開
従来の遅延時間数百msから22〜25msまで短縮します。ただし対象となるサービスは限定されています。当初はiPhone、iPad、Mac、Apple TV、Apple Vision ProでのFaceTime利用時、nVIDIAのGeForce Now(クラウドゲームサービス)、ValveのStream(ゲームプラットフォーム)が対象です。追加料金はかからず、第1四半期から全米各都市に順次展開していく計画です。ComcastやAppleなどは2023年ごろからL4S(Low Latency, Low Loss, and Scalable Throughput)の試験を行っていました。これの商用サービスへの適用を開始したようです。
世界の固定ネット、契約数が15億を突破
Point Topicsによる調査結果です。契約数の伸びは加速しています。最初の5億に到達するまでに10年を要したのに対し、次の5億から10億までは8年、10億から15億は6年間で達成しました。ただ米国など一部の国ではすでに市場が飽和状態にあると分析しています。
固定ネットのインフラ投資、DOCSISは2028年にピーク、光は2029年に年間121億ドル規模に
Dell'Oroによるものです。DOCSISに関しては4.0へのアップグレードを遅らせたり、4.0に移行しない事業者、FTTHに転換する事業者などにより時期がずれ込むようです。光関連のPON機器は2024年の105億ドルから2029年は121億ドルに、固定ネット全般では2024年から年率で0.8%成長し2028年に192億ドルでピークに達すると予測しています。成長率の予測は、2024年1月当時は3%、7月には1.1%としていましたので、下方修正が続いています。
インドで急増するFWA加入者、2027年には3000万に達するとの予測
Counterpoint Researchによるものです。2024年の上半期だけで200万以上増加し、年末には500万に達したようです。背景には固定ネットの回線不足があると分析しています。インドはモバイル(ネット)のほうが普及しており人口の55%が利用しています。対して固定ネットは2023年11月の3779万世帯から2024年11月の4097万世帯、320万世帯しか増加しませんでした。データ使用量は増加していることから、高速・安価なFWAのニーズが急増しており、2027年には3000万に達するとの予測につながったようです。インドの人口は約14億人、世帯数は3億を超えています。
今年か来年にはスマホから衛星経由でビデオ通話が可能に?
現在、日本でもモバイルネットワークが圏外になったときに衛星に接続するサービスが一部のスマホで可能になっていますが、利用できるのはショートメッセージなどに限られます。これは使用できる帯域が限られるためですが、今後、それが変わる可能性があるというものです。進めているのはAST SpaceMobileで、Starlinkの第2世代衛星よりはるかに大きなアンテナを搭載した衛星群を低軌道に配置。現在はわずか6機ですが、これを使用して英国でビデオ通話が可能なことを実証しました。米国でも検証のための許可をFCCから取得しています。ただ利用できるのは衛星が頭上にある時間帯に限られ、英国のケースでは1日わずか30分。AST SpaceMobileによれば、米国、ヨーロッパ、日本で24時間利用できるようにするために必要な衛星は45〜60機、全世界であれば95機が必要。同社は2028年までに243機を打ち上げ予定であり、短期間で全世界をカバーする計画です。ただしあくまでインフラレベルの話であって、実際にサービスがどのような形で提供されるかは分かりません。
インダストリー4.0の世界ではモバイル6Gは必要不可欠
あくまでこの記事での主張です。6Gの必要性を既存のモバイルサービスの延長線上で捉えると見誤るというもの。6Gは今後訪れることが予想されるインダストリー4.0、ここではIoTデバイスが数多く利用されるデジタル産業化が進行した社会を5Gではカバーできないとしています。現在、世界には200億台のIoTデバイスがありますが、10年後にこれが500億から1000億台に増える。2040年には1兆台に達するとも書いています。6Gだと1平方キロメートルあたり最大1000万台のIoTデバイスをサポートでき、これは5Gの10倍。この世界では6Gが必要不可欠だという主張です。
◆ メディア
NBCUniversal、2024年通年および第4四半期の決算を発表
傘下の配信サービスPeacockの売上は2023年の34億ドルから2024年は49億ドルに増加しています。損失も10億ドル近く改善し17億9000万ドルまで減少しました。加入者数は2024年通年で500万の増加ですが、直前の第3四半期からは変わっていません。NBCUniversalは2024年にケーブル向け放送ネットワークを一部のチャンネルを除き「SpinCo」として分社化しています。Peacockへの影響が懸念されていましたが、ComcastのグループCEOであるBrian Roberts氏は、Peacockでの視聴の98%はSpinCo以外が扱う番組、つまり分社化の影響は軽微だとコメントしています。「NBCとPeacockに重点を置いており、SpinCoは不可欠なものではない」といった発言もあったようです。NBCUniversalのメディアセグメントの第4四半期売上は前年同期比3.5%増の72億ドルでした。
米国、2024年の年間視聴時間ランキング、上位10作品はすべて旧作
Nielsenの年間統計によるものです。もっとも視聴されたのは子供向けのアニメ「ブルーイ」で、定期的に公開されるストリーミングチャート、トップ10から2024年は一度も落ちたことがありません。視聴時間の累計は1月1日から12月29日までで556.2億分です。2位には「グレイズ・アナトミー」(478.5億分)。チャートでは10位まで一つも新作が入りませんでした。Nielsenによれば、上位10作品以外でも、配信サービスが普及する前に制作された旧作が依然として大きな人気を集めているということです。1974年から83年にかけて放送された「大草原の小さな家」は130億分以上の視聴時間を記録、もっと古い1955年から75年に放送された「ガンマン」でも100億分となっています。なお、映画のトップは「モアナ」の130.3億分でした。これは「モアナ2」が影響したのかもしれません。
米国、12月のテレビの視聴シェア、DisneyとYouTubeが激戦
Nielsenによる調査結果です。NBCやDisney+といった放送、配信サービスごとのシェアではなく、メディア企業ごとに集計した視聴シェアとなっています。1位は11.2%でDisney、2位は僅差の11.1%でYouTube、3位は9.2%のParamountです。上位3社の順位に変動はありませんが、11月に6位だったNetflixがNBCUniversalとFoxを抜き4位に上昇しています。
参照(12/17):米国、11月のテレビの視聴シェア、Paramountが3位に上昇
Nielsenによる11月の調査結果です。パラマウントの視聴シェアは10月の8.7%から9.3%に増加し、10月に3位だったNBCUniversalを抜きました。この数値は2月に人気のスポーツ中継「スーパーボウル」を放送して以来、最大です。NFL、カレッジフットボール、それに人気ドラマ「イエローストーン」の効果が大きかったようです。
2024年の配信サービス、映画ライブラリの視聴でAmazon Prime VideoがNetflixを抜きトップに
Parrot Analyticsによる調査結果です。Prime Videoは2024年に視聴できる映画の数を71.7%増やしました。その結果、映画に限定した配信サービスにおける視聴シェアでは第1四半期の6.8%から第4四半期には10.7%に増加、Netflixを抜きトップになっています。
爆発的に増加する配信サービスの広告付きプラン、米国での広告売上は2025年に170億ドルに迫る
Ampere Analysisによるものです。米国で昨秋に調査したところ40%が広告付きプランの配信サービスを視聴したと答えています。これは5年前の2倍です。広告付きプランの利用者はそうでない利用者と比較して1日あたり平均1時間多く視聴しているというデータもあるようです。McKinseyの調査レポートになりますが、配信サービスの定額制モデル、つまり広告なしモデルの収益は頭打ちになる一方、広告付きプランの収益は2028年まで2桁台の成長を維持し5年間の年平均成長率は141%。今後3年以内に配信サービス事業者の収益の28%が広告収入になると予測しています。
米国では世代間の視聴スタイルの違いが顕著に
Hub Entertainment Researchが2024年12月に米国で13歳から47歳までの1919人を対象にした調査レポート「Video Redefined」(ビデオの再定義)によるものです。テレビやスマホの画面をどういったコンテンツの視聴に費やしているかを調査しています。13歳から24歳までだと、もっとも多いのがゲームの23%、次がYouTubeやTikTokといったソーシャル系の動画で21%でした。これが35歳以上だとテレビなどの番組が39%でもっとも多く、次が映画の18%です。ソーシャル系動画の印象も異なっています。テレビなどの番組と同じくらい楽しいと答えた比率が13歳から24歳までは58%、25歳から34歳までは64%だったのに対し、35歳以上だと41%に急減しています。なお回答者の1/4はソーシャル動画の視聴にテレビを使用していると答えています。ただ、この状態が良いとは考えていないようです。13歳から24歳までの43%、25歳から34歳までの46%がソーシャル動画の視聴に費やす時間が長すぎ、テレビ番組や映画を増やすべきだと答えています。
◆ サステナビリティ関連
BBC、2050年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロにする「ネットゼロ」を目指す
これを実現するため「持続可能なサプライチェーン行動規範(Sustainable Supply Chain Code of Conduct)」を発表しました。BBCは年間7000社のサプライヤーと取引があり協力を求めていきます。具体的には入札に、この規範に基づいた脱炭素化に関連した条項を盛り込みます。また、500万ポンドを超える契約にはより多くの条項を盛り込み、今後の脱炭素化に向けた目標設定とその計画を求めていくようです。
監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所
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