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海外メディア・通信業界動向 1/15〜1/21
当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、おもに海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。
◆ 今週の重要トピック
AIにより進化するスポーツ中継、AIが試合状況や戦略を理解しリアルタイムで表示
12月に米国で行われたNFL(アメフト)の試合を中継した際に、AmazonのNext Gen Stats部門が用いた技術です。視聴者が試合に詳しい・詳しくないに関わらず、より楽しめるようにするというものです。AIが選手の動きを追跡、例えばある選手がパスを出そうとしているとき、それを阻止する可能性が高い選手を円で囲み視聴者の注視を促します。AIはNFLのルールを熟知しており、鍵となるようなプレーとそれを行う選手を予測するのです。そのために過去の試合における全選手のプレーなどをAIが分析、さらにチームごとの戦略、攻撃や守備の脆弱性をデータとして蓄積しています。Amazonは、このための専用のAIモデルを全て自社で開発したということです。これらを紹介した記者会見ではNFLの中継映像も視聴できます。こちらからどうぞ。
◆ 規制・政策
英国の担当大臣、国営放送BBCの財源に一般税を検討していることを否定
一部のメディアが受信料に変わる財源として報じていました。ただ受信料だけでは不十分であることは認めています。あくまで他国の事例として挙げたものですが、フランスでは映画館に国営放送の収入源となる課徴金を課していると説明しています。
参照(1/13):英国の担当大臣が国営放送BBCの財源のあり方を検討、受信料以外を模索か?
まだ検討段階のようですが、英国の文化・メディア・スポーツ大臣(Secretary of State for Culture, Media and Sport)が示唆しています。現在の受信料収入に依存した形は「財政的に持続可能ではない」と考え、一般税としての徴収を含む新たな資金調達モデルを検討しています。英国の「王立憲章(Royal Charter)」はBBCの目的、使命、公共における存在意義を定めており、BBCの憲法上の根拠となるものです。この憲章は10年ごとに更新されており、現在のものは2017年1月1日に発行し2027年末で失効します。更新タイミングに向けてBBCのあり方が検討されているようです。
ニューヨーク州で「15ドルブロードバンド法」が施行
低所得者に向けた支援措置です。米国では連邦政府レベルで同様の施策「ACP」を行なっていましたが、昨年5月に資金不足で終了していました。これを州レベルで復活させたものです。ISPは低所得者向けに月額15ドルで25Mbps、もしくは20ドルで200Mbpsプランの提供が義務付けられます。ISP側のロビー団体はこれを阻止するために訴えていましたが、最高裁判所が却下しました。米国の2024年末時点でのネットの平均支払額は63ドル。これにはモデムなどのレンタル費用は含まれていません。
AT&T、「15ドルブロードバンド法」の成立を受けてニューヨーク州から撤退
5GベースのFWA「Internet Air」を提供していましたが、このサービスを終了します。既存顧客に対しては、今後、45日間、無料でサービスを提供(継続)し、その期間に他のネットサービスへの移行を促します。Internet Airは最安のプランだと月額55ドルでした。AT&Tはニューヨーク州では光ファイバーやDSLによる家庭向けの固定ネットサービスは提供していないため、ニューヨーク州から完全に撤退することになります。
◆ 業界動向
2025年CESの総括、AIとロボット、それにスマートTV
業界誌LightReadingによる総括です。ラスベガスで開催された展示会CESの来場者数は去年が13万8000人だったのに対し、今年は14万1000人と微増。筆頭格のトピックスはAIで、例えばNvidiaの基調講演には開始3時間前から行列ができ、参加者は6300人になったということです。このほか目についたのがロボット。Nvidiaのチップを搭載したAIロボットやペットロボットなどが多数展示されています。スマートTVに関しては、この総括ではあえてXumoを取り上げています。おそらくLightReading誌がXumoの社長にインタビューしているためと思われますが、シャープとの提携のほか、これまで明らかにしてこなかったXumoスマートTVの出荷台数も非常にアバウトですが「数百万台」というコメントを引き出しています。
Charterを買収するのはComcastか? T-Mobileか?
ComcastによるCharterの買収話は繰り返し噂されていますが、この記事で新しいのはT-Mobileを絡めている点です。仮にComcastがCharterを買収せず、T-Mobileが買収した場合、Comcastにとって強力な敵となり、それを防ぐためにも買収せざるを得ないだろうというもの。ではT-Mobileにとってのメリットが何かといえば、まずVerizonやAT&Tと比べて貧弱な有線(固定)ネットのインフラが手に入ることです。これにより競合より充実したモバイルと固定ネットのバンドルサービスが展開できます。もう一つは同社がM&Aを活発化させている点。背景にはT-Mobileの時価総額が2500億ドルと記録的な水準になっていることがあります。これはComcast 1400億ドルの2倍弱、Charter 480億ドルの5倍です。この状況を活用してCharter買収に動くのではないかというものです。
EricssonとNokiaのCEOがヨーロッパの衰退を警告
ブリュッセルで行われたイベントに両CEOが登壇し発言しています。ライバル関係にある両社ですが、ヨーロッパの現状認識については共通見解を持っているようです。このイベントでもドラギレポートが引用されています。過去20年間で欧州と米国のGDP格差は15%から30%に拡大、研究開発費は米国のほうが60%多いというものです。この記事によると両CEOが求める欧州の統一市場とは、3つの巨大ネットワーク、つまり通信事業者の統合と周波数免許の域内統一、ネットのホールセールの義務化、つまりISPとインフラ構築の分離だとしています。
黎明期を迎える宇宙ネットワーク向け機器市場
一般的に用いられる市場の名前がまだ定まっていないようですが、衛星を用いた通信ネットワークを構築するためのハードウェア、ソフトウェア関連のビジネスが立ち上がりつつあるようです。モバイル関連製品を提供しているMavenir(マベニア)社はNTN(Non Terrestrial Network、非地上ネットワーク)という呼び方をしています。モバイル事業者による5Gへの投資が想定より進んでおらず関連ベンダーは苦境に立たされており、それを挽回するためNTN分野へ進出するところが増えています。Mavenirもその1社です。地上の5Gと同様にコアシステムやRAN管理ソフトウェアのマーケットがあり、2033年までの5G NTN市場の成長率は年率12%、収益は140億ドルに達すると予測しています。ちなみに現在の地上のRAN市場は350億ドルですので、かなりの規模になると考えているようです。背景には世界中のモバイル事業者によるスマホと衛星の直接通信(D2Dサービス)の拡大があります。このD2Dをターゲットにする業界イニシアチブMSSA(Mobile Satellite Services Association)は2024年にViasat、Terrestar、Ligado Networks、Omnispace、Yahsatにより立ち上げられており、その後、Ericssonも加盟しています。SpaceXを筆頭にApple、Nokiaなど大手企業も活発に活動しており、今後は衛星と携帯電話基地局が補完的な関係となり発展していくとこの記事では結論づけています。
配信サービスを提供する事業者に向けた映像コーデック関連の新たな特許プール
Access Advanceが発表しています。同社はH.265/HEVCに関連した2万5500件の特許を保有しており、VVC/H.266に関しても「VVCアドバンス特許プール」を持っています。今回、新たに発表したのは同社がVDP(Video Distribution Patent)と呼ぶ特許プールで、関連機器を扱うベンダーだけでなく配信サービスを提供する事業者に特許プールのライセンス支払いを求めていく模様です。
クラウド業界のビッグ3、2位Microsoftと3位Googleが入れ替わる可能性
アナリストのJack Gold氏による分析です。1位はダントツでAmazon AWSですが、2位にMicrosoftを抜いてGoogleがなるというもの。Gold氏によれば、クラウドとして計上される収益は各社ごとに大きな違いがあり、その数値だけを見て比較すると見誤るといいます。実際、調査会社Synergy Research Groupによる第3四半期での市場シェアはAmazon 31%、Microsoft 20%、Google 13%となっています。ですがGold氏によればMicrosoftのクラウド収益には「クラウド以外」が含まれており、これを差し引くとGoogleと拮抗し、また今後逆転すると分析しています。その理由として、Googleのほうが中小企業向けと公共企業向けでは遥かに好調であることとAI分野での強みを挙げています。一方のMicrosoftは強みの大企業向けではIBMやSAPと競合、AI分野ではOpenAIとの提携があるものの、まだこの分野では地位が低いと考えているようです。
◆ メディア
米国での同時視聴数がAmazon Primeとしては最多となる2466万を記録
12月に行われたNFL(アメフト)の試合で記録しています。平均視聴者数も2207万で、こちらも最多となっています。米国ではAmazon Prime、Comcast Peacock、Netflixなどが扱うスポーツのライブ中継で2000万以上の視聴者数となるケースが増えています。
配信サービスはジャンル特化型に進む? DirecTVが「MySports」を発表
先週立ち上げが中止されたVenuと同種のスポーツ特化型配信サービスですが、チャンネル数はさらに多く40以上となっています。ただし月額料金はVenuが43ドルだったのに対し強気の70ドル。DirecTVによれば、今後数ヶ月の間に他のジャンルに特化した配信サービスも計画しているということです。
米国では配信サービスのサブスクなどに月額100ドル以上支払っている家庭が30%に
調査会社Hub Entertainment Researchによるものです。どういった家庭が100ドル以上支払っているかも調べています。それによれば高収入、白人、年齢層が高く、子供がいる家庭が多いようです。高収入とは、この調査では年収10万ドル以上(1500万円以上)となっており、このグループの44%が100ドル以上を支払っていました。特徴としては技術に精通した人が多く、またNetflix、Hulu、Disney+、Amazon Prime Video、Maxのいわゆる「ビッグ5」以外のサブスクに加入している人が100ドル未満の家庭の2倍となっています。ただ解約も多く、加入・解約を繰り返しているようです。興味深いのは解約理由で、1/4が技術的な問題を挙げています。
Netflix、2025年は広告収入だけで32億ドルを上回る見通し
調査会社New Street Researchによるものです。鍵となるのは月間アクティブユーザーの数MAUと再生1000回あたりの広告単価CPMです。もっとも大きく伸びると予測している北米ではMAUが2024年の2230万人から3810万人に増加、一方、CPMは33ドルから30ドルに下がります。その結果、広告収入は9億1300万ドルから18億ドルに増加すると予測しています。それ以外の地域だと欧州・中東・アフリカ地域は8億1590万ドル、アジア太平洋は3億7080万ドル、中南米は2億2440万ドルとなっています。
番組制作におけるAIの活用、視聴者の印象は?
調査会社Hub Entertainment Researchが米国で週に1時間以上テレビを視聴する2540人から調査した結果です。番組を制作する業務ごとに視聴者の受容性を尋ねています。例えば番組で使われる音楽に関しては人間がやるべきと答えたのが63%、AIと答えたのは19%、人間・AIで違いはないは18%でした。人間がやるべきが多数となったのは音楽関連とセリフや脚本。逆にAIがやるべきと答えたのはビデオ編集や他言語への吹き替えでした。このほかAIによる番組のレコメンドについても調査しています。結果は概ね寛容で、76%がレコメンドのためにAIが視聴分析することに賛成、74%がAIによる要約に興味を示す結果となっています。
Fubo加入者がDisneyに集団訴訟
米国らしい動きではありますが、さっそく訴えられています。申し立てによれば、FuboのスポーツチャンネルにDisneyが提供するスポーツ以外の番組のバンドルを余儀なくされる。これはDisneyによる独占的利益の搾取に該当するというものです。Fuboは、まだ今後のサービスプランを発表していませんので訴えるのはちょっと早すぎる気もします。
◆ インフラ
ComcastとCharterのモバイルネット、Wi-Fiホットスポットにより速度が2倍以上に向上
ネットの速度計測サービス「SPEEDTEST」を展開するOoklaによる調査結果です。ComcastのXfinity Mobile、CharterのSpectrum Mobileユーザーは、モバイルの電波に加え、ComcastとCharterが自社エリア内に設置したWi-Fiホットスポットにアクセスできます。また両社は相互にホットスポットを提供しており、例えばSpectrum MobileはComcastが設置したホットスポットを利用できます。この数は全米で4300万に及び、両社によれば「ほぼ全米をカバーしている」ということです。加えて昨年4月にこのホットスポットを最大1Gbpsに増速すると発表していました。この効果は大きく、Spectrum Mobileの平均ダウンロード速度は2023年第1四半期が84.35Mbpsだったのに対し、2024年第4四半期は188.63Mbpsと2倍以上高速化されています。Xfinity Mobileは同様に53.65Mbpsから170.39Mbpsと、こちらは3倍以上です。
米国ケーブル事業者の固定ネット、最悪期は脱したか?
調査会社MoffettNathansonによるものです。最悪期はケーブル事業者全体で108万世帯(第4四半期の予測値を含む)を失った2024年で、2025年以降は状況が改善すると分析しています。具体的にはComcastは2025年に21万世帯、2026年には8万2000世帯の減少、一方のCharterは2025年2万2000世帯の減少から2026年は23万3000世帯の増加としています。これはサービスエリアの拡大が寄与するためです。競合となっているのはFWAとFTTHですが、FWAは純増のピークが2023年であり徐々に脅威が低下、FTTHはファイバーの敷設エリアが複数の事業者で重複してしまいFTTH事業者同士の競合が発生しており、こちらも脅威は低下していると分析しています。
欧州の固定ネット、FTTHが牽引し2029年には3億4890万回線に
Research and Marketsが発表した有料の調査レポート「Fixed Broadband Market Trends and Opportunities in Europe - 2024」(欧州における固定ネットの動向と機会)によるものです。2024年は2億9060万回線です。FTTHは1億800万回線の増加と予測、固定ネットにおけるシェアは2024年の55.6%から77.2%に増加します。
世界では今後拡大が予想されるFWA
米国ではT-Mobile、Verizon、AT&TがFWAを推進し加入者数では世界をリードしていますが、今後、大きく拡大が予想されるのはむしろ先進国以外だというものです。 Dell’Oroの調査レポートによる分析です。東南アジアや中東・アフリカ地域ではネットサービスの提供価格を低く抑える必要があることからFWAの成長が見込まれるといいます。世界のFWAの火付け役といえば2018年にスタートしたVerizonですが、その1年後にサウジアラビアのZainも開始しています。少し古いデータになりますが2023年2月時点で110万のFWA加入者を持ちます。このほか同国のEtisalatとduも提供しているということです。またインドではBharti AirtelとReliance Jioが光ファイバーより早いペースでFWAを拡充しており、世界最大級のFWA市場になる可能性があるようです。このほかフィリピン、インドネシア、マレーシアなどの東南アジアの国々では光ファイバーの補完的役割としてFWAが積極的に展開されています。
監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所 編集部メンバー
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