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海外メディア・通信業界動向11/6〜11/12

当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、おもに海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。


◆ 今週の重要トピック

メディア企業の課題となっていたDTC(Direct to Consumer)事業ですが、グローバル展開を加速したこともあり業績を大きく伸ばしています。第3四半期では既存事業である映画や放送が振るわず、これを挽回するまでに成長しました。その一方、競合との事業統合の動きも噂されています。2025年はメディア業界から目が離せません。視点を北米、ここでは米国とカナダに移すと、こちらも混沌としてきています。ベル・カナダは北米のFTTH事業に進出、カナダの大手テレコムであるRogersは、カナダでComcastのXfinityブランドを投入するなどです。

◆ メディア

ワーナー、第3四半期に配信事業が過去最大の成長、加入者720万増の1億1050万に

MaxなどのDTC(Direct to Consumer)事業の世界展開を加速させたことで加入者数、売上、利益ともに大きく伸びています。DTCは加入者が米国5260万、米国以外だと5790万となりました。売上は前年同期比8%増の26億ドル、利益は2億8900万ドルでした。関連する広告収入は2億500万ドルで49%増となっています。ワーナー全体では映画事業などが足を引っ張り売上は4%減の96億ドルです。

第3四半期、Paramount+が好調に推移、加入者は350万増加し全世界で7200万に

Netflix、Disney+、Maxに続く世界第4位の規模になります。売上は前年同期比10%増の18億6000万ドル、利益は2億3800万ドルのマイナスから4900万ドルのプラスとなりました。一方、テレビと映画事業は振るわずParamount全体では売上が6%減の67億3000万ドルとなっています。

ParamountのCEO、Paramount+は独立したサービスであり続ける

第3四半期決算を発表する場でのコメントです。他社の配信サービスとの統合の可能性を問われたのに対し答えたものです。夏以降、競合他社と協議を行なっていることを明らかにしており、「多くのパートナーから関心が寄せられている」とも発言していました。今回は否定的なコメントとなりましたが、事業統合を完全に否定しているわけではなく「より大きな価値を生み出すための戦略的視点から提携を検討している」とも。統合、もしくは提携相手として名前が挙がることが多いのはComcastです。これは、ParamountとComcastの合併事業、Sky Showtimeを欧州の24の地域で展開しており、この先にPeacockとの統合があるのではないかという憶測があるためです。

配信サービスの次の一手、Z世代の攻略は日本のアニメがカギ?

成熟期を迎えつつある配信サービスが次世代の消費者、つまりZ世代との繋がりを構築、維持するための施策を分析しています。Z世代からの支持を取り付けるためには、よりニッチな分野でも差別化を図る必要があり、日本のアニメなどのコンテンツは最適だというものです。Parrot Analyticsによると米国のNetflixとHuluでもっとも需要の高い日本のコンテンツは「NARUTO -ナルト-」、Amazon Prime Videoでは「僕のヒーローアカデミア」。この2作品だけでかなりの収益貢献があったと推測しています。ただ、こういったコンテンツは全世代からの支持を取り付けることはできず、あくまでZ世代向けに限定されると分析しています。具体的には日本のコンテンツを視聴している70%以上が30歳未満だったということです。なおアニメの展開が成功しやすい国、トップ10も挙げられています。日本、米国、中国、フランス、ブラジル、カナダ、ロシア、オランダ、英国、ドイツです。

◆ インフラ

Charter、固定ネットのインフラ建設のスケジュールを見直し

マルチギガの下りと1ギガの上り速度を実現するためのHFCのアップグレードを2027年までに完了させる計画です。当初は2025年、その後、2026年に変更していました。アップグレードの方法は3パターンに分かれます。もっともアップグレードの規模(内容)が小さい改修は全体の15%を対象に、上り帯域を拡大するハイスプリット化を実施。中規模程度の改修は50%を対象にDAAと仮想CMTSを利用した上り帯域の拡大を行います。残りの35%はDAA、利用する周波数帯を1.8GHzまで拡大、さらに仮想CMTSを導入しDOCSIS 4.0へのアップグレードを実施します。

ベル・カナダがFTTH事業で米国に進出、事業買収で北米3位の規模に

米国北西部でFTTH事業を展開するZiply Fiberを50億5000万ドルで買収します。36億5000万ドルを現金で支払い、Ziplyの負債14億ドルを引き受けます。ZiplyはFTTHの130万ホームパスを持ち、今後4年間で300万に拡大する計画です。これとベル・カナダのカナダでのファイバー事業の拡大により北米では2028年末で1200万ホームパスまで拡大、AT&T、Verizonに続く北米3位の規模にしていくと表明しています。

ケーブル事業者にとっては朗報か、米国ではFWAの成長はピークを過ぎた?

2025年の獲得数としてT-Mobile 145万、Verizon 130万、AT&T 55万を見込んでおり、これは2024年の3社合計360万から30万減っています。また2026年以降も3社ともに伸びは鈍化すると予想しています。これらからピークを過ぎたと分析しているようです。Comcastの幹部は「FWAから打撃を受けており、それは今後も存続する。ただあくまで価格重視の顧客向けだ」とコメントしています。

◆ 業界動向

米国ではテレビで配信サービスなどを利用するデバイスの主流がスマートTVに

Comscoreによる2024年7月の調査レポートによると、米国では6750万世帯がスマートTVを利用しており利用者数が突出しています。スマートTV以外はSTBのような機器となり、2位はRokuの2590万世帯、3位はAmazon Fire TVの2520万世帯、3位がゲーム機で1880万世帯と続きます。

Xperi、TiVo OSの世界展開で野心的な見解を崩さず

第3四半期時点では100万台に到達していませんが、年内に200万台、2025年末の700万台という目標は変えないということです。CEOが第3四半期決算発表の場でコメントしています。TiVo OSはパナソニックがテレビの一部モデルで採用しています。また年内に米国市場への投入も行うようです。

RogersがComcastの「Xfinity」ブランドを採用、カナダで展開へ

これまでは「Ignite」を使用してきましたが、これに代えて「Rogers Xfinity」をテレビやネット商品のブランドとして使用します。配信サービスは「Rogers Xfinity Streaming」、テレビ関連のスマホアプリ「Ignite TV」は「Rogers Xfinity Stream」に変わります。Rogersは今年の4月にComcastと10年間に渡る技術および製品契約を締結しています。またSCTEでは固定ネット、DOCSIS 4.0のネットワークアーキテクチャでComcastのものを採用すると発表していました。

CommScope、第3四半期の売上高は10億5000万ドルで前年同期より増加

CEOによればDOCSIS 4.0のFDXノードが第4四半期以降は大幅に増加する見込みで、さらにComcast向けのFDXアンプも第4四半期には小規模な出荷を開始、2025年には大幅な増加を見込んでいるとコメントしています。ケーブル事業者の次世代DOCSISである4.0はヘッドエンド側の仮想CMTS、アクセスネットワーク上のノード、アンプ、ユーザー宅のモデムで構成されます。これらを展開するANS(Access Network Solution)事業の売上は15%減の1億8800万ドルでした。第4四半期には増加に転じると予測しているようです。ただ、Charterは関連投資の延期を発表、競合となるHarmonicは投資が2025年前半までずれ込む可能性を示唆しています。CommScopeは93億3000万ドルの負債を抱えており、45億ドルは2026年が返済期限となっています。一部事業を売却することで21億ドルの収入を見込んでいるものの、まだ今後が見通せない状況です。

苦境が続くAltice USA、固定ネット・テレビ加入者ともに回復の兆しが見られず

ComcastやCharterは固定ネットの減少傾向が年内に収束し、2025年からは増加に向かうと言われています。一方、Altice USAは依然厳しい状況が続いているようです。一般家庭向けの固定ネットの加入者数は前年同期の3万1000の減少から第3四半期は4万92000の減少に悪化。総数は403万となりました。テレビ加入者も7万7000の減少で総数194万と、ついに200万を下回りました。好調なのはFTTHとモバイルです。固定ネット全体では減少傾向ですが、FTTH単体では法人向けを含め4万7000の増加となっており、総数は48万1600となっています。増加分の70%はDOCSISからFTTHへの移行だったと推定しています。モバイルに関しては増加数が3万5500と前年同期の2万4100を上回りました。総数は42万です。同社によればFTTHとモバイルをバンドルしたプランは、DOCSIS単独の加入者より解約率が32%低いということです。

Comcast、放送局や配信事業者向けにクラウドTVプラットフォームの提供を開始

ライブやFAST、VODなどの映像管理、再生、配信、課金などの機能が備わっています。Comcastのグループ企業、Comcast Technology Solutionsが提供し、24時間365日の管理サービスも行います。

◆ 新技術

Perion、ライブ放送をAIで解析しTV CMを挿入するコネクテッドTV向けの新広告フォーマット

スポーツ中継などの状況をリアルタイムで解析し、視聴者の関心を最大限に引き出せるよう配置を行います。全画面がTV CMになるのではなく、中継映像とTV CMを左右に分割するなどして表示。挿入タイミングやCMの配置を試合の状況などに応じて最適化しています。Perionによれば、視聴者の関心は高いがTV CMが邪魔にならないタイミングをAIが特定しているということです。

Amazon Prime Video、ドラマなどのエピソードの要約機能を提供

ドラマなどのエピソード、もしくはシリーズごとの要約(まとめ・あらすじ)をAIが生成します。今後のエピソードのネタバレになるようは内容は含まれません。最新のエピソード・シリーズから見始める人が過去分をすばやくキャッチアップしたり、しばらく見ておらず復習が必要なときに利用することを想定しています。

◆ 業界再編(M&A)

英国のBTがグローバル部門を売却か、Verizon、Amazon、Microsoftなどの名前も

コスト削減策の一環として売却する意向だと一部のメディアで報じられています。潜在的な買い手として名前が挙がっているのがファンドの他にVerizon、Amazon、Microsoftなどです。背景には昨年5月にCEOに就任したAllison Kirkby氏が事業売却に意欲的だと言われていることにあるようです。グローバル部門の2023年の収益は24億ポンド、利益は5億ポンドでした。

監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所 編集部メンバー

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