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海外動向 10/16〜10/22

当研究所では、ケーブル業界の独自の視点で放送・通信・メディア等に関する海外動向の調査・分析を行っております。このノートでは、おもに海外で一般に公開されたニュースや企業からの発信情報をもとに興味深いものをご紹介します。


◆ 今週の重要トピック

衛星ネットの存在感が増しています。当初は地上のインフラ整備が困難な地域を対象にした従来の固定ネットの補完的なサービスと考えられていました。ただグローバルな視点で考えると、インフラ整備が困難な国、カリブ海沿岸や東南アジアなど島しょ部が多い国々などでネットインフラの主要な選択肢になり始めており、またそれ以外の国でも災害などへの強みが再評価されているようです。

◆ インフラ

フランス国営ファンドが超低軌道衛星のスタートアップに投資

衛星を使用したネットサービスを計画しているフランスのスタートアップConstellation Technologies & Operationsに、国営ファンドExpansion Venturesが1000万ドルを投資します。衛星ネットだとSpaceXのStarlinkが代表例ですが、使用する衛星はもっとも低い(低軌道)もので525kmです。これよりさらに低いVLEO(Very Low Earth Orbit)と呼ばれる335km上空に配置されるのが特徴です。より高速なネットサービスが提供でき、また端末が小型化できる可能性があります。一方、衛星は空気抵抗などの影響を受けやすいことから一般的に運用可能時間(寿命)が短くなりがちです。Constellationによれば、衛星に特殊な空力特性を施し7年間は耐えられる設計にしたといいます。2027年から2029年に衛星の大量生産を開始し衛星ネットサービスを展開する計画です。

SpaceXがStarlinkでギガの衛星ネットを実現するための変更申請をFCCに提出

衛星のアップグレードや仰角の調整などいくつかの変更申請をしていますが、メダマはより低い衛星軌道での運用です。これにより速度が10倍程度になり、遅延時間も減少します。現在は、ダウンロード速度で25〜220Mbpsですが、低軌道衛星によりギガクラスの衛星ネットになる可能性があります。

オーストラリアの国営ネット、NBNがDOCSIS 4.0の導入に向けた検証を実施

実地試験を行ったところ最大8.7Gbpsのダウンロード速度を達成。具体的な計画は明らかにしていませんが、今後、DOCSIS 4.0にアップグレードしていくようです。名前を混同しやすいのですが、オーストラリアでは全土に高速ブロードバンドを提供する国家プロジェクトNBN(National Broadband Network)があり、これを推進しているのが公営のNBN(NBN Co、企業)です。今回、試験を行ったのは企業のNBNで、現在、シドニーなどの主要都市の250万世帯にHFCで固定ネットサービスを提供しています。

◆ 規制・政策

FCCが固定ネットの月間データ転送量の上限制限などが与える影響について調査を開始

日本でも見かける制限です。固定ネットで1ヶ月のデータ転送量が規約で設定された上限を超えると速度に制限がかかるといったルールです。FCCが開始したのはあくまで調査ですが、対象はもう少し広くモバイルのデータ転送量に応じた料金プランも含まれるようです。ただ、焦点になっているのはあくまで固定ネットの月間データ転送量の上限です。例えばComcastだと、Verizonの固定ネットと競合が激しい米国北東部では設定されておらず、それ以外の地域では設定されています。こういったやり方を問題視しています。また過疎地などでのブロードバンドインフラの建設を国費で補助するBEAD(Broadband Equity, Access, and Deployment)では転送量の上限設定を禁止していることも、今回の調査の背景にあります。ただ、FCCのこういった動きに対してはケーブル事業者の業界団体NCTAや共和党議員を中心に反対意見も根強くあります。

FTC、加入と同じくらい解約を容易にすることを義務付ける「クリックでキャンセル法」を発表

連邦取引委員会(FTC、Federal Trade Commission)が最終規則を発表しています。最終規則の大半は連邦官報に公表されてから180日後に発効します。ネットのサブスクだけでなくスポーツジムなどでもクリックで加入できるものは規制の対象になるようです。

◆ メディア

Netflix、好調な第3四半期決算を発表、会員数は全世界で510万人の増加、2億8272万人に

前年同期比で14%の成長となり、加入者数や財務の主要指標すべてでアナリストの予測を上回っています。売上は98億3000万ドル、純利益は24億ドルでした。各社の配信サービスは値上げが相次いでおり、Netflixも日本、ヨーロッパ、アフリカなどで値上げを実施しています。さらに先週金曜にスペイン、イタリアでも値上げを行いました。一方、低価格を求める会員の受け皿になっているのが広告付きプランです。第3四半期だと、広告プランを提供している国では新規加入の50%以上を占め、前四半期比で35%増加したということです。

Disney、米国でDisney+などを値上げ

1年前に値上げしたばかりです。広告付きのDisney+は月額8ドルから10ドルに2ドル値上げ、広告なしは14ドルから16ドルと2ドルの値上げです。値上げ後のHuluは広告ありが10ドル、なしが19ドル。参考までにDisney+、Hulu、Maxのバンドルパッケージは広告ありが17ドル、なしが30ドルです。Maxは広告ありが10ドル、なしが17ドルですので、もはやバンドル以外は推奨していないのかもしれません。

ワーナーのMax、アジアの7カ国・地域でサービスを開始

11月19日からインドネシア、マレーシア、フィリピン、シンガポール、タイ、台湾、香港でMaxが提供されます。料金などは国ごとに異なるということです。これにより全世界で72の国・地域をカバーすることになり、2025年にはアジアのさらに多くの国に展開する計画です。

米国、9月の視聴シェア、NFLを配信したAmazon Primeが大きな伸び

Nielsenの視聴シェアレポート「The Gauge」の9月版によるものです。NFLが開幕し、これを配信したAmazon Prime Videoが過去最大となる視聴シェア3.6%となりました。9月に配信・放送された視聴数の多い上位15番組のうち14がNFLの試合だったということです。配信サービス全体のシェアは41%で、これは前月から変わっていません。

◆ 新技術

Motorola、ユーザーの日常的な習慣や好みを理解して提案するmoto AIを公開

大量の文章などを使用して機械学習させる大規模言語モデル(LLM、Large Language Model)と併用する形で、ユーザーの日常的な行動や習慣を学習させる大規模アクションモデル(LAM、Large Action Model)を用いているのが特徴です。ユーザーが「コーヒーを注文して」と言えば近くのコーヒーショップにAIが注文してくれます。将来的には目覚ましアラームの設定や毎朝のコーヒーの注文など日常的なアクションが自動化できる可能性があるようです。年内にベータ版を公開、MotorolaのスマホRazr Plus 2024で利用可能になるといいます。

ちょっと早すぎませんか? e& UAEがWi-Fi 8のプロトタイプを発表

日本では馴染みのないブランド名ですがアラブ首長国連邦(UAE)のテレコム事業者です。社名はEmirates Telecommunications、ブランドが「e&」でetisalat and、エティサラートといいます。展示会Gitex Globalで発表されました。Wi-Fi 8は100Gbpsの通信速度を目指している次世代規格で、IEEEで標準化作業が行われており2028年に完了の見込みです。対応アクセスポイントも同年に登場すると言われています。

◆ 業界動向

Charter、配信サービスの無料バンドルの次はNetflixなどの有料バンドルを目指す

Charterのテレビプラン「Spectrum TV Plus」は月額65ドルですが、これに加入するとDisney+やParamount+、ワーナーのMaxなどが追加料金なしで利用できます。この施策をさらに進め10以上の配信サービスを揃える計画です。さらにチャンネル契約といったCharterの放送ビジネスと接点の小さいNetflix、Amazon Prime VideoやApple TV+については無料バンドルでなくCharterならではの販売パッケージの組成を目指しているようです。ComcastのStream SaverがApple TV+と広告付きのPeacock、Netflixをセットで月額15ドルで提供していますが、これと似たものなのでしょうか。

CoxがXumoを採用

Cox Communicationsがネット加入者を対象にXumo Stream Boxの提供を開始します。Comcast、Charter、MediaComに続いて4番目の事業者となります。Box(STB)は60ドルです。

Dish、新規加入者はNetflixの広告なしスタンダードプランが2年間無料

米国の衛星放送サービスDishが発表しています。すでにNetflixに加入している人もDishに加入すればNetflixは2年間無料となります。

◆ 業界再編(M&A)

Charterと連携して製品開発を行っていたスタートアップFalcon VをVecimaが買収

ポーランドの会社です。Charter、Vectorグループ、LGIの支援を受けており、DOCSIS、PON、モバイルの機器が混在するネットワーク向けの管理システムを開発していました。Vecimaは自社の仮想CMTSにこの技術を組み込むことでCharterからの採用を狙っているようです。Charterは仮想CMTSを2社から調達する計画で、すでにHarmonicの採用を決めていますが、もう1社をどこにするかは未定です。

◆ その他

テレビ選びはブランドではなくプラットフォーム? 米国での調査結果

Parks Associatesの調査によると、ネットにつながり配信サービスが視聴できるコネクテッドTV(家電のテレビ)を所有している、もしくは購入を予定している人の53%がテレビに搭載されているプラットフォームを意識している。つまり同じプラットフォームを使い続けることにメリットがあると考えているようです。ここでいうプラットフォームとはRokuやFireTV、Google TV(Android TV)といったものを指します。使い勝手や利用できる配信サービス、FASTなどがプラットフォームにより異なるため、結果としてテレビ選びの重要なポイントとなっています。

監修者・執筆者:J:COM あしたへつなぐ研究所 編集部メンバー

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