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安倍氏銃撃死亡事件に遅れを取る大メディア

画一化された見出しの付け方や、すでに周辺取材で明らかになっていたであろう団体名を報じない態度。ネット時代には、こうした態度こそ、陰謀論や誤情報を呼び込むことになりかねない。デジタル時代に期待される情報のスピードと、新聞社が培ってきた「紙の伝統」とがどんどん乖離(かいり)してしまっていると感じる。重大事件では知り得た情報は確認状況も含めて随時出すことを原則とし、市民を信頼して判断を委ねるなど、発信のしかたを見直さないと乖離は埋まらないだろう。

 新聞やテレビの旧態依然かつ横並びの体質は、これまでも繰り返し批判されてきた。今月の「世界」の「ジャーナリズムの活路」という特集では、メディアの産業構造に詳しいノンフィクション作家、下山進が、新聞社が「堅牢とした群れ社会」にどっぷり浸(つ)かっているがゆえに外部環境の変化に気づかないと苦言を呈している(〈3〉)。同特集では映画監督の坂上香も、日本のテレビにはタブーが多く、リスク回避を優先し、取材や報道の自由のために戦うどころか、自ら表現の幅を狭めてきたと厳しく批判している(〈4〉)。

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