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姉妹公園協定 「未来志向」と言うのなら

広島市の平和記念公園と米国ハワイ州の「パールハーバー国立記念公園」の姉妹公園協定が6月29日、松井一実市長がアメリカ大使館へ出向いて結ばれました。これには平和公園で修学旅行生らに原爆被害や平和への願いを伝える広島県原爆被害者団体協議会のガイドをしている私には、何で今?と疑問を持つと同時に、何か裏があるのではないかと勘ぐりたくなります。というのも、米国が平和公園の象徴である「原爆ドーム」の世界遺産登録に反対しているからです。

原爆ドームが宮島の厳島神社と同時に世界遺産に登録されたのが1996年。反対した国が2つありました。米国と中国です。中国は、広島が甚大な被害にあったことは分かるが、中国も日本軍による侵略で多くの人々が殺された。日本の戦争加害を否定する人々に利用されるのを危惧し、最終的には棄権したと言われています。

一方、米国はどうでしょう。「戦争を早く終わらせるために原爆投下は必要だった」「原爆投下によって米同盟軍兵士25万人、日本人25万人の命が救われた(あるいは100万人)」と正当化し続けています。世界遺産の登録にあたっては、調査報告書から「世界で初めて使用された核兵器」との文言を削除させているのです。

「リメンバー・パールハーバー」は復讐・戦意をかき立てるスローガンでした。真珠湾攻撃と、「戦争終結のため」と米側が主張し続ける原爆投下の地との姉妹公園協定は、戦争の「始まり」と「終わり」を同列に並べて、原爆投下は報復であり「正しかった」とされることになりかねません。

被団協のガイドで広島市の国際化推進課に申し入れた時、「米国に対して世界遺産登録に賛成するよう働きかけはしないのですか」と質すと、「その考えは全くありません」と即答し、姉妹協定は「未来志向」と強調するばかりで、具体的に何をしようとしているのかは全く示しませんでした。

 加害者と被害者がいつまでも憎しみ合うのは決して好ましいことではありませんが、真の和解は加害の事実に向き合い、謝罪・反省してこそ実現されるのではないでしょうか。『軍都廣島』増補版(一粒の麦社)に橋本和正さんが、廣島第五師団のマレー半島侵攻で、現地の反日分子掃討作戦で華僑虐殺にかかわりBC級戦犯として処刑された叔父の事件を紹介しています。

 「未来志向」と強調するなら、シンガポールの「戦争記念館」との姉妹協定を考えてみてはどうでしょうか。広島市の「国際化推進課」が「アメリカ化推進課」になりはしないかと心配です。(山根岩男)

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