企業内キャリアコンサルティングにおける「環境への働きかけ」を考える:コミュニティ心理学の視点から
今日は、日本キャリアデザイン学会の研究会企画委員会が主催する今期3回目のキャリアデザイン・ライブでした。この委員会の委員長をやっているのですが、委員の皆さんが素晴らしく、今期は2つの20周年記念イベントを推進しています。その1つがこのキャリアデザインライブを12月~8月まで連続開催すること。そして、その大半を非学会員にも無料公開して多くの方に学会を知っていただきます。もう1つは学会のホームページを刷新することです。なんとなく忙しい。
今回のリリースの概要です。
◆学会20 周年記念! 2023 年度 第3 回キャリアデザインライブ!
テーマ:「企業内キャリアコンサルティングにおける「環境への働きかけ」を考える:コミュニティ心理学の視点から」
開催日時: 2024 年2 月16 日(金)19:00~20:30
開催方法:オンライン
【詳細】
今回のキャリアデザインライブ!では、コミュニティ心理学をご専門に研究
・実践されている飯田敏晴先生(駒沢女子大学)をお招きして、企業内キャ
リアコンサルティングにおける「環境への働きかけ」の必要性や実践方策
を参加者の皆様と一緒に考えます。なお、ファシリテーターを本学会研究
会企画委員の小山健太(東京経済大学)が務めます。
聞きながら、自分のためのメモを残したので、こちらに上げておきます。何もまとめもリフレクションもしていません。下記ながら感想も入っているので、ピュアの講義録にはまったくなっていません。学会正式発足までは、しばらく温泉学会を開いていたというアングラ感も魅力的ですが、まさに組織をキャリアの視点から元気にしていきたいと考える私達には、愛と勇気を与えてくれる話でした。こういうのが大切なんだよ。
150名を超える方の申し込み。まずは、小山先生の問題提起。
企業内キャリアコンサルティングにおいて、効果的に環境への働きかけをするためにはどうすればいいのかは、多くの人の関心事。いつの間にかキャリコンの活動領域の40%以上が企業領域になってきている。養成講座では「環境への働きかけの認識及び実践」は3時間講義があるが、なかなか実践的なところまでいかない。新倫理綱領の第12条、組織に対して問題の報告・指摘・改善提案等の調整が求められるようになった。まさに、環境への働きかけは重要なテーマ。組織人が抱えるキャリアの悩みは、制度や上司や文化風土に課題を感じることも多い。環境を改善しない限り、キャリアの悩みを解決できない人もいる。学術的にはコミュニティ心理学のアプローチが参考になる。コミュニティ心理学の理念10項目の1番は「人と環境の適合を図ること」。2番目は「社会的文脈内存在としての人を支援すること」。いいな、この言葉。7番目には「社会変革を目指すこと」。まだまだ、コミュニティ心理学の理解が浸透・認知されていないので、今日の企画がある。
「セルフキャリアドック」の定義、セルフ・キャリアドックとは、企業がその人材育成ビジョン・方針に基づき、キャリアコンサルティング面談と多様なキャリア研修などを組み合わせて、体系的・定期的に従業員の支援を実施し、従業員の主体的なキャリア形成を促進・支援する総合的な取組、また、そのための企業内の「仕組み」のことです。全体報告書が1つのツールだが、それを通じてどのように環境への投げかけをできるのか。
ここから、飯田先生の講演。もともとの領域は医療領域、カウンセラー。
臨床心理士、公認心理士、多文化間精神保険専門アドバイザー。ノウハウ・技法よりも、どういう世界観でキャリコンが環境への働きかけを捉えていくかを学ぶ場としたい。キャリアの最初は福祉作業所。キャリアの中心は医療。助けてとなかなかいえないのをどうするか。チーム医療。病気になったら誰に気持ちを聞いてもらいたいか。まずは医者と家族だろう。医者がカウンセリングマインドを持ってくれるといいなと思う。医師、看護師、事務方、カウンセラー、すべてでチームで取り組む。そしてできるのが環境。これ、企業に当てはめれば、管理職や人事がカウンセリングマインドを持ってくれるといいなということ。そして、それらがチームとして機能することが大事。現場の管理職にすべてを押し付けてはうまくいかないよな。
柴犬の夜泣きに悩む家族の話から入ります。トレーナーに頼むというのは、個人が環境に適応できない場合に個人を変えさせる対応。犬小屋の隣にテントを立てて子供が寝てあげる。防音完備の犬小屋にするといったのは、環境に対する取り組み。
コミュニティ心理学は、1960年頃にアメリカで生まれた。1963年にボストン郊外で「地域精神衛生に携わる心理学者の教育に関する会議」が開催された。ケネディ大統領主導で「精神障害者と精神薄弱者に対する教書」精神保険センター的なものを置く。精神障害者が施設ではなく社会で生活を。これが第三次精神医学革命。第一次精神医学革命は、鎖からの解放を。第二次精神医学革命は、治療的な話し合い、カウンセリング。第三次精神医学革命では、社会と知識社会への介入、そして予防。
日本ではどうか。安田講堂事件、三島由紀夫・全共闘対談。思想の違うもの同士が対談をする。言葉によって。1969年日本心理学会の第3回大会。「コミュニティ心理学の問題」。精神衛生の社会的位置づけと臨床諸概念の再検討。地域精神衛生衛生のアプローチ。
4人の先生が提起したコミュニティ心理学の4つの視点。
〇専門家そのものが患者にとってどう見えているか。自らの属性がクライアントに与える影響を自覚する。イコール多様性への配慮。
〇地域精神衛生。治療より予防。発症しない取り組み、早期発見早期治療。
〇精神的健康に地域の影響がある。人を社会的文脈内存在として重視。
〇組織目標と個人とのダイナミックな統合を目指す。個人と環境との適合。
コミュニティ心理学とは、誰もが切り捨てられることなく、共に生きることを模索する中で、マクロでメタな視点。人と環境との適合性を最大にするための基礎知識と方略に関して、実際に起こる様々な心理社会的問題の解決に具体的に参加しながら研究を進める心理学。
地域心理学ではなく、コミュニティ心理学。地域というと行政の単位を想起する。コミュニティとは、共に作業をするとの意。コミニュティ心理学と生態学的視座。
コンサルテーションの語源。相談ではなく、熟議。専門家の援助でもない。同じ目線で話をし、熟議をする。それがコンサルテーション。おー、熟議。凄い言葉だ。講座で語ろう。ジェラルド・キャプラン、精神科医。イスラエル建国に伴って移住してきた子供たち。1年間に1000件の依頼。個々への対応はキャパを超える。そこで、保育士らの力を最大限生かす仕組みをすればいいと判断。1つひとつ、子供たちが生活する施設をまわった。子供の世話をする職員の相談を受ける。現場に入り込む。点と点をつなぐ潤滑油としてなりえることを心掛ける。カウンセラーとしてのスキル。相手はどんな価値観を持ち、どんな使命を持っているのか。このアセスメントをして関わる。個人への援助にとどまらない。コンサルテーションと多くの人たちの予防を結び付けられる。
コミュニティ心理学では、境界を訪ねる。バウンダリー。どんな組織にでも中心的な人物がいるが、その人物では知り得ないことを知っている人は辺境にいる。辺境の情報を中で使う。マジョリティの中で仕事をするだけでなく、マイノリティの中も歩く。平均では見えない世界が見える。バイアスをかけないことにも寄与する。結果としてチーム。
古典的なカウンセリングアプローチに対する批判として、コミュニティ心理学が生まれてきたという背景。相談室の中でカウンセラーが対応するだけでは限界がある。歩き回って、ご用はないですか、と聞く。こんなことでも相談に乗ってくれるんだと思うと、いろいろな相談が入る。いつも御用聞きをしていれば、対立が起きたときの潤滑油の役割を担える。熟議をつくるお手伝いができる。ああ、熟議。
スクールカウンセラー初期、学校への滞在時間が短かった。なので外部性をもった存在。常駐すると、内部性を持つ。この変化は大きい。クライアントだけに向くのではなく、例えば組織であれば、キーパーソンを意識する。悩みを抱える本人だけにフォーカスしても解決しない。他のプロフェッショナリティにも寄り添う、理解する。組織内を歩く。例えば、組織の言葉を理解する。その組織に落とし込みやすい言葉で語ると響く。負の受容力。クリアにさせたいことが組織には多くあるが、曖昧なものを曖昧なものとしてどれだけ抱えられるかがカウンセラーには大切。
関係性の構築、精神科が典型だが、あの人の問題だからとなる。しかし、普段から連携をしていると違う目線が出る。1対1のカウンセリングでは生まれない。幅を広げることによって、結果的に深い支援ができる。組織への働きかけの結果、非常に深いカウンセリングに至ることもある。そして、距離感も大事。例えば、意図的に裏方に徹する、見えないところで存在するとか。情報の取り扱いをどう配慮するかも関係構築の1つの技。
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