うちの子のバラ
先月末、とある植物園に行ってきました。バラ園が見所と聞いていて、折しもちょうど秋バラの季節。
園内は多くの人で賑わっていました。
そんな中、散策していると、とあるバラが目にとまりました。
ゴールドバニーという品種のバラでした。
これを見た瞬間、私の頭の中に浮かんできたのは、第2回覆面小説で書いた「亡霊の王女」に出てくるルーイ王子の顔。
あ、ルーイにピッタリのバラだな。
明るい黄色は、光によってルーイの金髪や琥珀色の瞳を想起させてくれます。作中では「亡霊」にも黄色のドレスを着せましたしね。さらにバラと言っても花は小さく、それがルーイの幼さや華奢さ、見た目の可愛らしさにも繋がるように思います。(あまり出てきませんがライソンは長身の設定なのでこのふたりは身長差すごいです)
そう思ったら楽しくなってきて、他のうちの子たちに合うバラもあるかなあ、と探してみました。
次に見つけたのは、同じく「亡霊の王女」よりルーイ王子の護衛を務めるライソン。
ベルベットのような花びらの質感が彼の高貴な生まれを、暗い色や太い枝にびっしりとついた大きな棘が彼の過去を示唆しているようです(過去については個人誌書き下ろし参照)。ルーイが「夜の色」と評す黒髪黒目にもよく合致する黒い花。しかし、日陰では黒に見える花も、日なたで見るとしっかり赤色に見えます。太陽(=ルーイ)に照らされて黒から赤に(見かけ上とはいえ)色が変わる。それはまさしく、異国の生まれであるが故に辛い過去を背負い、その生まれを象徴するような外見だからこそ差し伸べられたルーイの無邪気な手によって人生が変わったライソンそのものに思えます。
……比較的最近まで苦しめられ……いえ、彼の過去に付き合わさ……じゃなくて、過去のお話を聞かせてもらっていたのでついつい語りに熱が……。
さて。
次に目に付いたのが、こちらのバラ。
ジュビレ・デュ・プリンス・ドゥ・モナコ。
最初、これは「The curse of the dragon」のキーツかなあと思ったのですが。
なんか違和感。
最初は、色のグラデーションがドラゴンの「混ざり」にかかるかなあと思ったのですが、やはり何か違う。キーツらしくない。
作品全体としてはこのバラは合うと思うのです。でも、キーツでは無い。
むしろルコかなと。
色の変化は、作中ではあまり描写しませんでしたが、ルコ自身の変化に通ずるものがあります。ルコははぐれ竜。どこにも属さず、人とも他のドラゴンともかかわらずにひっそりと暮らしてきた(という裏設定がありました)。そこから、たった数年行動を共にしたキーツの喪失に涙し、その後数百年にわたり彼が守ろうとした国や彼の子孫を気にかける程度には、彼自身にも変化があった(というのを伝えきれなかった悔しさが残る)のです。
さて、ではキーツは?と探していると、ふと目に止まったのがこちら。
その名も、「ザ・プライド」。
……品種名に、「そんなにプライド高くない」と本人から抗議が入りましたが。
“プライド“とカタカナで書くとあまり良いイメージはないかもしれませんが、元々の英語の意味に立ち返ればそれが示すのは“誇り“。白く大輪のバラは、困難に直面しながらも、最後まで意志を通し使命を全うした彼の気高さ、誇り高さに相応しいと思います。(念のため書いておくと、作中の最後の白い花のイメージは百合です。)
そんなこんなで園内を回るうちに、あっという間に3時間近くが過ぎていました。いつの間に……植物園こわい。
次のお出かけの時には(植物園に限らず)、他の人たち(現代の人たち)にも合いそうなのが見つかるといいなあ。