“チェリまほ“ドラマ藤崎さんと恋愛の話
※この記事は、現在放送中のドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」第4話のネタバレを含みます。※
※自分語り注意※
現在、珍しくドラマにドハマリしている。
ドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」。豊田悠先生の同名の漫画が原作のドラマだ。
公式サイト→https://www.tv-tokyo.co.jp/cherimaho/
元々、この漫画はTwitterの4ページ漫画として投稿されていたもの。私は書籍化前からのファンで、ずっとTwitterとpixiv、書籍化してからは電子書籍でも読んでいるし、ドラマCDもお気に入りだ。
だからこそ、実写化と聞いて不安も多かったのだが、蓋を開けてみれば、今やこのドラマのために1週間生き延びているようなところさえあるほどに沼っている。
その中で、(本筋とあまり関係ないところで)特に印象に残ったことがあったので、筆を取ってみる。
……とその前に、軽く作品について紹介する。
あらすじ(といってもタイトルがあらすじそのものだけど)としては、主人公・安達が30歳の誕生日を境に、触れた相手の心が読めるという魔法を手に入れる。そして彼は、その力によって、同期の黒沢が自分に好意を抱いていることを知ってしまう、というお話。ジャンルとしてはコメディBLになるのだろうか。
この作品には、主人公たち以外にも魅力的なキャラクターたちがたくさん登場するのだが、今回はドラマ第4話でスポットのあたった藤崎さんについて。
藤崎さんは、安達と黒沢と同じ職場で働く女子社員。原作では、実は腐女子で安達と黒沢を脳内でカップルに仕立てあげて妄想を楽しんでいるというキャラクターである(後日、作者から「自分も同じ職場で2人を見守りたい」という読者の声に応えて、読者の分身として登場させたキャラクターと発言あり)。
ドラマでは、この設定が改変されている。
腐女子という設定がなくなったかわりに、彼女に付加されたのは“恋愛に興味がない“女性という設定。
藤崎さんと同僚の女性との恋愛話に巻き込まれた安達に、彼女は「嫌な気持ちになったでしょ」と謝罪する。それに対して安達は、
「みんな恋愛の話好きだなとは思いましたけど。別に人生それだけじゃないっていうか、俺、恋や愛がなくても毎日それなりに楽しいっていうか」
この台詞を受けて、藤崎さんの心の声がこう答える。
「安達くんは好き。人生、恋愛だけじゃないってサラッと言えちゃう感じが。きっと私が恋愛に興味ないって言っても、『そうなんですか』って気にもとめない、はず。あーあ。まあ、周りにどう言われようといいけど。普通を演じるのも慣れたし」
“恋愛に興味がない“。
藤崎さんのその気持ちは、自分と近いかもと思った。
お話として、小説やドラマの中の恋愛を楽しむことはできる。けれど、“自分が“恋愛をすることに、積極的に興味を持ったことがない。人付き合いも苦手だし、恋人が欲しいと思ったことも無い。「彼氏できた?」「好きな人いるの?」なんて恋バナにもノレないどころか、「どこどこの誰々がかっこいいよね」なんて話の次元から話が合わなくて苦痛。むしろ恋愛の「好き」って何?というレベル。
それがやっぱり、“普通“ではないのはわかっているから、どうにか取り繕っていくしかないのだと思っていた。
ドラマの話に戻るが、藤崎さんの設定改変について、ドラマ公式およびスタッフのコメントがある。
「恋をしない生き方も、恋をする生き方も、その人の居心地のいい生き方をするとき、誰もがすり減ることなく、不自由なく、生きていける世界でありますように」―ドラマ公式Twitterより引用
「恋愛はしてもしなくても自由。人生の彩りの一つでしかなく、幸せの形は人それぞれ。」「ドラマが伝えたい世界の1つとして藤崎さんを描かせていただきました」―脚本・吉田恵里香さんTwitterより引用
すごいチャレンジだなと思った。
たぶん、恋愛して結婚して子供を産んで、みたいな人生が“普通“っていう意識は、それを好むと好まざるとにかかわらずどこかに誰もが持ってると思っている。
けどその中で、“恋愛しない“が“異端“ではなくちゃんとした“選択肢のひとつ“として提示されるということに、とても心を動かされた。
私が恋愛に興味がないこと、好きって何なのか全然わからないこと。ごくごく一部の仲の良い友達だけは知っている。
「きっと、好きになれる人に出会ってないだけだよ」「好きな人ができたらわかるよ」そう、彼女たちは言うけれど、どこか釈然としないものを感じていた。
ああ、私が欲しかったのは、こういう答えなんだなあと、数年越しにすとんと腑に落ちた。
“恋愛に興味がない“、それでもいいんだよ、それは“異端“じゃないんだよ、って。
もしかしたら、そのうちに運命的な出会いがあって考えが180度変わるかもしれないけれど。
今はこのドラマの優しい世界に癒されていたい。