オンライン授業におけるハラスメント
COVID-19の影響で大学は一時閉講している。普段からITに強い教授とそうでない教授で差があったり、生徒間で進捗状況が把握できなかったりと、授業システムそのものが新たな挑戦のため色々と問題はある。少しずつ改善することを願う。
中でも、周囲の女子大学生たちの間で懸念すべき問題が起こっているため、学生たちに向けて注意喚起すると共に、大人にも周知しておきたい。
アカデミック・ハラスメントについて
アカデミック・ハラスメント(以下アカハラ)とは、大学などの学術機関において、教職員が教育・研究上の権力を利用して行う人格権侵害のこと。
以下のような部類に分けられる。
(1)地位利用・対価型
優越的な地位を利用し性的な又は不当な言葉や行為によって、相手の就学条件に不利益を与える
(2)環境型
性的な又は不当な言葉や行為によって、相手に屈辱や精神的苦痛を感じさせたり不快な思いをさせることにより、就学環境を悪化させる
学生には、良好な環境のもとで研究・教育・修学する権利がある。しかし、これらの権利はアカハラによって侵害されてしまう。
オンライン授業で起こり得るアカハラ
普段の授業では起こらない事が、オンライン授業に変わってから周囲で度々起きている。大学の教室で授業を受ける場合より、生徒と教授の間でメールや大学が提携するコミュニケーションツールを利用したやり取りが増えているため、オンラインでのアカハラが増えているのだ。
大阪大学のホームページで公開されているアカハラについての詳細なガイドラインを参考に、オンラインでも起こり得るアカハラについて紹介する。
良好な環境における研究・修学の侵害
・正当な理由なく研究・教育上の指導を一切しない
・ 本人の希望に反する学習 / 研究計画や研究テーマを、十分な説明もせず無理矢理押しつける
・ 正当な理由なく、研究に関して人と相談することを一切禁止する
<例>
・学生の状況を把握せず「まるで勉強をしていない」「呆れて声も出ない」「もう手出ししない」などと言い、指導をやめる
・学生の研究テーマを否定し、強制する
・履修中の学生に共有される掲示板などでプライベートな話をして「荒らし」行為を行う
不当な評価や処遇
・単位の不認定の理由を聞かれても教えない
・卒業 / 修了の判定基準を恣意的に変更して故意に留年させる
・正当な理由なく、就職活動を禁止する
<例>
・メールのやり取りで「不合格です」「今のところ成績は〇、次の課題でも同じような出来だったら今学期は不可」など、正式ではない方法で不当に成績評価をする
・メールなどで「〇回機会をあげましたよね?」「これ以上やっても無駄」などと発言し、その後の指導を拒否する
・「そんなに就職活動が大事なら、卒業論文や研究はしなくてよい」と脅迫する
精神的な侵害
・個人的な感情で特定の学生に対して指導を拒否したり、侮蔑的な言葉をかける
・虚偽の噂を流すなどして、不当に学生の人格や地位を貶める
・職務上知り得た学生の修学状況や成績など(個人情報)について、不当に他の学生に共有する
・プライベートなことがらをしつこく聞き、強引に勝手なアドバイスをする
<例>
・特定の学生にのみメールで「もう課題は提出しなくていいです」と言い、その後の指導をやめる
・ゼミ全体で共有されるメッセージで「問題ありまくりの生徒がいる」と発言する
・メールで「〇〇さんはよくできていますね、お友達の〇〇さんはどうすればもっと頑張ってくれますかね」などと名誉を傷つける発言をする
・オンライン上で「何しに大学に入ったんだ?」「クズ、バカ」などと暴言を吐く
学生の権利
心理的に恐怖感を与えるような言動は決してあってはならない。学生本人が直接その言葉を受けるかどうかに関わらず、学生を傷つけるだけの言動は不適切である。学生のモチベーションを上げる意図を持って行った、などの言い訳も通用しない。名誉やプライバシーを侵害する言動は、被害者を深く傷つけ、不快な思いをさせる。
学生の単位修得や進級・進学は、それぞれの研究・教育活動に対する正当な評価に基づいて決定される必要がある。また、学生の進学や就職においては、自らの選択の自由が尊重されなければならない。不当な評価、理由によってそれらを妨害したり、将来に関わる選択の自由を認めないことはハラスメントである。
※これらの行為はあくまで例示にすぎない。他にもハラスメントに該当する行為はあり、たとえ一つ一つの行為はハラスメントと言うほどではなくても、それが連続あるいは継続することによって、ハラスメントとなる場合がある。
ハラスメントの被害者が、結果として身体的な疾病を発症したり、精神的に大きなダメージを受けることは珍しくない。ハラスメントは被害者の心身の健康を侵害し、生命をも脅かす危険性をもつことを十分認識しなければならないのだ。
参照:アカデミック・ハラスメント及びパワー・ハラスメントに関するガイドライン参考資料 / 大阪大学
また、私の周囲ではハラスメントを受けている人に女子生徒が多い。男子生徒へのハラスメントはむしろ教室や飲み会などのオープンな空間で行われるケースが多いが、オンラインという特殊な環境で個人同士でのやり取りをするようになってから、特定の女子生徒に対する攻撃や、軽視を含んだ発言が顕著にみられるのだ。上記の例だけでなく、性的なハラスメントについても教授や周囲の人が十分注意するよう願いたい。
普段教室では言えないことでもメールでは言ってしまったり、乱暴な言葉を使ったりしてしまう人がいる。例えその内容を書き手が冗談だと思っていても、特に顔も見えず文章だけが伝わってしまうオンラインでは、受け取り手が酷く傷つくことがあるのだ。Twitterで心ないリプライを送る人達にも同じことが言えるが、画面の向こうの現実に存在する人間がそれを読んでどう思うのか、ということを想像してからコミュニケーションをとることが必要である。
ハラスメントへの対処
このようなハラスメントを自分が受けたり、ハラスメントを受けていることを周囲の学生に相談されたら、すぐに大学の相談室に助けを求めてほしい。
教授と生徒の間における問題は、単位認定する側とされる側の上下関係だ。ハラスメントを行っている教授に直接抗議すれば単位を落とされる可能性、またハラスメントがエスカレートする可能性が十分にある。
そのため、各大学にはハラスメント相談やキャンパスカウンセラーなどが設置されている。COVID-19による緊急事態宣言下では多くが電話相談を受け付けているようだ。相談をすれば、相談者(学生)に不利益のないように配慮した上で調査・対処してくれ、また必要と判断された場合には、弁護士や警察に状況を伝え、法的措置を取る支援もしてくれる。詳しくは自分の大学のホームページから、学生向けの支援について掲載されている情報を確認してみてほしい。
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