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326 省くことで発現する。(稲田)2023/3/20

「雀海中に入って蛤となる(雀入大水為蛤)」という言葉を知りました。

物がよく変化することのたとえ。古くから中国で信じられていた俗信で、雀が晩秋に海浜に群れて騒ぐところから、はまぐりになると考えたものという。すずめ大水に入って蛤となる。すずめ蛤となる。《季・秋》

コトバンク

月でウサギが餅つきをしているのも中国の神話が由来だそうですので、雰囲気はそれと似ているのかもしれません。

面白い表現だなあ…と調べていたら、「雀海中に入って蛤となる(雀入大水為蛤)」から派生した夏目漱石の俳句を知りました。

蛤とならざるをいたみ菊の露

ハマグリとなることなく死んでしまった雀を悼んで菊の下に埋めてやったという情景でしょうか。雀という言葉を使わずとも雀が浮かびます。

描かないことで描く。省くことで発現する。ぼくはこういう表現がとても好きです。そして、これらの表現は描かれなかったこと、省かれたことを知らないと顕在化しないんですよね。同じものを見ていても、受け手側次第で見えるものが違う。知識って面白いなあって思うし、表現って面白いなあと思います。

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