サンドグラス

この砂はどこから来たのだろう?

ぼくは波のような形をした砂を見てふと思った。あとからそれは「風紋」と呼ばれる現象であるということを知った

砂丘でラクダに乗っていると、ここが日本であることを忘れそうになる。砂漠の民はこれに乗って何百キロも移動するのだろうか。ぼくには無理そうだ。しばらく砂の上を歩いていると裸足で楽しそうにはしゃいでいる子供達がいた。ぼくもつられて靴を脱いで裸足になり、いちばん高い丘の上を目指した

綺麗な海が見える。遠くにクジラみたいな形をした島があった。ぼくは何も考えずにそれを見ていた。いや、少しは考えたりもした。何もない砂丘の中で砂時計をひっくり返したようにサラサラと流れる時間は都会育ちのぼくにとって贅沢なシチュエーションに思えた

ここには砂以外、何もない。ビルも電車も木も花も。外回りのサラリーマンも、読み捨てられたスポーツ新聞も、深夜の映画館も、何もない。でも、そこには風があった。風は真っ直ぐぼくにぶつかってどこかへ消えた。風よ、ここにはお前を邪魔するものは何もない。ぼくは空を見上げながらもう一度言った。風よ、ここにはお前を邪魔するものは何もない。その時ぼくはたしかに見たのだ。風たちがダンスする姿を。

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Hiro-pon
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