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もし個人売買で不動産を購入したらどうなる?

不動産を購入するとき、宅地建物取引士や司法書士に手続きをお願いすることが一般的だが、単に仲介をするだけ、単に書類を整えるだけ、と思っていないだろうか。

法律上は、そのようなプロを介さず個人売買をすることは問題ないし、自己申請で不動産の登記をすることも問題はない。

ただ、プロを介さずに不動産を購入するとどのようなリスクがあるのかを今日は伝えたい。

宅地建物取引士が仲介し不動産を購入するとき、成果報酬で報酬額を支払う。要は不動産が売れなければ、宅建士は何も報酬を得られない、0円だ。
報酬は法定されていて、余分にいただくことはないが、利用者側の顧客目線では高いものと感じるかもしれない。
しかし、考えてみよう。
宅建士は不動産(土地)を売買するとき、お客様に重要事項説明をする。そのために、細かい法律等々綿密にしっかりと調べて、その土地はどのような土地であるかを間違いないようにして、お客様に間違いを伝えないよう努める。
例えば、個人売買で折り合いをつけて土地を購入するとき、確かに宅建士に対する報酬は節約できる。しかしあなたはその土地をどのように利用しようとしているのだろうか。
「夫婦で小さ目の農地を購入し、購入後家庭で食べられるくらいの野菜を育てよう。そしてもっと年を取って作ることができなくなったら、長男にこの土地を譲って、長男がここに家を建てて住めばよい」と考えていたとする。
将来その土地に長男が建物を建てようとしたとき、その土地が建物を建てるための許可が下りない土地だったら、購入時思い描いていた土地利用ができなくなる。
「まぁ、この土地安かったからいいや」と思える人は、そこで何人いるだろうか?1000円や1万円の買い物だったら、そのような妥協はできるだろうが、安い土地を購入しても数百万を投資しているのではないだろうか?
宅建士を仲介に入れないことにより、このようなリスクがある。
そのようなリスクを回避するために、成果報酬を支払い、仲介に入ってもらう価値があると言えると思う。

例えば皆さんが不動産を購入したとしよう。
そこで買主が売主に対して不動産の売買代金を支払う日がある。
おそらくそれは買主が融資を受ける銀行で行われることが多いが、そこで司法書士が立会を行い、必要書類を全て揃え、売主買主それぞれから署名、捺印をしてもらう。
その時皆さんはどう思うだろう?
「司法書士は書類をそろえるだけで何万も報酬をもらえていいな」
しかし、司法書士の内面はそんな気楽なものではない。
必要な書類が全て揃うことにより融資が実行されるが、揃っていなかったら融資ができない。要は、所有権移転の登記ができない→融資ができない。という事態に陥る。
言いたいことが伝わるだろうか・・・書類を揃えれるはずが、揃わなかったということも充分あり得るということだ。
すると、融資ができずに、売買契約が不成立に終わるということだ。
立会には、売主、買主、仲介業者、売主側に抵当権がついている状態ならば抹消される抵当権者(金融機関)、買主側に融資をする金融機関、それぞれが時間を合わせて行われるその時間を無駄にするということになる。
例えば売主は立会の日に必ず印鑑証明書を持ってきてほしいと言われていることもあるはずだ。もし、売主が印鑑証明書をうっかり忘れたら、書類が整わないことになる。平日ならば近くの市役所に印鑑証明書を発行してもらいに行けるだろうが、土日や祝日だったならばどうだろう。売主がマイナンバーを発行してもらっていて、パスワードをちゃんと覚えているならば、近くのコンビニで印鑑証明書を発行できるが、そうでなかったならば印鑑証明書が無い状態になる。書類が整わないので、不動産の所有権が移転しない。

立会で行われることは、
不動産の所有権が移転する→買主が融資を受けられる→買主から売主へ売買代金が支払われる→売主が残債務を支払い、売主のの抵当権を抹消する。
それをいっぺんにやるのだ。それができなくなるということは、立会期日までに整えた書類を作り直すことになる。

実際上記のようにスムーズに行うことができたならば、不動産の登記はどのような手続きを踏むのかといいうと、
売主と売主の銀行とで抵当権の抹消→売主から買主へ所有権移転→買主と融資先銀行で抵当権設定という手順を踏んだ登記がなされる。
要は実際に行われる融資の手順と、不動産登記の手順は逆ということ。
つまり買主に所有権が移転する前に、売主の抵当権を抹消するということだ。
ちなみに売主の抵当権がついたまま、うっかり所有権移転をしてしまった場合は、司法書士は善管注意義務違反ということで懲戒ということもありうる。一つ一つの手続きが命がけなのだ。


まだまだ、それだけではない。例えばその土地が農地だったならば、売買をするのに農地法の許可書がいる。農地法の許可書が間に合っていても、その農地法の許可書に書かれている文言によっては、不動産登記ができないことがあるのだ。
「売買により所有権が移転する」はずが、農地法の許可書に「贈与により所有権が移転する」ようなことが書かれていた場合は、その農地法の許可書は使えない。取り直しになるのだ。(それは行政書士がやってくれる)
「数人で農業をする」ので農地を購入するとして許可申請をして、許可書が届いた場合、それをその中の一人で登記できない。農地法の許可は数人で農業をするから許可をしてくれたのだ。だからその場合もその許可書は使えなくなる。

例えば、売買の契約から決済(立会)までに数か月間が空いていたとすると、その間に売主が住所を変更していたら、所有権移転の登記をする前に、所有者の住所変更登記を入れなければ、所有権移転登記はできない。所有者の同一性が認められないからだ。

ここでは書ききれないたくさんの書類のチェック、登記簿のチェックを細かくして、立ち合いに臨んでいるのだ。

だから、書類を揃えるだけで何万ももらえると思っていいなと思うのではなく、どうか成果報酬を気持ちよく支払ってほしいと思う。
すると、私もそれを気持ちよく受け取れる。


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