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臨月死産 #8 どうやって生き続けるかー産後3か月後まで

 自助グループのお話会に参加し、小さな光が遠ーーーくに見えてきた。それが産後2か月目でした。それでもまだまだ命の危険を感じるほどの気持ちの沈みはしばしばあり、復職は1か月延ばして、2024年4月からと決めました。


臨月死産された方と出会い、Xを始める

 姉の知人で、臨月に死産したことのある方がたまたまいて、会ってもらうことにしました。
 まったく違う人間で、初めてお会いする方なのに、死産を通して経験した感情が驚くほど似ていました。
 その方も妊娠した友だちと疎遠になったといい、「次の子を無事に産めた後しばらくしてから、連絡がとれるようになった」と話してくれました。自分も今は疎遠でも、また会えるようになるかもしれない、とすごく希望を感じました。
 また、復職が不安だという話をすると、彼女は「SNSでアカウントを作って、どうしようもない気持ちをつぶやいていた。同じ経験した人とつながって、お茶したりした」と教えてくれました。復職してからは、頑張って「普通に」職場を乗り切って、帰りの電車で即SNSを開いて感情を吐き出し、バランスを取っていたといいます。
 この話を聞いて2日後、Xで死産のことをつぶやくための専用のアカウントを作りました。身近なところでは死産した方はまったくといっていいほど出会わないのに、Xでは確かに存在していました。
 「ああ、私だけじゃないんだ」「こんな感情、抱いても普通なんだ」と思えることが、本当に、本当に救いになりました。


次の子どものことで相違、号泣する

 実は夫は結婚前から、子供をもつことには消極的でした。「でも、足塚がそこまでほしいというなら、、足塚との子育てなら楽しそうだし」と折れてくれ、息子を授かったのです。
 ところが死産。本来なら生じなかった喪失を味わわせてしまいました。うまれてみると、とても愛しく感じてくれたようで、入院中の4日間で500枚以上も息子の写真を撮ってくれました。
 当然、夫も次の子を望んでると思っていたのですが、、あるとき、「もう子どもはいなくてもいいんじゃないか」と言われました。このころ、絶望の日々を送る私にとって、次の子を持つことは、唯一の希望で、生きる意味でした。生きる希望を否定された。そう感じ、「もうしにたい」と号泣しました。

 落ち着いて考えてみれば、夫にしてもあんなにつらい思いをしたばかりなのです。お産による苦痛に顔を歪める妻を目の当たりにしたことは、痛みを感じている当事者とはまた違ったつらさがあったのかもしれません。
 時間がたてば、夫の気持ちも変わるかもしれない。そう思いつつも、当時35歳という年齢のこともあって焦燥感が強く、、どうしたらよいか、分かりませんでした。

復職を1か月延ばす

 12週を超えた子を死産した場合は、産後休暇を8週間もらう権利があります。私は本来、2月いっぱいが産後休暇でしたが、上司に「2月中旬ごろの体調いかんによって、3月から復職するか、もう少し休むか決めさせてほしい」とお願いしていました。
 絶望の中もがいてると、あっという間に2月がきてしました。「やっぱりもう1か月休もう」と決めました。この頃はまだ、一日中なんの気力もわかなくて、天井を見つめるのが精一杯の日がありました。上司は「それがいいよ」と承諾してくれました。

気分転換に台湾へ

 3月になって、天井だけ見つめるほどの気力しかわかない・・という日はほとんどなくなりました。それでも、時折、どうしようもないほどの悲しみ、怒り、劣等感、焦燥感、不安が襲いました。
 気分転換に夫婦で台湾に行きました。台北最古の寺院、龍山寺で息子が安らかに過ごしていることを祈りました。周りにいる小さい子たちはみんな、きらびやかなお寺の装飾に歓声を上げていました。ここに息子がいたら、どんなふうに目を輝かせていたのだろう、と涙しました。

原因を探し続ける

 なぜこんなことが起きたのだろう?
 原因を知りたくて、のたうちまわりました。「手がむくんでしびれていたのが死の兆候?」「仰向けに寝ていたから?」「急に高血圧になったから?」。様々な可能性を思いついては、ネットで検索する日々でした。
 産後1ヶ月健診で産院から胎盤病理検査の結果をもらうも、「原因不明」と言われ、、。2月末、天使ママの投稿で知った、不育症の権威といわれる杉ウィメンズクリニックの杉俊隆先生を受診したのです。詳しくは「#4 原因」に書きましたが、ここで一定の答えが見つかり、かなりすっきりしました。

 それでも、なぜ私だったのか?私の息子だったのか?という疑問はいまだにくすぶっています。疑問というより、怒りに近いと思います。胎盤の血栓から生じた結果だとしても、「理不尽だ」と感じます。怒りは、産後1年がたとうとする今も、わいてくることがあります。

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