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インド投資のリスクと投資方法

 職場の上司が「おい!これからはインドが来るぞ!全力投資だ!」と息巻いていたので、今回はインド投資のリスク等について解説したいと思います。

 私としては「今更ですか・・・」という感じなのですが、あらためてインドへの投資についてまとめてみましたので、同じようにインド投資に興味がある方の参考になれば幸いです。
※この記事は、内閣府が発表した「世界経済の潮流2023年」におけるインド経済に関する分析等を参考としています。

インドってどんな国?

 インドは、南アジアに位置し、パキスタンやネパール、中国などと国境を接しています。
  また、世界第2位の人口と日本の約8.8倍の広大な国土を有する多民族国家です。 「国というより大陸である」と例えられ、その多様性を表しています。
 公用語はヒンディー語と英語ですが、他に憲法で公認されている州の言語が21あります。

 インドは現在、人口ボーナス期にあり、将来的にはGDPが日本やドイツを追い越す可能性があると言われています。

これまでのインド

 インドは、2003年に発表された「BRICSレポート(※)」でインドの成長可能性が高く評価されたにもかかわらず、期待されていたほどの成長を遂げていないことを指摘されています。

 つまり、インドは以前から成長のポテンシャルを持っていたものの、実際の経済成長は当初の予測ほど速く進まず、製造業の発展などにおいて期待された高成長パス(経済が急速に成長する予測や軌道)からは少し遅れているということです。

※「BRICSレポート」は、2003年に米国の大手金融機関であるゴールドマン・サックスが発表したレポートで、ブラジル(B)、ロシア(R)、インド(I)、中国(C)、南アフリカ(S)という新興経済国のグループ、通称「BRICS」の成長可能性を分析したものです。このレポートでは、これらの国々が今後の世界経済を牽引する可能性が高いと予測され、特にインドは急速な経済成長が期待される国として注目されました。

今後のインドの成長ポテンシャル

 インドは中国に次いで世界第2位の人口を抱えており、今後数十年にわたって労働力が増加する「人口ボーナス期」にあります。
 特に2030年までに生産年齢人口がピークに達するため、経済成長のポテンシャルが高いと期待されています。
 インド政府も、製造業の発展や外資導入を進める政策を打ち出しており、今後の成長が予測されています。

 実際、インドのGDPが英国を追い越し世界5位となり、今後さらに拡大し、日本やドイツを追い抜いて世界第3位に達する可能性が高いとされています。

 これのことからも、インドは経済大国としての地位を確立する可能性が高まっていることが分かりますね。

インド投資のリスク

 一方で、インドにはさまざまな課題が存在していることも事実です。
 特に以下の5つのリスクが、インドの経済成長を妨げる要因として挙げられています。

1.製造業の弱さ

 インドの製造業は、GDPに占める割合が15%程度と、中国(26%)やASEAN諸国と比べても低い水準です。
 特に高付加価値を生み出す製造業が発展しておらず、これがインドの一人当たりGDPの伸びを制約しています。
 製造業が十分に発展しない限り、インド経済は大きな成長を遂げるのは難しいでしょう。

2.外資導入の遅れ

 インド政府は外資導入を積極的に推進していますが、主にサービス業への投資が多く、製造業への外資導入は十分に進んでいません。
 国内の産業保護意識が強く、外資の進出が制約されています。
 製造業への外資導入が進まない限り、インドの経済成長は限られたものになるでしょう。

3.インフラの整備不足

 インドでは、交通や電力供給などの基本的なインフラが十分に整っていません。
 これが製造業や経済全体の成長を制約する原因となっています。

 インフラの整備が遅れているため、外資企業が進出しづらく、インドが「世界の工場」として成長することは難しい状況となっているようです。

4.税制と規制の複雑さ

 インドの税制や規制は非常に複雑で、外資企業が進出する際に不透明な部分が多く、長期的なビジネス展開を妨げる要因となっています。
 外国企業が予期しない追徴課税を受けることも多く、インドに進出するリスクが高まっています。
 これにより、外資の導入が遅れ、インド経済の成長が阻害される可能性があります。

5.雇用創出の課題

 インドでは毎年500万人以上の雇用を創出しないと、増加する生産年齢人口に対応できません。
 特に高付加価値を生み出す産業(ハイテク産業、IT等)での雇用創出が求められていますが、現状ではそのような産業の発展が遅れています

 これが、インドの成長を制約する大きな課題となっています。

インドに全力投資することの危険性

 これらのことを踏まえると、インドに全力で投資を行うことは高いリスクが伴うと言えます。
 確かにインドには大きな成長の可能性がありますが、製造業の発展やインフラ整備が遅れているため、その成長がスムーズに実現するかどうかは不透明です。
 
 また、一人当たりGDPではまだ発展途上であり、OECDの長期予測によれば、2060年時点でもOECDやG20の平均を下回ると予想されています。
 これにより、インドは経済規模こそ拡大しても、国民一人あたりの豊かさは十分には向上しない可能性があることを示唆しています。
 インドに全額を投資するのではなく、リスク分散を行うことが重要です。

リスクを減らすための投資方法のすすめ

 では、上記のリスクを理解した上で「それでも成長する可能性の高いインドに投資をしたい!」という場合はどのような手段を取るのが良いのでしょうか。

インドの成長に期待しつつ、リスクを抑えるための効果的な手段として
 新興国株式のインデックスファンド
を活用することをおススメします。

 インデックスファンド(※)は、個別の国や企業に集中して投資するリスクを抑え、安定したリターンを目指すための、長期投資を行う上では優れた投資手段といえます。

 この新興国株式インデックスファンドを通じて、インドを含む多くの新興国に分散投資を行うことで、特定の国に依存せず、新興国全体の成長による恩恵を受けることができます。

※インデックスファンドとは、特定の市場の指標(インデックス)に連動するように設計された投資信託です。例えば、日経平均株価やS&P500などの指数に連動し、その構成銘柄を全てまたは一部保有することで、市場全体の成績に近いリターンを得ることを目指します。低コストで、リスクを分散させながら長期的に安定したリターンを期待できるため、初心者にも人気があります。

まとめ


 インドは今後の成長が期待される国であり、人口ボーナス期や若い労働力の増加がポジティブな要素と言えます。
 しかし、これまでの予測に反する成長の遅れや、製造業の弱さやインフラ整備の遅れ、外資導入の難しさなどの課題が存在し、リスクが高いことも事実です。
 
 そのため、私の上司のように「インドに全力投資」するのは危険であり、リスクを分散するために新興国全体に分散投資することが賢明といえますね。

 インドへ投資する場合は、成長に期待しつつも、リスク管理をしっかりと行い、賢い投資を心がけましょう。

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