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野間真さんインタビュー#09~5thシングル『とまどい』『ブルートパーズの指輪』~

『とまどい』のモチーフは『小さな決心』

――次に、95年11月17日『とまどい』『ブルートパーズの指輪』のリリースです。
「これはね、またね、お金がないのですね」
――あああ(笑)
「こちらで発注して作った曲ですね。『とまどい』は…」
――これは片想いで始まる曲でしたっけ? 2番の歌詞の最後が “どーしよう…” だったかと…
「ああそういう感じでしたね。“まさか!ウソでしょ⁉” で、出会いがある曲ですね」
――そのサビも印象的ですね。
「この曲を発注した時は、詞の世界観で、まあ曲調も含めてかな、中山忍の『小さな決心』を僕が出した記憶がありますね。“積木の坂道 くずれ落ちたら…”、“私ぶきっちょだから…” そう、中山忍だな、『小さな決心』を出した」
――すごいな。そのリクエストもすごいですし、それをちゃんと曲にする…
「そこもすごいんですよね、沢田さんね。そうですよ」
――イメージもたしかに維持しつつ、新たな感じで。
「言われると、ちょっと関連付けられる感じの曲だと思いますね」

5thシングル『とまどい』『ブルートパーズの指輪』1995年11月17日リリース

『ブルートパーズの指輪』は起承転結の4番構成で

「そうそう、その年の暮れのバースデーコンサートに沢田さんが来てくれて、カップリングの『ブルートパーズの指輪』を弾き語りの伴奏で披露したというのがありました」
――なるほど。
「ええ、来てくれました。その時は300人ぐらい来たんじゃないかな、お客さん。目黒区民センターですね」
――目黒区民センターです。少し勘違いしていて、私は目黒区民センターに行ったと思っていたんですが、翌々年の駒場エミナースに行っていました。
「ああ、駒場エミナース、97年にやりましたね」
――そっちに行っていました。
「なるほど。それにしたってすごいわ(笑)」
――ははは(笑)
「『ブルートパーズの指輪』って、4番まであるんです。それでだんだん男の子とくっついていく感じ(の歌詞で)。4番まであって、ブルートパーズの指輪をもらって、ハッピーエンド。“あなたが好きです” って言って終わるんだけれども、これのモチーフは… あのね、五十嵐夕紀ってわかります? 夕紀って、夕方の「夕」に日本書紀の「紀」」
――ああ「夕」の… 名前と顔ぐらいですが…
「五十嵐夕紀の『第一印象』っていう曲なんですよ」
――ほうほう。
「『木綿のハンカチーフ』があるじゃないですか、あれはね、切ない終わり方をするんですね、4番まであって。で、4番まであってその裏で――裏っていうのはハッピーエンドで終わる歌というのが松本隆さんにあって、それが五十嵐夕紀の『第一印象』って曲なんです。これはね、ぜひね、『第一印象』の歌詞をどこかで探してみて欲しい」
――なるほど。
「だから、第一印象、第二印象、第三印象、で、4番が現在印象でくる。そういう韻を踏んでいる松本さんの詞なんですよ。『木綿のハンカチーフ』のあとに来ているので、たぶん松本さんの中で、ハッピーエンド編の4番まであるものを作ろう、って思ったんじゃないかと思うんですよね」
(注:後日調べたところ『第一印象』は5番まであって、第一印象から第四印象、5番が現在印象で終わる曲でした。まあ、そこはご愛敬で)

「だから、それを沢田さんに渡したところ、そのストーリー性のある起承転結で、4番まであるっていう、ちょっと珍しい構成ではあるんだけども。『木綿のハンカチーフ』は当然、めちゃくちゃ著名ですけれど、『第一印象』っていう五十嵐夕紀の曲は知られていないと思います」
――あんまり知られてない曲であると…
「そうですよ、五十嵐夕紀なんてね、知らないですよ。文字列が浮かぶだけでもね、変態ですよ」
――たしか70年代後半ぐらいでしたね。
「77~78年ぐらいです、五十嵐夕紀ってね」
――なぜ浮かんだかというと、その『第一印象』という曲自体は浮かばなかったんですが、最終印象までの4番の曲っていうのを、もしかしたら『よい子の歌謡曲』で渡辺秀一さんが触れていたかもしれないなと。
「ははは(笑)、松本隆氏の研究家だからなあ」
――なにかそれを読んだのか、頭のなかで引っかかっていたのかも。
「ああ、そうかあ。渡辺秀一さん元気なのかなあ。なるほどね、そういう文章を書いていそうですよね。僕ももしかしたら読んでいたのかもしれない、それで影響を受けてこの時の引き出しに残っていたのかもしれませんね。『ブルートパーズの指輪』はそういう世界観で作って、よくできたなあと思っている曲ですね」
――それでは、youtubeにたぶん上がっていると思いますので、今度聞いてみます。
「五十嵐夕紀をですか?」
――いえいえ、『ブルートパーズの指輪』を…(笑)
「上がってます? そうですか…」
――上げているファンがいると思います、キャンペーンの会場かを映しているものを。やはり水野あおいさんのファンってホントにすごくて、ホントに細かくyoutubeに上げるんですよ。
「ああ、残っているんだ。そういうのが上がっているということは、それこそ80年代のまだ冬でない時代の女の子と同じように、いま見ることもできるわけですね」

――できますね。けっこう後追いの人たちが視聴して、何万回まではいかないかもしれないけれど何千回ぐらいは視られてますね。
「いま現役で出るようになってきたから、余計に興味を持たれる可能性はありますよね。うんうん」
――で、年2回シングルというのが定着してきた。と言いますか、お金がないところをアルテミス側で一生懸命バックアップして出しているという感じですが、年2回をなんとか…
「そうですね、つないでいた感じですよね。それが95年だな。95年暮れのその沢田さんが来てくれたバースデーコンサートあたりは、昇り調子の時期ではありましたね」

次回は、96年のシングル、アルバムの話になります。

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