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恋花粉【毎週ショートショートnote】

 へくち。

 くしゃみである。僕の先生は花粉症である。
 教員になったばかり、2年目の女性の先生である。若々しくて美人だけれど、異常なくらい鼻が弱い。

「濃いわぁ。今日は一段と濃い。」
「スギ40、ヒノキ60ってところかな。」
「ああ、イネが混じってる。」

 ほとんど、花粉ソムリエである。彼女は花粉という花粉に反応するから、年がら年中、鼻の調子が悪い。
 英語の先生で、猫を飼っているという。そんな背景が、かの文豪の代表作と同じであるから、誰からともなく「苦沙弥くしゃみ先生」と呼び始めた。いちばん辛そうなのは、やはり春である。3月に入って、いよいよ先生のくしゃみはピークを迎えた。

 へくち。
 えくち。
 っくち。

 放課後。とにかく辛そうな先生に、僕はティッシュペーパーを渡そうとした。

「ああ、ありがとう。」

 そう言った次の瞬間、先生はまたくしゃみをした。

 びえっくち。

 とにかく無防備な表情を見せられ、くしゃみのしぶきをかけられて、僕は一発で恋に落ちた。変態である。



(本文430字)


 ……猫アレルギーかもな?

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