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【小説】『嬢ちゃん/22歳元風俗嬢、底辺高校の教師やります 』1
「今日の授業は女性から男性への口淫、一般的にはフェラチオと言いますが、実習も交えての学習になります。」
あたしは教卓の前に立っていて、40人もの高校生を相手に今日の授業について説明している。教室の中は男女とも、真剣な目つきであたしを見つめているのだ。
「まず、心構えですが。
フェラチオは、主に女性中心の動きになります。男性にとって、自分の性器を口淫してくれる女性というのは、非常に大事な存在に成り得ます。
いつも言っていますが、性技というのは自分の大切な人を幸せにすることによって、最後は自分も幸せにするための技術なんです。きちんとした一人の大人として、恥ずかしがるものではないし、タブー視するものでもありません。
今日は女子生徒主体の学習ですが、積極的に学習していきましょう。」
あたしの言葉に、生徒たちが無言で強く頷く。あたしは満足した。
「まず、あたしが模範の実技を見せます。
男子生徒で、あたしに性器を舐められても良い、射精させられても良いという人は?」
男子生徒の全員が、机も動く勢いで一斉に手を挙げた。
うーん。誰にしようかなー。
……と、いうところで目が覚めた。
3月28日。
赴任先、潮南高校に、あたしは初めて訪れる予定になっていた。
ネットで見ると、潮南高校の偏差値は38。押しも押されもせぬ、県下でも有数の底辺校である。
でも、あたしだってそんな上等な人間ではない。大学の卒業式と22歳の誕生日を迎えたばかりのあたしは、昨日、アルバイト先の性風俗店に最後の出勤を終えてきた。
最後の客と別れたのが18時。
その後、背中まであった髪をばっさりと切った。そして、銀座まで出て鉄板焼きのお店へ行った。
コースの料理を一人で食べた。ワインも飲んだ。最後に出てきたアイスクリームをすっかり食べてしまったとき、自分はもう、好きでもない男の性器を口に入れたりはしないのだと思って、涙が一筋流れた。
それっきり、あたしは風俗嬢ではなくなった。
元、風俗嬢。
こんなあたしにとって、底辺と言われる高校は、むしろ、ふさわしい赴任先にさえ思えた。
高校生のとき、好きな男ができた。
男は子供の頃からの知り合いで、付き合うに至ったのはほんの巡り合わせだった。
男は、進学実績では有名な県立高校に通っていた。
そのころ、あたしは女子大付属の女子高に通っていた。
将来のことについては真面目に考えていたし、進学校に通っていた彼にも負けないくらい、勉強もできた。あたしは優等生で、大人と話すのが得意で、将来を期待されていた。
誰も、あたしが男と寝ていると思っていなかった。
でも、毎週、あるいはそれ以上の頻度で、あたしは自室に彼を招いて交わっていた。
あたしだって興味も性欲もあったから、様々なことを試した。元々、あたしは人の気持ちを察するのが得意なほうで、彼の様子を見て、どうしたら彼が気持ち良くなるのかを研究した。彼が喜べば、あたしも嬉しかったし、好きでいてくれると思ったし、性的に興奮もした。
避妊はしなかった。彼が喜んだから。
体温は測っていた。
でも、妊娠したのは自然なことだった。
妊娠したことを彼に言ったら、彼は自殺した。
あたしは半狂乱になった。
両親に、子供を産むと宣言した。
あたしの父は、いつだってあたしに優しかった。
一度も、あたしに厳しいことを言ったことがなかった。子供のころ、できたら父と結婚したかった。その父が、鬼の形相であたしを怒鳴り散らした。
「自分の責任も取らないような、糞野郎の子を生んでどうするつもりか。」
全力で顔面を殴打された。
痛かったが、それより先に呼吸ができなくなって、床で痙攣した記憶がある。たぶん、死にかけた。というか、それまでのあたしはそこで死んだ。
子供は下ろした。
父には感謝している。
父とは今も仲がいい。笑って話すし、たまに食事にも行く。
でも、あたしの中で、決定的になにかが歪んでしまった。
渇き。
誰かに必要とされたい気持ちが、自分の中で抑えきれなくなった。
どんな方法でもかまわなかった。
あたしは、あたしがひどくつまらないものに思えていたから。
つづく
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先生としては反則級にかわいい。
次話