
もじもじ社【毎週ショートショートnote《裏》】
「えっ!? もじもじ社まで行くんですか?」
山を降りてきた大学山岳部の女の子が言うには、社は山頂だが、道中は険しく、いつも霧に包まれていて危険だという。
あたしは、それでも行きたかった。
もじもじ社の女神様はたいそう恥ずかしがり屋で、彼女の山はいつも人を拒むように霧の中だ。しかし、社に詣でることができれば美人になれると有名なのだ。
美人はずるい。
みんなにチヤホヤされて、ミスをしても本人が悲しそうな顔をすれば誰も責めない。
もう、執念である。登ってやった。
小さな社だった。でも、大切にされていることはわかる。そこに、さっきの女の子がいた。
「来ちゃったんですね。」
彼女はコーヒーを淹れてくれた。そのうえで、説教された。
「美人になんか、なったって仕方ない。
甘やかされて成長しないし、好きでもない男がワラワラ寄ってくるんですよ?」
女神様の愚痴を聞いて、降りてきた。
うまく行かないことを外見のせいにした。
あたしは醜女だったかも知れない。ひとつ、悟りを得た。
完
(本文432字)
表、「誤字審査」のほうでは美人が得してましたが、実際のところ、美人っていうのも大変でしょうなあ。